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Eランクの僕とSランクの彼女  作者: たてみん
第3章:だから僕と彼女はここにいる
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38-5 見つかる道筋

休みの内に書き進めねば。

結局貯めてないから休みが明けたらまた滞りそうですが。

お母さんに寝室から探求の水晶を取ってきてもらって机の上に置くと、私はそっと手をかざした。


「いい?この魔道具は対象を鮮明に思い浮かべられるほど、より正確に像を映すと言われているわ。

あなたの見つけたその彼に、どうやったら再会出来るのかを強くイメージしなさい」

「うん」


薄く目を閉じてそーくんの事を思い浮かべる。

そーくんの笑顔、そーくんの声、手のぬくもり、そして血の味を。

そうして目を開けると、水晶は真っ暗だった。


「真っ黒……え、失敗?」


全く何も映らないって事は、可能性がゼロだってことを意味している。

それってもう、そーくんとは会えないって事!?

焦る私にお母さんが声を掛けた。


「待って、良く見なさい。水晶はそもそもそんな色ではないわ。

つまりそれで映っているのよ。それにただの黒という訳でもないみたいよ」


お母さんのその言葉にはっとして、改めて水晶を覗き込む。

すると、まるで雲に隠れた月が出てきたかのように黒かった水晶が輝きを取り戻して、今度は深い深い緑色の景色を映し出した。


「これは、夜の森と山?にしては縮尺がおかしいような。山を上から見下ろしてるなら森の木が1つ1つ見えるはずないよね。それなら山が丘くらい小さいってことなのかしら」


そう考えた所で情景にまた変化が訪れて、山と思っていたものの下から光が立ち上り、私を突き抜けて空へと吸い込まれて行く様子を映しだした。

そしてそれで終わりだったらしく、今度こそ本当に水晶は何も映し出さない透明な姿へと戻った。


「今のはどこの景色を映してたんだろう?」

「分からないわ。少なくともこの近くには無いと思うけど」

「うん、竜の山じゃないよ。あんな大きな木は聞いた事もないから」

「え、大きな木?」


ゾルタはあの山のようなものを大きな木だと言った。それって……

そう考えたところで、横に立てかけてあった精霊武器から鈴の音が聞こえてきた。


「そっか。あれが世界樹だったんだ。言われてみれば山と勘違いするほど大きな木なんて他に無いよね」

「そうね。ならリーン。あなたは今から急ぎ竜の山へ行きなさい」


え、世界樹の森じゃなくて?

どういうことなんだろう。


「先ほどの映像は上から見下ろした情景だったでしょう?」

「うん」

「探求の水晶はあなたが見るべき情景をそのまま映していたのよ」

「それってつまり、私が空を飛んでいたってこと?でも私、空を飛ぶなんて出来ないよ?」


飛行魔法は風系統のかなり上級の魔法で、氷系統が得意な私からするとちょっと苦手な分野だ。

今から覚えようとしたら10年かかったとしても不思議じゃない。


「ええ、分かっています。だから竜の山へ向かうの。

あなたは知らないかもしれないけど、ドラゴンの多くは魔法で空を飛んでいる訳でもないし、翼の羽ばたきで飛んでいる訳でもないのよ。翼だけで飛べるのは翼竜(ワイバーン)までね」

「じゃあ、どうやって飛んでいるの?」

「スキルの一種だそうよ。それも種族固有のものではないらしいから、頑張ればあなたでも覚えられるわ」

「スキル、なんだ」


スキルと魔法の違いを簡単に表すと、魔法は外的要因を変化させて現象を起こす。

今で言うと、風を起こして自分を空に飛ばす、というのがそれに当たる。

それに対してスキルは内的要因、つまり自分自身に作用させて現象を起こす。

なので『飛ぶ』という事実を創り上げる。あんな巨体を空に飛ばすなんて想像も出来ないけど。


「そういう事だから、ドラゴンから飛行スキルを伝授してもらって、そこから世界樹の森に向いなさい。

あ、それと猶予は大体1か月って所よ」

「そんなあっさり言うけど、絶対簡単には行かないよね。って、1か月!?」

「あら、最後見てなかったの?あの星空は9月頃のものよ。月が見えていればより正確な日にちが分かったんだけどね」


あの一瞬で星空まで確認しているなんて、流石はお母さんね。

私なんて光に包まれてびっくりしてたのに。

そう感心していたところで今度は共鳴石から通信が入った。


『リーン様、聞こえますか?』

「その声はミラちゃんね。なにかあった?」

『はい。私達は今、里に帰ってきているのですが、そこの祈祷師様からリーン様に言伝です。

【満月の晩に清らかな身で飛べ】と。今ならそれで伝わると言われたのですが、如何でしょうか』

「満月の晩に、清らかな身で、ね。

うん。後半はちょっと考えないといけないけど、前半の言葉はちょうど今欲しかった情報よ」

『それは良かったです。清らかな身とは、穢されていないこと、もしくは禊などを意味することが多いと考えます』

「わざわざ言うって事は、禊の方かしらね。ありがとう。これでそーくんを救い出すのに大きく前進できたわ」


お礼を言って通信を終える。

それにしてもその祈祷師の人ってこっちが見えてるのかしら。凄いタイミングだったけど。

ま、それはともかく。


「9月の満月って言ったら15日ね」

「ええ。移動とか準備とかを考えるなら、飛行スキルを習得するタイムリミットは9月10日ね。

ただ、世界樹の森に辿り着いたとしても、その地に住む守護者たちに許可を貰わないと世界樹の上空を飛ぶのは危険よ。

だから9月5日にはここを発つべきね」

「そっか、無断で飛んでると、エルフ達の弓や、あの蜘蛛の糸が飛んできて落とされちゃう危険もあるのね」


学園ダンジョンのことを思い出せば、飛んでいるところを蜘蛛の糸で襲われればひとたまりも無いことは想像に難くない。

幸いこの杖があれば味方と認識してもらうのは難しくはなさそうだけど、それでも用心するに越したことは無いわね。

よし、そうと決まればパパッと竜の山に行って飛行スキルをマスターするわよ!!

色々ご都合主義を交えつつ、竜の山へと向かう事に。

ソージュとの合流地点が世界樹の森なのは予想通りです。

ケイとミラちゃんに関する話は閑話で後ほど。(次くらい?)

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