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Eランクの僕とSランクの彼女  作者: たてみん
第1章:Eランクの僕と彼女
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4-4 寮のルールとランクの関係

よろしくお願いします。


元幽霊屋敷を出た僕は、まずは冒険者ギルドで報告を行う。


「お疲れ様でした。ソージュ様。

そのご様子ですと、無事に除霊に成功されたのですね」

「ええ。屋敷に居たのは幽霊ではなく、屋敷を守る精霊でした。

なので、聖魔法が効かなかったようです。

あ、屋敷の鍵をお返ししますね」


鍵を受け取りつつ、視線は僕の持っている植木鉢に向かっている。

「それがその精霊ですか?」と目で聞いてきたので、小さく頷く。


「はい、確かに。

それでは、これから依頼主に連絡して、無事に幽霊が出なくなったことを確認します。

確認出来次第、依頼の完了と報酬の受け渡しとなりますが、問題ありませんか?」

「はい。もし他にも何か出るようであれば連絡してください。

あと、依頼内容にあったとおり、寝室の家具については出来る限り処分しておきました。

それについては、後から聞いてない等の苦情が無いようにお願いします」

「畏まりました。先方には解決報告の前に、改めて言質を取っておきます」


こういう依頼において、認識のズレによる騒動は良く起きる。

特に無事に問題が解決した瞬間に、手のひらを返されるパターンが多い。

お父さんも信頼の置けない人との大きな交渉では、必ず契約書を作っていた。


「よろしくお願いします。それでは、今日はこれで」

「はい、ありがとうございました」



夕暮れ時の街並みを抜けて、学園の敷地へと戻る。


(おい、あれ見ろよ)

(あぁ、あれが例の)

(まったく、よく恥ずかしくねえな)

(私なら入学辞退するわね)


ん?なんだろう。

昼もあったけど、僕を見て何かを囁き合ったり、クスクス笑っている。

あ!?もしかして服に犬のウンコが付いてるとかかも。もしくは顔が煤で汚れてるとか。

姿見も回収してきたから、部屋に戻ったら確認してみよう。


でも、その見当外れの考えは、寮を入ったところで解消された。


「お、Eランクのお帰りか」

「みすぼらしい身なり。まぁEランクにはお似合いか」

「みすぼらしいなりに、花でも飾ろうってか」

「うわ、俺、真っ黒いバッジって初めて見たわ」


先輩の寮生だろうか。

寮の玄関を入った先の共用スペースで寛いでいた人達が、僕を見下しながら、そう言ってきた。


「えっと、あなた達は?」

「俺達は今年3年のBランクだ」

「いいか、この寮では下位ランクは上位ランクの小間使いになるのがルールだ」

「だからお前は、寮生全員の言うことを聞かなければならないんだ。

なにせEランクはお前だけだろうからな」

「はぁ」


……ルールか。

学園ってそういうものなのかな。


「ちっ、腑抜けた面してんな。ちゃんと分かってんのか?」

「まずは風呂掃除と全ての階のトイレ掃除、共用スペースの掃除、毎朝の朝食の配膳はお前の仕事な」

「後はまあ、何か用があったら呼ぶわ」

「せいぜい俺達の為に働いてくれ、Eランク」


あ、つまりこの寮に何人居るかは知らないけど、巨大キャラバンの新人の下働きってことか。

それなら納得だね。


「なるほど、では今は特に用はないってことですね。

なら荷物の整理があるので部屋に戻ります」


そう断って自分の部屋に戻る。

えっと、まずはキーヌの花を窓辺に置いて、残りの家具もどんどんアイテム袋から出していく。

いつの間にか人の姿に戻ったキーヌが窓辺に立っていた。


「よろしかったのですか?旦那様」

「ん?何が?」

「先程の上級生と名乗った男達です。

明らかに旦那様を見下しておりました。

許可して頂けるなら、今すぐにでも刈り取って参ります」


変わらないトーンで話しているけど、もしかしてキーヌ怒ってる?

僕は家具の位置を調整していた手を止めてキーヌに向き直る。


「それは、許可できないかな。

今のところ、僕らに危害を加えた訳じゃないしね。

あれくらいはこの寮だけじゃなくても、よくあることだよ。

種族が違うから、とか、若いから、とか、髪の毛が黒いから、とか。

そんなのに一々目くじらを立ててたら切りがないよ」


入試の時のケイ達もそれで難癖付けられてたしね。


「なるほど。それでは旦那様に危害を加えようとした場合は適切に処理いたします」

「言葉の端々が物騒なのが気になるけど。

あ、ひとつ訂正というか、僕だけじゃなく、僕の大切なものも守りたい。

だからキーヌも自分の身を蔑ろにしては駄目だよ」

「それは私も旦那様の大切なものに含まれるのでしょうか」

「もちろん。もう家族みたいなものだと思ってたけど、いやだった?」

「いいえ。光栄の至りです」


そう言って深々と礼をするキーヌ。

その姿にはこれまでの苦労が見え隠れしていた。

旦那様としては、これからはキーヌにも幸せになって貰えるように頑張ろう。



本当はもっともっとEランクを貶めたいのですが、ソージュの人生経験がたかだか学生の差別如きを跳ね除けてしまいそうです。

キーヌは精霊なので人の常識やルールを無視するところがあります。主至上主義です。


##########


3月後半。それは卒業生と新入生の入れ替わりの期間。

ソージュは授業が始まる前に、寮での生活がスタートした。


次回:寮生活の始まり


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