29-2 毒物
よろしくお願いします。
投稿がギリギリで回していくと、話の方向性もコロコロ回りますね(汗
ちなみに今回は若干の残酷な描写があります。
最初の回復ポーションですぐに死んでしまう事は回避できたと思うけど、油断は出来ない。
カイさんが男達とにらみ合っている間に、手早く女の子の治療を進めていく。
まずは背中の矢を抜かないと。
「ちょっと寒くなるけど我慢してね」
「うっ……」
一声掛けてから、麻酔薬を女の子の背中に浴びせて、手早く矢を抜いていく。
良かった。矢の返しは付いてなかったみたいだ。
「おい、そこのガキ。やめろっ、何してやがる。」
「犬野郎もだ。突然出てきて邪魔してんじゃねえ」
「そいつは俺達の村を襲った化け物なんだよ」
「そうだ、そいつのせいで家畜が何頭も呪われて死んでいったんだ!」
口々に喚きたてる男達。
化け物?
見た目は普通の4歳くらいの女の子だ。
こうして治療していても僕の知っている人間と何も変わらない。
もちろん種族が100%一緒かって言うと違うだろうし、そういう意味で言うと僕だってカイさんだって違うだろう。
だから重要なのはお互いを分かり合えて共存出来るかどうか、それだけだ。
まだまともに話が出来たわけではないけど、こうして触れている限り、邪気は感じない。だから。
「カイさん。僕は今のところ、この子を見捨てる気はありません」
「分かっている。
そういうことだ、お前達。この少女は俺達が貰っていく。
念のために聞くが、お前達の目的はこの少女の排除で間違いないな。
殺した後に死体を弄ぶ気は無いだろう」
「ばっ」
馬鹿にするな、とでも言いたかったのか、先頭の男が真っ赤になってプルプル震えている。
横の男が「くくっ」って小さく笑っているのが気になるけど。
まぁいい。僕は僕でカイさんたちのやり取りを横目に、治療を進める。
よし、無事に出血は止まった。
幸い内臓に達するような酷い傷も無いみたいだ。
と、そこで僕の目に女の子の傷口の幾つかが紫色に変色しているのが見えた。
それにこの臭い、間違いでなければ毒、それも……
「ううっ、あああ!!」
女の子がうめき声を上げたかと思ったら、すぐに悲鳴に変わり、次の瞬間僕に噛み付いてきた。
咄嗟に腕を差し出して噛み付きを受け止める。
ブスッと犬歯が食い込み、血が流れ出す。
ほんの小さな女の子とは思えない程の力強さで、振り解くのは無理だろう。
「そら見ろ!!化け物が正体を現しやがった」
「あははっ、もうそいつは錯乱して目の前のものが餌にしか見えてないんじゃないの」
「うぐうぅ」
笑った男が言ったように、多分意識が混濁しているんだと思う。
虚ろな目のまま、それでも必死に僕に噛み付く女の子。
それもこれも。
「毒矢を使ったんだ。それも普通なら使う場面の無いはずの混乱系の毒を」
麻痺や催眠、致死性の毒なら狩りでも普通に使うことはある。
でも、混乱系の毒は本来、戦争などの敵集団に対してしか使われない。
それは狩りで使っても逆に暴れ出すだけだからだ。
だから普通の村人や狩人がこの毒を使うのはおかしい。
つまりはさっき言っていた家畜が呪われたとかいうのも、この毒のせいなんじゃないだろうか。
「あ、そっか。自分達の失態をこの子に擦り付けようって魂胆なんだね」
「な、何を根拠にそんな事をいってやがる」
「だって、あなた達の村ってここから離れているでしょ。
それはつまり、ここまで追い立てて弄んでいたっていうのと、毒のことを他の村人達に知られたくなかったんだ。
おおかた、さっき言ってた家畜が呪われたって言うのも、あなた達が持ってる毒をその家畜に試してみたんじゃないの?」
そう言ってあげると、明らかに動揺する男達。
同時にさっき笑った男がこそこそと身じろぎしてる。
それはきっと、僕達のことも毒で殺す気だってことだ。
「カイさん。容赦しなくても良いですよね?」
「うむ。敵は敵。それ以上ではない」
カイさんは既に臨戦態勢だ。
そして例の男が弓に矢を番えた瞬間、その男の額に矢が刺さる。
「がっ」
「なに!?」
僕の回りには彼らが射た矢が無数に落ちていたので、その1つ、この子の血で濡れたそれを投げたら予想以上の威力になってくれた。
続いて、驚いて後ろを振り向いた男には足元から拾ったこぶし大の石を投げつけると、側頭部にヒットして倒れた。
その間にカイさんが彼らの目の前まで駆け抜け、それぞれを1撃のもとに叩き伏せていた。
そしてついでといった感じで、男達が持っていた毒物を押収していく。
これで万が一、彼らの村から何か言われても反論出来るだろうな。
そんな訳で女の子の救出完了です。
本格的な治療は次回に。




