28-2 集団暴行
よろしくお願いします。
鬱展開のはずが悪役が雑魚過ぎて超ソフトに済んでしまった件。
グランさん達が立ち去ってから30分くらいが経過しただろうか。
僕はと言えば、何とか寝返りがうてる様になった所だ。
どうやらこの負荷魔法、速度に比例して負荷が高くなるみたいだ。
だから手足をゆっくりと動く分にはまだ何とかなる。
ただ、内臓にまでその影響はあるらしくて、心臓や肺、血管なんかにまで負荷が掛かっているのか、呼吸も困難だし全身の血の巡りが悪い気がする。
グランさんは死ぬことは無いって言ってたけど、実はこれ、かなりヤバいんじゃないだろうか。
それと、グランさんに会ったら一つ文句を言っておかないと。
ここって大通りだから、さっきから周りの人の視線が痛いです。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
「少年、こんな時間にこんな場所で行き倒れとは珍しい」
そう声を掛けて顔を覗き込んで来たのは、獣人のお兄さん。
逆光で顔は分からないけど、渋い感じの声がどこか懐かしい。
「これは、呪いの類いか?」
「あ、負荷魔法、です。訳あって知り合いの方に、掛けてもらったのですが、強すぎたので、何とか適応できるように、頑張ってるところです」
「ふむ、そうか。ならば勝手に解呪しては逆に迷惑になるな」
「お心遣い、ありがとうございます。
ふぅ。もう少ししたら、普通に動くくらいは出来る様になりますので」
「そうか。ではこれで失礼する。頑張れよ」
「はい」
そう言ってギルドに向かうその人を見送る。
赤茶色の髪の毛の綺麗な男性だな。
っと、そんなこと思ってないで、早く立てるようにならないとな。
「ん?おい、お前さっきギルドに居たガキだよな」
「?」
声の方を向けば、今度はどこかのチンピラ風の男達、というか、さっきの、えっと、馬鹿過ぎな人と同じ感じの男達が僕を見ていた。
「お、そうだそうだ」
「なんだ、もしかして一緒に居た奴らに捨てられたのか」
「ぎゃははっ、ばっかみてぇ」
「折角だからバッカスギの奴らの所に連れて行ってやろうぜ」
「あぁ。それは面白そうだな、ははっ」
言いながら僕を担ぎ上げて路地裏へと連れて行く。
僕はと言えば、何とか呼吸がまともに出来るようになったところで、まだ満足に動く事も出来ないでいた。
「ちょ、放せ」
「んん?な~んか変だと思ったら、お前、碌に動けないように魔法を掛けられてるな?」
「うわ、えげつないね~。さっきちらっと見た感じ、善良そうな奴らだったのに、人は見かけじゃ分からないって感じ?」
「ま、憂さ晴らしのサンドバックにはちょうどいいだろ」
そうして連れていかれたのは、スラム街なのか、全体的にぼろい建物が密集する区画の内の小屋だった。
「おーい、バッカスギ。少しは動けるようになったか?
お前らに土産を持ってきてやったぞ」
「あ?って、あの時のガキか」
「ほんとだ。へぇ、なに、動けないの?」
「そうらしい。で、銀貨3枚でどうよ」
「うわ、金取るのかよ」
「当たり前だろ」
「ちっ、しゃあねぇな。ほらよ」
「よし、じゃあ精々憂さ晴らしを頑張ってくれ」
「言われなくても」
ドサッと地面に放り棄てられた。
そんな僕を見下ろす全身包帯だらけのバッカスギの男達。
「おい、このクソガキ。お前の所為で冒険者資格をはく奪されちまったじゃねえかよ(がすっ!)」
「まったく、ガキはガキらしく、俺たちに媚びへつらってれば良いんだよ(げしっ!)」
「別の町に行ってやり直すのも面倒なんだぞ(ぐりぐりっ)」
罵倒しながら好き勝手、蹴ったり踏んだりしてくる。
ただ有難い事に、怪我のお陰か大して威力はないみたいだ。
その間に動けるようになれば。
「おい、黙ってないで何とか言ったらどうなんだよ(ごすっ)」
「ごめんなさいとか、もうしませんとか、泣いて詫び入れろっての(べしべし)」
「ちっ、このガキ、一丁前に耐久力だけは高そうだな」
「なら俺の新作魔法の雷の鞭でいたぶってみようか。それっ(ビシッ)」
「ぐっ」
「お、これは効くみたいだな」
くっ、そう言えば一人魔法使いが居たっけ。
そいつが鞭を振るう度に全身に電撃が流れる。
「ほれっ、もっと威勢よく跳ねやがれっ!!」
「ぐぅ、がはっ」
「ほらもっと。もっとだよ!!」
僕の反応が面白いのか、何度も鞭を振るっては、大笑いしている。
くそっ、電撃の所為で、意図せず体が跳ねる。
あ、でも、これのお陰で、だいぶ体が動かせるようになったかも。
「(これなら)」
どがしゃっ!!
そう思ったところで、小屋の入口の扉が外から蹴破られたのだった。
路上に捨てられてたら、ね。
ちなみにお気づきかとは思いますが、前話でグランさんは防御結界を張り忘れてます。