30-2 グランさん達と合流
よろしくお願いします。
ぎりぎり間に合いました。
夜も更けて来たころ。
僕たちは街道から逸れたところで夜営をしているグランさん達の馬車に追いついた。
馬車に近づくと、僕らに気が付いた馬が一声嘶き、続いてグランさん達が馬車から出てきた。
「こんばんは、グランさん、メイラさん」
「やあ、そーくん。まさか本当に追いついてくるとは思っていなかったよ」
「そーちゃん、凄いわ。
って、あら?その女の子はどうしたの?」
「こっちに来る途中、森で迷子になっていたので、連れてきました。
名前はリーンです」
僕がそうりーんちゃんを紹介すると、りーんちゃんはおずおずと挨拶をした。
「こんばんは。りーんです」
「まぁ、可愛いわね!」
「わっ」
どうやらメイラさんの好みにマッチしていたらしく、ぎゅっと抱きしめた後、頭を撫でまわしている。
っと、りーんちゃんが目を回しそうだから、そろそろ止めないと。
「メイラさん。そのくらいで」
「あ、あら。ごめんなさいね。りーんちゃん」
「それと、こちらは獣人族のカイさんです。
町で困っているところを助けて頂いて、その後、同じ次元の亀裂に向かうって事だったのでご一緒して頂きました」
「そうだったのか。カイさん、お久しぶりです」
「ああ。グラン殿たちも変わりないようで何よりだ」
そう言って握手を交わすグランさんとカイさん。
「グランさんとカイさんはお知り合いなんですよね」
「そうだよ。何度か一緒にクエストをこなしたこともあるしね。
っと、立ち話もあれなので、馬車へどうぞ」
グランさんを先頭に馬車の中に入る。
この馬車は、アイテムボックスを改造して作っているらしくて、外観に比べて中はかなり広い。
小さめの家1件分くらいあるんじゃないかな。
全員が「居間」の席についたところで、グランさんが僕に笑顔を向けてくれた。
「改めて、そーくん。おめでとう。その様子だと無事に僕の掛けた負荷魔法は解除出来たみたいだな」
「いえ、それはまだ、掛かったままです」
「なんだって!でも今は普通に歩いていたじゃないか」
「それはまぁ、慣れたというか」
「いや、そんな緩いものじゃないはずなんだが」
「ごほんっ、その事で一つ良いだろうか」
咳払いを一つ、カイさんがグランさんを睨み付ける。
って、何かあっただろうか。
「少年に対して、負荷魔法を掛けた経緯は道中に聞いた。
だが、道端に放置していくなど、貴殿にしてはいささか配慮が不足していたのではないかね」
「あぁ、それについてはしっかりと防御結界を張って……あっ!張ってなかった!!
という事は、本当に動けないまま野ざらしに放置してしまっていたのか。
そーくん、すまない」
席を立って頭を下げるグランさん。
あの時は確か、グランさんが結界を掛ける前に僕が話しかけたんだっけ。
「頭を上げてください、グランさん。
この通り、無事に済みましたし、お陰でカイさんとも出会う事が出来たんですから」
「だが、一歩間違えば君を危険に晒していた訳だからね。何かで罪滅ぼしが出来たら良いのだが」
「それだったら、りーんちゃんのご両親を探してあげてほしいです」
「?」
突然話を振られて、りーんちゃんが「わたし?」って顔で僕を見上げて来るので、頭を撫でてあげる。
「りーんちゃんも少し前に突然この近くの村に飛ばされて来たらしいんです。
それが僕と同じ次元転移なのか、ただの空間転移なのかが分からなくて」
「ふむ。りーんちゃん、だったね。ちょっと診させてもらっても良いかい?」
「え、あの、はい」
僕の方を振り返ってきたので、頷いてあげる。
グランさんはりーんちゃんのおでこに手を当てて、何かの魔法かスキルを使っているようだった。
それも10秒くらいで終わった。
「りーんちゃん。お母さんの名前はカーラさんだね。カーラ・バルディス」
「あ、うん。そう呼ばれていたとおもいます」
「冬になると大雪が降って、大きな雪像なんかを作ってた」
頷くりーんちゃん。
それを見てグランさんはにっこりと笑った。
「そうか。あの時の小さな赤ん坊がこんなに大きくなっていたんだね」
「グランさん、ということは」
「ああ。この子はここから更に西に行った所にある山岳地帯の村の子だね。
そこには何年か前に行ったことがあるんだ。
その時、確かにこの子に似た綺麗な髪の女性が居たよ」
「それなら、この件が終わった後に送り届ける事も出来ますね!
良かったね、家族に会えるかもしれないよ」
隣にいるりーんちゃんに笑いかける。
よおし、そうと決まれば、さっさと次元の亀裂だか鬼だかの問題を解決してしまおう!
ただその時、少しだけりーんちゃんが寂しそうにしていたのを僕は見落としていた。
3章は学園から離れまくっているから、どこかで入れたいですね~




