32-4 次元の亀裂の封印
よろしくお願いします。
すみません。また1日空いてしまいました。
メイラさん、カイさん、あとりーんちゃんと共に次元の亀裂に向かおうとした所で、先ほどの雷鬼の女性が案内を買って出てくれた。
そうして向かった先で僕が見たものは、空中に浮かぶ歪な穴だった。
穴の中は真っ暗で向こう側は見えない。
周りをぐるっと回ってみると、縦長の楕円球状になっているのが分かる。
大きさは、鬼族の大人でも余裕で通れる位だ。
それが少しずつ形を歪ませながら、時折周りの空間に衝撃波のようなものを出している。
「そーちゃんもりーんちゃんも、あまり近づいちゃダメよ」
「はーい」
「それで、メイラさん。この次元の亀裂、ですか。
これってどうやって閉じるんですか?」
「そうね、小さいのとか不安定なのであれば亀裂を何かで塞いで終了なんだけど。
ここまで大きく安定されると、逆に固定した方が早いわね」
「固定、ですか」
「まぁ見てなさい」
そう言ってメイラさんはアイテム袋から巨大なハンマーを取り出した。
それでどうするんだろうって見てたら、おもむろに振りかぶった。
「ッセイ!」
ゴイーーンと音を立てる亀裂。
って次元の亀裂ってハンマーで殴れるんだ。
メイラさんは慣れた感じで何度も殴りつけていくと、次第に歪だった亀裂が整形されていく。
「あの、カイさん。こういうものなんですか?」
「……いや。俺が知っているのは、魔法で空間ごと安定化させるやり方で、こんな強引なのは初めて見たぞ」
「あはは。やっぱり珍しいんですね」
「あ、でも綺麗になったよ」
りーんちゃんの言葉を聞いて改めて見ると、それはもう、亀裂というより卵、もしくは楕円形の門とでも言うような様相になっていた。
なるほど。周りの空間への影響も収まって安定しているのが見て取れる。
「ま。まずはこんな所ね。あとは結界を張って封印すれば完了ね」
「これはどういう状態なんですか?」
「簡単に言えば歪んで色々漏れてたから、叩いて直したのよ。
こうして安定させれば、暴走することも無くなるし、周囲のものを吸い込むこともなくなるわ。
流石に、この状態でも中に入って無事に済む保障は無いけどね」
「だから、間違って誰かが入らないように壁を作ろう。
まずは柱を立てていくから少年は集落から適当な材料を貰ってきてくれ」
「はい!」
カイさんが次元の亀裂改め門の周囲の地面に穴を掘っていく。
って、凄い速度だ。それとどことなく嬉しそう?穴掘りが好きなのかな。
まぁそれはともかく、僕は雷鬼のお姉さんと一緒に材料集めに走る。
そうして、次元の門の周囲4箇所に柱を立てて、その柱の上を梁を通して固定していく。
壁はどうしようと思っていた所で、鬼の女性達が太い縄を持ってきて、柱にかけていった。
「あの、この縄は何ですか?」
『シメナワというものよ。昔から私たちに伝わってきた、封印具の1つ』
『待っていて。今、巫女を呼んでくる』
そうしてやってきたのは鬼の女性たち。
ってこの人たち、バールさんよりも強そうなんだけど、何者!?
その中のひとりがそう言って優しく僕の頭を撫でていく。
『バールの妻のマニュよ。
ソージュって言ったかしら。今日はありがとうね。
あなたのあの言葉。あれのお陰で息子は大分救われたわ』
うん、この強さと優しさを併せ持った姿はまさに母親って感じだ。
そしてマニュさんは他の女性達と一緒に柱とシメナワに囲まれた次元の門を囲み手をかざす。
『巫女なんて呼ばれているけど、一族の中で特に魔力の高い女性が選ばれているだけなのよ。
この封印の魔法も、一族のものなら大抵は知っているし』
いや、簡単そうに言ってるけど、マニュさんから発せられる魔力だけでも、さっきの風神雷神の2人の魔力を合わせた位になってる。
マルスのお姉さんもそうだったし、もしかしなくても、鬼族って男性よりも女性の方が強いんじゃないかな。
そして濃密な魔力が空間を満たしたと思ったら、一瞬眩い光を放った後、濃い霧のような状態になった。
同時にシメナワが生き物のように小さく鼓動していた。
『これでもう大丈夫よ。
この封印を力ずくで破ろうと思ったら、それこそ新しい次元の亀裂を作る方が楽でしょうね』
確かに。
少なくとも今の僕ではどう頑張ってもびくともしそうに無かった。
よし、これでひとまずここに来た目的は全て達成できたかな。
って、あれ?何か忘れているような……。
鬼ということで、所々和風な感じになってます。
って、鬼の話が終わらなかったし。
次回こそ、後始末を行ってソージュには新たな課題が課せられます。




