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Eランクの僕とSランクの彼女  作者: たてみん
第3章:だから僕と彼女はここにいる
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39-4 飛ぶということ

よろしくお願いします。

いつもながらに戦闘シーンも特訓シーンもサクッと終っていきます。

みんなどうやって書いてるんだろう。

風がゴーゴーと音を立てて吹き荒れ、下を見れば木々が点にしか見えない山の頂上付近の崖に私とレンさんは来ていた。

隣を見ればレンさんがニコニコしてる。


「えーっと、何で私たちってここに来たんだっけ」

「それはもちろん飛行スキルを覚える為よ。

と、その前に、念のために聞くけどリーンは寒いのは平気よね?」

「ええ、そっちは大丈夫。それより」


それより、これからどうするのかが凄い心配。

もしかしてここから飛び降りながらスキルを覚えろとか言ったりしないよね。

流石に幾らなんでも無事では済まないんだけど。


「ふふふっ。想像通り、ここから飛び降りて、って嘘よ嘘。そんな訳ないでしょ」

「あ、あはは。そう、よね」

「そもそも飛行スキルはそんな簡単に覚えられないしね。

ここに来たのは、空を飛ぶってことの意味を知って欲しかったからなの」

「意味?」


聞き返した私に頷くレンさん。

よく分かっていない私に説明をしてくれた。


「リーンは、大地人とはちょっと種族が違うみたいだけど、人間の部類よね。

人間ってね。そもそも飛べるようには生まれてきていないの。

だから『自分は飛べない』もしくは『飛ぶことは普通じゃない』って思い込んでいるのよ」

「それはここから飛び降りたら死ぬって思うように?」

「ええそう。でも私たちドラゴンや鳥は、生まれながらに『空は飛べるもの』って理解してるの。

だからあなた達が地面を走るように、魚が海を泳ぐように、ドラゴンは空を飛ぶのよ」


そう言って、とんっとジャンプしたかと思うと空中に浮かぶレンさん。

それは本当に何の気負いもなく、当たり前の仕草として行っていた。


「いい。だからまずやるべきことは、どうやったらスキルが発動できるか、ではなく、自分が空に在ることが自然なんだって信じることなの。

だから、行くわよ♪」


レンさんは私の手を引いて前へ1歩踏み出した。

って、崖だから!!


「きゃああ」

「ふふ、だから大丈夫よ」


驚いてレンさんに抱きついた私を見て、笑われてしまったけど、こっちは今それどころじゃない。

だって下を見れば遥か先まで何もないのだ。

落ちればどう頑張っても即死だろう。

でも、何と言うか、安定してる?

時間が経って少しずつ落ち着いてきたら、さっきまで激しかった風もそよ風くらいにしか感じないし、まるで湖に潜ったときのような浮遊感だけで、一向に落ちそうな感じじゃない。


「ねっ。分かったかしら。飛ぶっていうのはこういうことよ。

落ち着いてみれば何て事は無い、当たり前のことなの。

でももし先にリーンが飛行スキルだけを習得していたら、ずっとあの恐怖と戦うことになるわ。

そして慣れる前に恐怖に負けて気が狂うか落下する可能性が高かったの」


確かに、空を飛ぶ方法を手に入れることと、飛ぶという事は全くの別物だった。

それが分かっていたから、レンさんはここに連れてきてくれたのね。


「さて、じゃあ次のステップとして、空の散歩と洒落込みましょう。

その為にも、もうそろそろ抱きつく手足を離してもらってもいいかしら」

「え、あっ。ごめんなさい。そうだったわ」


言われて私がレンさんに両手足でがっつりしがみついてるのを思い出して慌てて離した。

その瞬間、今までのが夢だったかのように、そして夢から覚める直前のあの感覚のように、私は重力に引かれて地面へと落下した。


「あっ、ばか。掴んでた手まで放しちゃだめじゃない」


ガシッと慌てて引っ張りあげてくれたレンさんのお陰で事なきを得たけど、3秒にも満たないその時間で私の心臓は爆発しそうな位、激しく鼓動していた。


「あ、ありがとう」

「もう。こうして触れることで魔力をリーンまで流してるから飛べてるんだから、この手を放しちゃダメよ」

「うん。身に沁みてわかったわ」

「ついでだから言うと、私から送られてる魔力は分かるよね。この感覚を掴めれば、きっと自分でも同じ様に飛べるようになるわよ」

「この全身を包み込んでいる魔力ね。やってみる」


目を閉じて、レンさんから送られてくる魔力に意識を集中する。

暖炉の火のようなぬくもりのあるそれは、属性で言えば火が近いのだろう。

それでも空を飛べているということはスキルと属性は無縁だってことなのかな。

そんな事を考えながら自分でも魔力を放出してみる。

……違う。これじゃ、ただ魔力を纏って強化しているだけね。

と、レンさんから声が掛かった。


「焦らなくてもいいわよ。

だれも今日1日で習得できるなんて思っていないから。

今日はそうね。この魔力を感じながら空の散歩を楽しみましょう。

大丈夫。リーンなら1ヶ月もあれば十分飛べるわ。それまでは付き合ってあげるから」

「そう、ね。ありがとう。よろしくお願いするわ」


そうしてレンさんに付き合ってもらっての特訓が始まった。

って、やっぱり突き落とされるんですか!?

いや、魔力切れになったときにパニックにならないようにっていゃあぁぁぁ……

レンは若干いたずらっ子です。なにせまだ生まれてから50年ちょっとのお嬢様ですから。

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