36-5 次元を繋ぐという事
よろしくお願いします。
「あえて『今』という表現を使いますが」
そう前置きをした後に大精霊様はそーくんの現状について教えてくれた。
「この世界から15年前に飛んだ彼がここにやってきたのは14年前。
『今』はここよりも更に南に行った所で魔物と戦闘を続けています。
残念ながら彼の実力ではその魔物を倒すには至らないでしょう。
ですから、彼は『これから』その魔物を次元の狭間に連れて行くことを決めます。
こちらから向こうにパスを通すタイミングが早ければ、次元の狭間に連れて行く前に彼のみをこちらに連れ戻すことになるでしょう。
逆にタイミングが遅ければ、彼と一緒にその魔物もこの次元へと招くことになります」
そこまで聞いてふと、レンさんも15年前にこの森の南側に行ってたって言ってたのを思い出した。
確かレンさんも危険な魔物がこの世界に来たから退治しに行ってたらしい。
あれ?じゃあもしかして、そーくんが戦ってる魔物ってレンさんが苦戦した相手と同じってこと?
もしそうだとしたら、こっちにその魔物が来たら、レンさんが対応してくれるかもしれないけど、それまでにかなりの被害が出るんじゃないかしら。
でもそれを言ったら、過去も同じ、なのかな。
「そうそう。もしその魔物を過去に置き去りにした場合ですが『この次元には』直接的な被害はありませんよ」
「それは別の次元は被害を受ける、ということですね」
「ええ。あくまでも可能性の話ではありますが、最悪、この大陸の南側が人が住めない状態になります。
その場合、ソージュ・ライオネル少年は生まれて間もなく死ぬことになるでしょう」
「……は!?」
つまり、本来過去に飛んだそーくんが守ったはずの過去が、守りきる前にそーくんが居なくなることで、今とは全く異なる歴史になるってこと??
じゃあ逆にこの次元にそんな強力な魔物を連れ込んだりしたら、ここからの未来が大きく変わってしまうんじゃないかな。
そうすると、そーくんならまた未来から過去を救おうとあの手この手を尽くすだろうし。
でもそもそも、そーくんが死んでしまう世界の場合、過去にも飛ばない訳で、結局どうなるんだろう。
「うーん、頭がこんがらがって来ました」
「無理もありません。1つの次元に生きる方には本来考える必要のない事ですから。
知っておいて欲しいのは、次元を繋ぐというのは、そういった多くの可能性を秘めているという事です」
「確かに、今なら気軽に次元転移をしたいなんて思えないですね」
「はい。長々と話しましたが、今回あなたが彼をこの次元に呼び戻すことを止めることはありません。
あなたの準備と覚悟が出来たら、いつでも扉を開けるように準備をしておきましょう」
そう言って静かに礼をした後、大精霊様は霧のように消えていった。
残ったのは私とルゥさん。
私は1つ気になっていたことをルゥさんに尋ねてみることにした。
「あの、大精霊様もルゥさんも、なぜこんなにも気にかけてくださるのでしょうか。
元々エルフは排他的な種族だって聞いてましたし、門前払いとかされるんじゃないかって、ここに来るまでは心配していたんですけど。
この杖を持ってきた、というだけじゃないんですよね」
「ええ。色々あったんです。それを話すと長くなりますので、また時間のある時にしましょう。
それよりも今はやるべきことをやりましょう」
「やるべきこと?」
「準備です」
にこっと笑ったルゥさんがスッと手を差し出すと私の足元に魔法陣が生まれた。
「今のリーンさんでは次元の扉を開くには力不足です。
次元の歪みを極力小さくするために、空間把握の能力を向上させてください。
ジルもですよ。この地なら契約主が居なくても力を発揮できるでしょう?
ふたりで修行場に行って特訓して来てください」
その言葉を最後に私は光に包まれるのだった。
タイムトリップ系の話は色々こんがらがります。
そして、ソージュの出番はもう少し先になりました。




