39ー1 商業都市へ
よろしくお願いします。
寄り道が多い今日この頃
「じゃあ、泉に戻すのは頼むね」
「うっす、兄貴!!」
僕の言葉に力強く頷いてくれるのはいいんだけど、いつから僕は兄貴になったんだろう。
リーンさんも姉御なんて呼ばれてるし、そういう文化なのかもしれない。
ま、それはともかく。
「リーンさんは飛行スキルを身に着けたんですよね」
「ええ。そういうそーくんも、だよね?」
「いえ、僕は違いますよ」
「あれ、でもあの時、空を飛んで次元の魔物を攻撃してなかった?」
「あれはですね。飛んでたんじゃなくて走ってたんですよ」
「走る?空を?」
「はい。実際に見てもらったほうが早いので、移動がてら説明しますよ」
「良く分からないけどわかったわ」
そういって僕らは、残ってるエルフの少年たちに手を振りながら上空へと飛び上がる。
あ、僕の場合は『跳び上がる』が正しいかな。
地上から20メートル。世界樹の森を見下ろせる高さに来た僕たちは続いて南へと移動する。
リーンさんはまるで鳥が飛ぶように前傾姿勢で。
それに対して僕はランニングしているかのように足を動かしている。
「そーくんは、まるで走るように飛ぶんだね」
「実際に走ってるんですよ。
これは単純に空中に足場となる空間を固定させて、そこを踏んでるんです。
だから飛ぶというのとは違うんですよね」
竜の山でいろいろと試した結果がこれ。
飛行スキルはどうしても体外に魔力を放出する必要があって僕では習得出来なかった。
それに対してこれは、足で触れている空間に作用させているので、身体強化と同じ要領で出来てしまう。
慣れたら空中三角飛びでも四角飛びでもできるから急停止、急加速ができるメリットもある。
移動速度は普段の走っているのと同等。
それでも障害物が何もない分、早く目的地にたどり着ける。
「じゃあ、このまま行きましょうか。行先は商業都市グラマネスです」
「うん」
僕たちは連れ立って空を駆け抜けていく。
途中、鳥型の魔物を見つけては「焼き鳥?」「羽毛布団?」と顔を合わせて狩りに行くなど、ちょこちょこ脱線しながらも無事にたどり着いた。
馬車で1週間かかるところを寄り道しても2日かからず行けるのだから、色々と楽になった。
商業都市グラマネス
南に広大な穀倉地帯があり、南東にはアクミュールという漁業都市、西にはエルフの森を始めとした豊富な自然を擁し、大陸の南北を繋ぐ世界最大規模の商業都市国家である。
また過去に何度かあった飢饉や大災害に際して、どこよりも率先して救済に駆けずり回ったという実績がある。
その為、元々はただの1都市だったところから周囲の圧倒的支持を受けて「国家」と呼ばれるまでになった。
ただし王はおらず、議会と呼ばれる、複数の商会のトップによって日々会合が行われ都市の運営方針が決められている。
そんな街には近隣の町から毎日大勢の人が行き来しているわけで、今日も街の外門には行商の馬車が並んで審査を待っている。
馬車の列の隣には、冒険者なのか出稼ぎなのか、人の列が20人くらいいるので僕たちもその最後尾に並んだ。
「人多いね~」
「そうですね。僕が住んでた子供の頃よりも更に増えてますね」
「あ、でも進みは早いんだ」
リーンさんの言葉の通り、チェックは一瞬で終わっていく。
遠目から見た感じ門番の人はなにか専用の魔道具を使っているみたいだ。
程なくして僕たちの番になった。
「こんにちは」
「こんにちは。ようこそ商業都市グラマネスへ。
お二人はこの街は初めてですか?」
「僕は小さいころ、何回か来てます。最後はもう5年くらい前ですね」
「私は初めてです」
「なるほど。では、身分証はありますか?」
「はい。冒険者証でいいですか?」
「はい」
僕たちが取り出した冒険者証を受け取った門番の人は、片手で扱える魔道具を押し当てると「ピッ!」って音が鳴った。
続いて緑色の光が灯った。
「確認しました。ありがとうございます。どうぞお通りください」
なるほど。原理は分からないけど、あれで冒険者ギルドに照会を行ったんだろうな。
あと、地面の石床にも魔力が流れていたから、あれも何かの魔道具だったんだろう。
冒険者証を受け取って街の中に入ると、以前来た時とは比べ物にならないくらいの賑わいをみせていた。
「これは、すごいね」
「ですね。学園都市の倍かそれ以上の人ごみですね。
リーンさん。はぐれない様に手をつなぎましょうか」
「うん」
そうして僕たちは大勢の人ごみの中へと切り込んでいった。
リーンさんは色々とソージュの行動方針に毒されてきたので、寄り道が当たり前になってきています。




