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Eランクの僕とSランクの彼女  作者: たてみん
第3章:だから僕と彼女はここにいる
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31-1 鬼の集落へ

よろしくお願いします。


何とか間に合った。(最近こればっかり)

今の内にのんびり成分を補充しておかねば。

ジバンリン暦35年7月14日


夜明け前に起きた僕は、まだ寝ているりーんちゃんを起こさないようにそっと馬車を抜け出して朝の鍛錬を始める。

準備運動から始めて、柔軟、走り込み、ついでに薬草や食べられるものの採取を行う。

うーん、このつい採取してしまうのはもう癖になってるな。

そうして日の出頃に馬車に戻ると、りーんちゃんも起きていて、グランさんと一緒に朝の支度をしている。

っと、りーんちゃんが僕に気付いたみたいだ。


「あ、お兄ちゃん。おはようございます」

「うん、おはよう。朝の支度を手伝ってくれてたんだね。ありがとう」

「えへへっ」

「グランさんもおはようございます。何かお手伝い出来ることはありますか?」

「おう、ならアホヅラ……あー馬に水を飲ませてもらえるか?」

「はい、分かりました(アホヅラ?)」

「わたしも一緒に行く~」


りーんちゃんと手を繋いで、水の入った桶を持って馬の所に向かう。

そしてひょいっと、りーんちゃんが馬の顔を覗き込む。


「……アホヅラ?」

「ヒヒィーン(おぅ、呼んだか?って誰があほ面やねん!)」

「わっ、馬がしゃべった!?」

「ブルルッ(しゃべれるか。念話や念話)」

「念話が使えるのか」

「すごーい。アホヅラなのに」

「(だから誰があほ面って、もういいわ。それより水持ってきてくれたんだな)」

「うん、どうぞ」

「(あんがとよ。って、温いな)」


一口飲んで文句を言い出すアホヅラ。

念話が使えるだけあって知性が高いというか、わがままというか。

ただそれを聞いてりーんちゃんが桶に手を当てて魔法を使いだした。


「えっと、これでいい?」

「(ん?どれ……くっ。なんてこった。キンキンに冷えてやがるぜ!!やるな、お嬢)」

「りーんちゃん、魔法が使えるんだ。凄いね」

「うんっ」

「(おい、そっちの少年は何か美味しそうな草のにおいをさせてないか?)」

「美味しそう……さっき採って来た薬草かな。食べる?」

「あ、わたし食べさせてあげたい」

「うん、いいよ」

「わーい。はい、どうぞ」

「(あんがとよ。もしゃもしゃっ。くっ、うめぇ。ふるさとの味を思い出すぜ)」


そんな感じで和気藹々と馬の世話をする僕達を、グランさんとメイラさんが温かく(?)見守っていた。


「はぁっ、息子が他の女に取られてしまった気分だわ」

「おいおい、メイラはまだ子供を生んでもいないのに、それはちょっと気が早いんじゃないか?」

「そうね。まずは子作りからよね(ちらっ)」

「まぁまずは、もう少し世界を安定して平和な状態にさせないとな」

「はぁ、それもそうね」



朝食も食べ終えて移動を開始する。

最初は何事も無かったんだけど、次第に風が強くなり、空には黒い雲が広がり雷光が見え隠れしていた。

御者台に座っていた僕は隣のグランさんに尋ねる。


「これが次元の亀裂の影響ですか?」

「いや違うな。これは例の鬼達の仕業だろう」


それを証明するかのように、次第に見えてくる村、もしくは集落と思われる人工物と、その中央の広場で睨みあう色毎に分かれた鬼達。

色だけで言えば、赤と黄色と緑。

それぞれ10体、いや、10人ずつが恐らくは各部族の代表なのだろう。

遠目からでもかなりの実力があることが伺える。

1人1人がオーガキングと同等の実力を持っていそうだ。

更にはよく見ると黄色の鬼が電気を帯びていて、緑の鬼からはなぜか突風が吹いているようだ。

そして僕達を乗せた馬車はその広場に向かう途中、集落の入口で門番の赤い鬼達に止められていた。


『止まれ、小さき者たちよ』

『これより先は許可無き者の立ち入りは許さん』


なるほど。身長3メートルを超える彼らからしたら、僕達は小さき者になるんだね。

それと、独特の訛りはあるものの、会話は成立するみたいだ。


「あなた方の長に話がある。その許可というのはどうすれば手に入るのか」

『長が許可するか、もしくは力を示せ』


その言葉を受けて、メイラさんが馬車から降りて散歩するように軽い足取りで鬼の目の前に歩いていく。


「力、ね。これでいいかし、ら!」

『グオッ』


鬼の腹に手を当てたメイラさんが気合を入れると、その鬼は5メートル以上吹き飛ばされて広場の近くに落ちた。


『キサマッ。アヤシゲなワザを』

「いやいや、君達が言ったとおり、力を示しただけだ」

『ナニヲッ。フンッ』

「ほいっほいっほいっと、な!」


続いてグランさんがもう1人の鬼のこぶしを軽々と受け止めると、メイラさんと同様に腹に両手を当てたと思ったら吹き飛ばしてしまった。

更にカイさんがもう1人の鬼と睨みあったかと思ったら、ジャンプして頭突きを食らわせて相手を沈めていた。


「すまんな。俺は2人と違って爪が鋭くてな。同じことをしようとすると腹を貫きかねんのだ」


分かってはいるつもりだったけど、3人とも物凄く強い。

もしかしたら僕の出番はないかもしれないな。



「アホヅラ」の祖先は「バカウマ」です。

まっさきに出そうと思ってたのにタイミング合わなくて、ようやく名前が出せました。

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