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Eランクの僕とSランクの彼女  作者: たてみん
第4章:それぞれのルーツ
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39ー2 商業都市グラマネス

瞬間火力かもしれないけど、久しぶりの連日投稿

リーンさんと手を繋いで大通りを歩いていく。

お昼には少し早い今の時間帯は比較的人が少ないとはいえ、それなりの人が行き交っている。

そして、これだけ人がいれば善人も悪人もそれなりに居るわけで。


「おっとごめんよ」

「いえいえ、気を付けて下さいね」

「??」

「……!」


小走りに走ってきて、僕にぶつかりそうになりながら駆け抜けようとした男性がたたらを踏んで僕を振り返った。

その手には空っぽの布袋が握られている。


「なんだ。初顔の旅行者かと思ったら手練れでしたか」

「ええ。この街の事はそれなりに知ってます」

「そうでしたか。なら、その手に握られてる財布を返してくれると助かるのですが」

「はい、お勤めご苦労様です」


僕は持っていた彼の財布をお返しする。

そのやり取りを不思議なものを見る目で見ているリーンさん。


「そーくん、この人は?」

「街の私服警備員さんです」

「初めまして、お嬢さん。我々はこうして大通りを中心に、スリやひったくりに対しての注意喚起の為に配備された警備員です。

もちろん取った財布はすぐに返しますし、間違って返しそびれが無い様に3人1組体制で行っています」


そう言って目配せした先でこちらに手を振る少女が1人、別の方向にも目深に帽子を被っていた青年が1人。


「昔はそれこそスリが横行していましてね。

それを憂いた当時の行政が、大規模なスリグループを抱え込んで、逆に対スリ警備隊を発足したんです。

まぁ発足当初は裏切りだなんだと大変だったみたいですが、今では街の軽犯罪率を大幅に下げることに成功しています」

「なるほど、そうだったんですね」

「っと、これ以上デートの邪魔もいけませんね。

それでは、失礼致しました」


最後は恭しく礼をして人ごみへと消えていく警備員の人たち。

実に鮮やかなもので、あっという間に他の一般の人との見分けが付かなくなってしまった。


「さて、気を取り直して行きましょうか」

「うん。それにしても凄いね」

「さっきの人たちですか?」

「そうそう。すれ違い様に瞬間的に気配が濃くなったから何かしようとしたんだろうなって事までは分かったんだけど、あの一瞬でそーくんの懐から財布を取っているのまでは分からなかったよ」

「あれくらいなら慣れると結構分かるものですよ」

「ほんと?」

「はい。もっと上手い人なら、その一瞬の気配すら感じさせませんから」


そういう意味では彼らはまだ二流。

どちらかというと、冒険者が盗賊スキルを身に付けたんじゃないかなって感じだった。


「そうじゃなかったら僕がカウンターで彼の財布を取ることも出来ませんでしたしね」

「って、そうだった。そーくんもあの一瞬でやり返してたんだよね。

そっちは全然気が付かなかったよ」

「小さいころにコツを教えてもらったんです」

「コツ?それって私にも出来たりする?」

「ここですぐに教えるって訳には行かないですけど、練習すれば大丈夫だと思いますよ。

ところで、話は変わりますけど。リーンさん、おなかは空いてますか?」

「おなか?うん、小腹が空いてる感じかな」

「ならあそこの串焼きを買っていきましょう」


この大通りにはいくつか広場が用意されていて、そこに様々な屋台が出ている。

その内の1つに向けてリーンさんの手を引いて移動する。


「へいらっしゃい。安いよ旨いよ!!

よっ、そこのラブラブカップルのおふたりさん。いやぁ熱いねぇ。

どうだい。うちは肉の旨味を活かしたあっさり塩味と、秘伝のタレで焼き上げたこってり味が楽しめるんだ。

1本の串をふたりで分け合うもよし、違う味の串をお互いに食べさせあうもよし。

せっかくこの街に来たんだ。記念に仲良く食べていってくれよな」


威勢の良いおっちゃんの掛け声に惹かれて、行列は出来ないけれど止むことなくお客さんが串を買っていく。


「おっちゃん、とびきりなのを2本ください!」

「おっ、お前さんわかってるね~~。ちょっと待ってな。今日一番のを焼き上げてやるからよ」


言いながら新たに串を焼き台に乗せるおっちゃん。

その瞬間、ジュワっと垂れた油から吹き上がる炎で肉が包まれる。


「こうやって炎で包むことで表面はパリッと、中は柔らかく焼き上げるんだったよね」

「そうとも。良く知ってるな」

「そりゃあ、おっちゃんが昔よく自慢してたからね」

「!?そうか。やっぱり、昔良く来てた坊主か。こんな別嬪な彼女まで連れてくるたぁ、やるじゃないか。

っと、お待ちどう。

まだこの街に居るなら、また顔をだしな。今度はうんとサービスするからよ」

「うん、ありがとう」


受け取った串を1本リーンさんに渡して一緒に食べながら通りを歩く。


「あそこの屋台は小さいころ、良く遊びに行ってたんです。

昔から、気のいいおっちゃんで肉の捌き方とかも教えてくれたんですよ。

流石に秘伝のタレは秘密でしたけど」

「そうなんだ。あ、これ美味しい」

「でしょ。後はまだ残ってるか分からないけど、北通りにも幾つかいいお店があるので帰りに寄っていきましょう」

「そうね。楽しみにしておくわ」

「後は……あ、あれは」


そうして、ちょっと寄り道しながら街を満喫していった。

某都市部の店舗よろしく5年もあれば結構入れ替わりが発生してます。

それでも残ってるのは、残ってる理由がちゃんとあります。

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