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Eランクの僕とSランクの彼女  作者: たてみん
第3章:だから僕と彼女はここにいる
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35-B ラーナ・バルディス

前回に引き続き、日記調でお送りします。

今回はリーンちゃんのお母さん視点。

Side ラーナ


ジバンリン暦35年3月2日

冬の寒さも収まって春の息吹を感じ始めた頃、私達一家は春一番の山菜採りに出掛けた。

この冬は厳しい移動もあって辛い思いばかりをさせてきた娘に、早く楽しい思いをしてもらおうと思ったんです。

それがまさか、あんなことになるなんて。


魔物たちを撃退した私達は次元の亀裂も破壊してから家に戻って来た。

魔物の返り血もそのままに、私は荷物袋から一つの魔道具を取り出す。

テーブルについて慎重に魔力を込めると少しずつ光を帯びて行く魔道具。

これは探求の水晶と呼ばれるもので、頭に思い描いたものが、どうすれば手に入るのかが朧げながらに分かるというもの。


(お願い、教えて。あの子ともう一度会うために、私達はどうすればいいの?)


願う私に魔道具が応えてくれる。

この光景は……ここ?ただ全く今と同じではなく、どことなく違う。

あ、そうか。季節だ。外から入り込む日差しが冬のそれではない。

ということは、ここで待てという事なのかしら。

それなら、しばらくしたら娘の方からここに戻ってくるという事なのか。

でも、まだ小さいあの子が自力で辿り着けるとは考えにくい。

きっと誰かに助けてもらえるのね。良かった。

私は隣で不安そうにしている夫にこのことを伝えて、娘の帰りを待つことを決めた。

その為にも村の人達との良好な関係を築いて行かないとね。



ジバンリン暦35年7月3日

村で一つ困ったことが起きた。

普段2か月に1回来てくれる行商が予定日を半月過ぎても来ないのだ。

行商は道中、魔物や盗賊に襲われる危険もあるので、もしかしたら何かあったのかもしれない。

そう思っていた所で、いつもとは違う行商人がやってきた。

村の人たちは喜んでいたが、私達は喜んでばかりもいられない。

……あの行商の人達、どこか変だわ。顔色も悪いし生気が薄い。

病気か何かかしら。

結局、その人たちは村に1泊してから普通に行商を行い、村を出て行った。



ジバンリン暦35年7月14日

村でまた事件が起きた。

今回は山に入っていた村の少年3人が大怪我をして帰って来たのだ。

何でも魔物に襲われたらしく、なんとか追い払って逃げてきたそうだ。

それを聞いて私達が山に入って魔物を捜索するも見つからずに終わった。

少年たちにどのような魔物だったのかを聞いたけど、混乱していて姿をはっきりと見ていなかったらしい。

今後は山に入るときは子供たちだけで入らないようにと決められた。



ジバンリン暦35年7月26日

その日は、小さな胸騒ぎで目が覚めた。

まずは隣で寝ている夫が無事なのを確認して、家の中を確認する。

良かった、寝る前と特に変化はなさそう。

気の所為だったのかしら……。

まぁ、ひとまずは朝食の準備を進めましょう。


夫も起きてきて朝食を取ろうとしたところで家の扉がノックされた。

朝食時に誰かが来るなんて珍しいわね。誰かしら。


「はい、どちらさ……まぁ、リーンちゃん!?」


そこには4か月前に姿を消した娘がすこし大きくなって立っていた。

顔色も良くて元気そうで本当に良かったわ。

私の声に夫も慌てて出てきた。

隣に立っている少年。彼が娘を連れてきてくれたのね。

彼にはなんてお礼を言ったら良いかしら。

まずは腕によりをかけて朝ご飯をごちそうしないと。


そう思っていたのだけれど、彼は突然ここを離れるように言ってきた。

それはまるで、私達が吸血族である事がしられて命を狙われている時に似ている。

でも、今回私達はまだそれが露見するような振る舞いは見せていないはずよね。

ただ彼の焦り具合を見れば、冗談でもなんでもなく本当に危険が迫っていることが分かった。

なので私達は急ぎ支度をして家を出る。

あ、念の為いつものように家の扉にはロックの魔法を掛けておきましょう。

こうすることで、誰かが押しかけてきてもすぐには中を確認出来ないから多少の時間稼ぎはできるはず。


そして、今私達の視線の先では、村人たちが暴徒と化して私達の家を燃やしている。

もしあのまま家に残っていたら、私達は磔にされて殺されていたかもしれない。

そう思わせるくらい、村人たちからは狂気が伝わって来た。


村にも少しずつ不穏な空気が流れていたんですね、実は。というお話。


次回は久しぶりにリーンさん(現在)のお話を挟もうかと思ってます。


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