38-4 実家にて
気が付けば年号が変わってしまいました。
投稿の間が空くといろいろときついですね。
「ただいま」
「おじゃましま~す」
挨拶をしながら実家の扉を開けると、パタパタと音がした後、奥の部屋からお母さんが出てきた。
「ただいま、お母さん」
「あら、お帰りなさい。元気そうで良かったわ。
あなた家を出て行ったきり、手紙の1つも寄越さないんだもの。
風のうわさで無事なのは聞いていたけど、時々で良いから顔を出してね。
さ、お茶を用意するから座って待ってなさい」
「はーい」
そう言いながら台所に向かうお母さんを見送る。
居間の雰囲気は前とはちょっと変わってる。
何と言うか小物が増えた?生活に余裕が出来たってことなのかな。
あとこれは何だろう。
木のへらみたいなのの左右に紐がくっ付いてて、その先に丸い木の玉が付いてるけど。
「ゾルタ、これが何か分かる?」
「はい。それはコンコン太鼓っていうおもちゃですよ。
横に回転させると紐の先の玉が真ん中の板にあたってコンコン音を立てるんです。
鬼族の人が赤ん坊をあやすのによく使っているらしいですね」
「ふぅん」
試しに回転させてみるとコンコンコンコンッと軽快な音が鳴る。
玉の動きと合わせて、確かに赤ちゃんが喜びそうなおもちゃだな、なんて思っていたところにお母さんが戻ってきた。
「おまたせ。どう?そのおもちゃ。先日村に訪れた行商人の人から買ってみたんだけど」
「うん、良いんじゃないかな。
でも、子供をあやすおもちゃなんでしょ?
そんなの買ってどうす、る……って、もしかして!?」
「ふふっ、ええ。今お腹の中にあなたの弟か妹が居るのよ。
生まれるのは3ヵ月後くらいかしらね」
そう言いながらさするお腹は確かに膨らんできている。
そっかぁ。とうとう私もお姉ちゃんになるのね。
「おめでとう、お母さん」
「ええ、ありがとう。それで、私はいつ孫の顔が見れるのかしら?」
「え?」
「え、じゃないでしょ。あなたの肌艶を見れば分かります。
良い人が出来たんでしょ?それとも、あの人が無事に見付かったのかしら」
「えぇぇ!?リーン姉に彼氏が出来たの!!」
そっか、そーくんから定期的に血を貰ってたから、家を出た時より大分健康的になってるんだ。
当時は最低限の血を狩った動物から補給するだけだったし。
あとゾルタは驚きすぎじゃないかな。
「多分なんだけどあの人、お兄ちゃんと思われる人は見つかったよ」
「あら、という事は、彼はあなたの事を完全に忘れていたの?」
「うーん、それがちょっとややこしい話でね。
あの時から15年も経ってるんだから、お兄ちゃんも良い年したおじさんになってると思ってたんだけど、私が見つけたその人は、見た目の年齢も実年齢も今の私よりも若かったの。
そう、ちょうど昔私達家族を助けてくれた時くらいの年齢だったわ。
お陰で初めて会った時には全然気が付かなかったもの」
「それは、確かに変ね。彼はおおよそ大地人に近い種族に見えたから15年経っても見た目に変化がない事は無いと思うんだけど。
兄弟とか親子って可能性も無いのよね」
「うん。ほぼ間違いなく本人だと思う。
それで、ここからが今日帰って来た本題でもあるんだけど、先日その人が事故で別の時空間に飛ばされてしまったの。
私の見立てではきっとこの世界の過去に飛ばされたんじゃないかって考えてるの」
「なるほど。確かにそう考えれば辻褄は合うわね」
お母さんは色々理解してくれたようで、頷いてくれる。
ゾルタの方はいまいちピンと来てないみたいだけど。
それもそうよね。時空間転移って早々起きる事じゃないし、普通に生活している分には聞くこともない話だろう。
「えと、えと。じゃあリーン姉もその、時空間っていうのを飛んで追いかけるのか?」
やっとひねり出した答えがそれだったんだろう。
聞いた私は微笑みながら首を横に振る。
「ううん。以前の私ならそうしたかもしれないけど。実際ここを出る時はその方法を探しに出た訳だしね。
でもお兄ちゃんは元の世界に戻ろうとしていたはずなの。
それがこの世界なら、私はその戻ってくるお手伝いをしたいなって思って」
「なるほど。それで『探求の水晶』で調べに来たのね」
「うん、そういう事」
探求の水晶って言うのは我が家に伝わる魔道具で、探し物をどうやったら見つけられるかがぼんやりと分かる魔道具なの。
ちなみに、世間一般に溢れているって程でもないけど、いくつかは同じようなのが存在するらしい。
その精度によって価値はピンキリらしいけど、以前私が行方不明になった時もこれのお陰で無事に再会出来たって話だから期待して良いはず。
1500文字前後でって考えると話の切れ間が微妙になります。
お母さんの懐妊は平和の象徴ということで、この後特に何がある訳でもないです。