1-1 可愛い子には旅をさせよう
よろしくお願いします。
前作が無事に完結しましたので、連載開始します。
といってもまだ毎日更新は厳しそうです。
今回も最初の方は話の流れがぶれるかもしれませんが、ご了承ください。
ジバンリン暦52年2月25日
冬の寒さも収まり始めた頃、両親から爆弾発言が投げられた。
「なあソージュ。マリアッジ学園は知ってるよな」
「もちろん」
「そーちゃんには、今年の春からそこに通って欲しいの」
「はい。って、えぇぇ!!」
マリアッジ学園といえば、大陸中央に存在する学園都市国家だ。
昔、世界を救った勇者様が、国境や種族の壁を乗り越える架け橋となるようにと願って創設された。
現在は貴族やエリートが集まる場所としても有名だ。
「どうして僕がそんな凄い所に行くの?」
「それはな」
「それはね」
「「私たちの夢だからだ(よ)」」
一瞬だけ顔を見合わせたお父さんとお母さんは、それこそ夢見る青年って感じで目を輝かせていた。
「学園で同世代の子供たちと切磋琢磨するのは、とても良い経験になると思うんだ」
「それに、ご近所の奥様から、学園はそれは素晴らしいものだって聞いたのよ」
「私たちが子供の頃は世界の危機から復興の最中でね。
学園にはほんの一部の人達しか通えなかったんだ」
「そうね。それに私は子供の頃から冒険者として活動してたから、学園に行く暇が無かったのよ」
「母さんは凄いぞ。なんてったってAランク冒険者だったんだからな」
「それを言ったら、あなただって天才ポーターが居るって有名だったのよ」
「いやいや、きみの魅力には負けるよ」
「いえいえ、あなたの方が素敵よ」
「メイラ……」
「グラン……」
お互いの事を褒め出したとたん、手に手を取って見つめ合うふたり。
おーい。
だめだ。いつものラブラブモードに入ってしまった。
もう、気が付くといっつもこうだからまったく困ったものだ。
「ごほんっ」
「おっと」「あら」
わざとらしく咳をすると、今回は1回で戻ってきてくれた。
「それで、学園に通うのはまあ良いとして、試験とかもあるんでしょ。
僕、町の子供たちみたいな初等教育は受けていないけど大丈夫なの?」
ちなみに子供の教育課程は8歳~12歳くらいの約3年間受ける初等教育と、13歳~18歳くらいの約3年間受ける高等教育がある。
なお、年齢に幅があるのは、種族による成長速度の差や、飛び級が存在するからだ。
マリアッジ学園には付属の初等教育機関もあるそうだけど、僕はもう14になる年なので高等教育の方だろう。
僕の不安をよそに、お父さん達は笑顔のままだ。
「大丈夫だ。ソージュには小さい時からお父さんの知識や技術を伝えて来たし、一緒に世界中を旅してきたんだから大抵の事は分かるだろう」
「狩りの仕方や魔物との戦い方についての基礎は、良くわたしと一緒にやってたから身についているでしょう」
「それはそうだけど」
確かに僕たち家族は行商人として旅を続けているから、生活の知恵は身に付いていると思う。
それに道中魔物に襲われることもあったから、護身術を含めて戦い方はお母さんから教え込まれているし、実際に何度も魔物を撃退している。
と、そこでお母さんの顔が真剣なものに変わる。
「それと、そーちゃん。私達の血の事は秘密にしなければダメよ」
「うん、わかってます。知られると命を狙われるかもしれないんだよね」
お母さんは特殊な種族らしく、過去に他種族から狙われたことがあるらしい。
その血を受け継ぐ僕も、同様に狙われる危険があると、小さい時から教えられてきた。
そして最後にお父さんから、更に爆弾発言が飛んで来た。
「あ、そうそう。入学願書の申請は3月1日までだそうだ」
「えっ?」
「大丈夫よ、そーちゃんが全力で走って行けば6日もあれば十分に間に合うわ」
「全力でって」
僕たちが今いる商業都市ソフフェージュからマリアッジ学園まで、馬車で7日掛かる。
つまり、本当に全力で走り抜けないといけないらしい。
さらに、
「それと、そーちゃんが学園に向った後は、私達はバカンスに行ってくるからね」
「久しぶりにふたりっきりを満喫してくるよ」
いや、いつもふたりでイチャイチャしてるよね!
というより、当分戻ってくるなって事だよね、それ!!
そんなこんなで、翌朝、僕はマリアッジ学園に向けて旅立つ事になった。
ソージュ一家は世界を旅する旅商人です。
町を移動しては1月ほど商売をして次の町を目指す。
そんな暮らしをしています。
そしてソージュは両親のラブラブ旅行の為に学園に送り込まれるのでした。
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学園に行くことになったソージュ。
しかし、学園生活スタート前から問題は山積みであった。
次回:森を抜けて近道しよう
主人公のイチャラブまでは少し時間が掛かります。