28-1 グランさんからの課題
よろしくお願いします。
メイラさん視点を入れようかとも思ったけど、ダレそうだっのでソージュ視点に戻ります。
Side ソージュ
冒険者ギルドの受付のお姉さんが馬鹿な冒険者を一掃して僕の方を振り返った所で、奥の部屋で打ち合わせに行っていたグランさん達が戻って来た。
その表情は一様に思わしくない所を見ると、状況はかなり悪いみたいだ。
ただ、そんな不安が伝わらないようにか、すぐに笑顔を作って話しかけてきてくれた。
「そー君、冒険者カードの方はどうだんたんだい?」
「あ、はい。やっぱり持っていたカードは使えなかったので、新たに作ってもらいました」
「そうか。じゃあ、登録上はEランクなんだね」
そう言うと考え込むしぐさをした後、僕の方をじっと見ている。
ん?僕に何か付いてるかな。少なくともさっきの冒険者たちの返り血とかは付いてないと思うけど。
「ふむ。私達はこれから魔物の討伐に向う予定だ。
今回のは規模も大きいし、恐らく君を守る余裕は無さそうなんだ。
改めて聞くけど、それでも一緒に付いてくるかい?」
「はい。ご迷惑でなければお願いします」
二つ返事で返した僕を見て、ちょっぴり口元を緩ませるふたり。
きっと聞く前からそう答えるだろうって思ってたんだね。
そう思ったところでメイラさんが僕の肩に手を置いた。
「よし、なら私達でみっちり鍛えてあげるわ。
次元の亀裂が発生した所まで、普通に馬車で移動して5日ほど掛かるらしいし。本気で走れば1日で行けない事もないところを3日掛けて行きながら、せめて普通の鬼と殴り合えるくらいにしてあげる」
「あ、あはは。お手柔らかにお願いします」
これって、きっと鬼と戦うよりもハードな特訓が待ってるんじゃないだろうか。
だって、その証拠に他の冒険者たちから憐みの視線が飛んでくるし。
受付のお姉さんもため息ついてカウンターに戻って行ってしまった。
「さあ、時間は有限よ。ちゃっちゃと準備して行きましょう」
「はい」
楽し気に歩くメイラさんの後について冒険者ギルドを出る。
すると冒険者ギルドを出てすぐの所で、今度はグランさんに肩を掴まれた。
「そうそう。そー君の鍛錬第1弾として、全身に負荷魔法を掛けておこうか」
「わ、わかりました」
「心配しなくても死ぬことは無い魔法だから、リラックスして受け止めてほしい」
「はい(そう言われてリラックスするのは難しいです)」
僕の心の声が聞こえるはずもなく、グランさんは1分近く魔力を集中させてから僕に魔法を掛けた。
ガクッ
「……!!……!?」
身体の自由が一切効かなくなって地面に倒れ込んだ。
ぐっ、なんだこれ。まるで全身が岩にでもなったかのようだ。
辛うじて息が出来なくはないけど、声一つ出せない。
「そー君。今君に掛けた魔法は、抵抗しなければ約3日程継続するようにしてある。
逆を言えば4日目には自動的に解除されるし、魔力で抵抗すればもっと早く解除できる。
だから君の取れる行動は2つだ。
魔力が切れるまで耐えきるか、魔力の扱い方を身に付けてその負荷魔法に抵抗するかだ。
あ、その間、他の人が悪戯しないように防御結界も張っておくから安心してほしい」
「騙すような形になって、ごめんね。でも、本当に今回の討伐は規模が大きすぎて危険なの。
討伐が無事に済んだら、迎えに来るから、それまでこの町で待っていて。ね」
そう申し訳なさそうに言うメイラさんと、防御結界の準備に再び魔力を集中させるグランさん。
「こん……えば、……って……ね」
「え?何か言ったかしら」
僕の絞り出した声に耳を近付けるメイラさん。
まあ、まだ僕は倒れたままだから、そんな気配がしただけだけど。
でも、それなら。
「この、負荷に。耐えられ、れば。連れて行って、貰えますよ、ね」
そう言いながら、何とか視線だけでも上げてふたりを見れば、驚きを隠せない顔が見えた。
「これは驚いた。まさか魔法で抵抗することなく、このクラスの負荷に耐える事が出来るとは。
……そうだね。なら、私達はこれから準備を済ませて1時間後に町の北口から出て、北西の次元の亀裂へと向かう予定だ。
だから、それまでに私達に追いついて見せてくれ」
グランさんのその言葉に何とか首を縦に動かして頷く。
よし、少しずつ動けるようになって来た。
グランさん達は宣言通り、僕のそばを離れて準備に向ったようだ。
1時間。1時間か。
それまでに何とかして動けるようになってみせるぞ。
まさかの放置プレイ。
一応虐めではありません。強制的に魔力に目覚めさせる為の過激な指導方法なんです。
スパルタ教育はメイラさんだけではないんですね。