4-5 寮生活の始まり
よろしくおねがいします。
ジバンリン暦52年3月26日
寮に移ってから10日が経った。
お陰様で第2男子寮での暮らしにも大分慣れてきた。
4:00
まだ真っ暗な内に起きて、出かける準備をする。
この時間、まだ皆は寝ているので、廊下や階段を使わずに窓から外に出る。
向かう先は片道1時間足らずの所にある森だ。
そこで夜露で薬草に出来た「精霊の雫」と呼ばれる魔力を含んだ水を採取していく。
1日で取れるのは中瓶1本分くらいの希少品だ。
(魔力が十分にあれば魔法で生み出すことも出来るんだけど)
6:00
寮に戻ってきて、キーヌの花に「精霊の雫」を少量あげてから1Fへ。
朝の支度をする為に起きて来た寮母のルーメさんに挨拶する。
「おはようございます。ルーメさん」
「はい、おはようございます。ソージュさん」
「今日もよろしくお願いします」
「こちらこそ、お手伝いありがとうございます」
2人で手分けして食堂の掃除を始める。
食堂は一度に200人は席に着けるので結構な広さだ。
僕が来るまではここを1人でやっていたというのだからルーメさんには頭が下がる。
そして6:30になると、厨房に朝食が届けられる。
寮の朝食は基本的にいつも一緒だ。
パンにベーコン、サラダ、ミルク、飲料水。
それらを大皿に盛り付けて各テーブルに置く。
席に着いた人から自分の食べたい分を取り分けていくスタイルだ。
朝早い人だと6:40には食堂に降りてくるから少し急ぐ。
8:20
朝食の時間が終わりになり、8:30には全ての大皿が片付けられる。
僕はこの時間まで、ひたすら取り皿とコップとフォークを洗い、ルーメさんは食べ物の減り具合を確認して、補充を行っている。
8:40
学園の講義開始が9:00なので授業が始まれば、支度をして講義室に向かう事になる。
授業が始まるのは5日後の4月1日から。
今は新入生と卒業生の入れ替わり期間だ。
毎日10~30人が退寮し、同じだけ入寮してくる。
「おい、Eランク。この荷物降ろしておけ」
「分かりました」
「Eランク、こっちも。昼までにやっとけ」
「はーい」
「俺の荷物が11:00に届く予定だから来たら部屋の前までよろしく。412号室だ」
降ろす荷物も多ければ、部屋まで持ち上げる荷物も多い。
なので順番とか運ぶ経路とかを考えながら引越業者+手伝いの冒険者に指示を出す必要がある。
「えっと、ゼンザイさんは425号室なので右の階段を使って上げてください。
リゼイさんの荷物?311号室ですけど、まだ荷物の運び出しが終わってないから20分待機で。これの次に運び出します。
その間に向こうのミツアンさんの荷物を上げるのを手伝ってください507号室です。
そっちの人、薬草茶を食堂に用意してありますので、今のうちに一息入れてください」
本当は大容量のアイテム袋を全員が持っていればこんな手間は掛からないのだけど、一般的に出回っているのはそれほど容量は大きくない。
大容量のアイテムボックスを持っている業者も居るが、そちらは更に人数が少なく、都市間の貿易に使われるので、引越し程度ではまず見かけない。
結果として引越し業者が商売として成り立っているのだから良いのかもしれないね。
17:00
トイレ、風呂、廊下などの共同部分の掃除に取り掛かる。
初日2日目くらいはかなり汚れていたが、今では少しでも汚せば誰の目にも分かるほどに綺麗になった。
人の習慣というのは不思議なもので、汚れていた頃はぞんざいに扱っていた人も、綺麗な様子を見ると汚さないようにと繊細になるようだ。
心なしか言葉遣いも前よりやさしくなった気がする。
18:00
寮生たちは外へ食事に出かけたり、厨房で料理をする。
寮では朝食しか出さないから、昼と夜は自力で調達する必要があるんだ。
僕は街の外に出て、魔物を狩ったり野草を採取している。
22:00
採取してきた薬草などで調薬してアイテム袋に入れておく。
出来た薬は知り合いの薬師に卸したり、ギルドの買取カウンターに持ち込んでいる。
23:00
就寝。キーヌに挨拶をして床につく。
そんな毎日を続けていると、あっという間に月日は過ぎていった。
明日は4月1日。
マリアッジ学園の講義初日だ。
昔、アメリカのどこかの町で、町中の落書きを綺麗にしたら犯罪が激減した、という話があります。
また、ガラスが1枚割られた車は1晩放置するだけで、何もかも盗られるそうです。
次回から学園生活が始まる前までのサイドストーリーをお届けします。
「寮母ルーメの笑顔」、「シルキーのキーヌは知っている」、「寮の先輩」の3話くらいです。
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第2男子寮に咲く1輪の花。
「きゃ~、やだ、花だって(バシバシッ)。あ、こらそこ!私の方がお姉さんなんだからね。蕾とか言わない!!」
次回:寮母ルーメの笑顔




