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Eランクの僕とSランクの彼女  作者: たてみん
第3章:だから僕と彼女はここにいる
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27-B 不思議な少年

よろしくお願いします。


今回はグラン視点です。

ジバンリン暦35年7月10日


Side グラン


この1ヶ月間、ベルカの森の奥の更に先の沼地に発生した次元の亀裂の対処を行い、近隣の村々へ救援物資を運んで回っていた。

それもようやく一息つき、ベルカの町へと帰れそうだ。

そう思った矢先、新たな次元の歪みの気配を感じた。


「……ん?これは」

「どうしたの?グラン」


私のつぶやきに反応して聞いてきたのはAランク冒険者で女剣士のメイラ。

彼女とは仕事がら数年前から何度か一緒に活動することがあったけど、3ヶ月前から正式にパーティーを組んで一緒に活動している。

最初出会った時は、乱暴な印象を受けたけど、実際には勇気があって、繊細に人の事を考えることも出来る人だと分かった。

それが分かってからは私達の距離が近くなるのも早かったように思う。

まぁ私の場合、普段は問題ないけど私生活の面で抜けている部分があるので、そこを何度もフォローしてもらっている。

今ではなくてはならない存在だ。

っと、それはさておき。


「近くで次元の歪みか亀裂が発生したと思うんだけど、どうもいつものと違うみたいだ。

規模は小さそうだから、ちょっと様子を見てくるよ」

「ひとりで大丈夫?」

「ああ。特に強い気配も無いしね。

メイラはそれよりも西側の魔物の対応をお願いしても良いかい?」

「ええ、分かったわ」


西には鬼と思われる気配が30前後。まぁメイラなら余裕だろう。

そうして乗っていた馬車を下りてメイラと分かれて森の中へと入れば、そこは次元変動時特有の濃い霧に包まれていた。

この霧が発生しているときは高確率で異界の者が流れ着いている事が多いが、さて。

幸い亀裂自体の気配は既に消えている。

あとは……これか。

恐らくはヒトガタ、魔力反応が皆無であることから戦闘力のない一般人の可能性が高い。

それにしても位置が悪い。

前後左右を鬼の気配がある。これは既に奴らに狙われていると見て間違いないな。

これでは間に合わないか、いや、上手い具合に逃げているな。

よし、これなら。


「そこの人。言葉は通じるかな?通じるならこっちに来てくれ。悪いようにはしない」

「はい、ありがとうございます!」


ふむ、鬼の包囲の一角を崩してから極力警戒させないように声を掛けてみたけど、無事にこちらを味方と判断してくれたようだ。

霧の向こうから現れたのは、私より5歳くらい若い少年だった。

見た感じ悪人の類いではなさそうだ。これなら救助しても問題ないだろう。

そして、一緒に馬車の所に戻る途中、問題が発覚した。

まさか記憶喪失とは。

念の為、人物鑑定スキルで見てみても……ダメだな。

どういう理屈かは分からないけど鑑定結果が上手く出ない。

名前も一部しか分からないし、種族も不明。さらにMP-1000ってあり得ないだろう。


MPつまり体内魔力保有量とか短く魔力とも言うけど、これは最大値の1/10になると疲労感やめまい、頭痛が起きたりする。

更に減ると意識の混濁や吐き気などが起きてまともに動けなくなる。

攻撃魔法の1つに相手の魔力を奪うというのがあるくらいだ。

だからゼロとかマイナスが本当にあるなら、その人は死んでいても不思議ではないはず。

ならこの少年はいったい……


と、そんな疑問はありつつも、悪い子ではないことは話しているなかで分かったし、元の次元に帰れるように面倒は見てあげよう。

何よりメイラが気に入ったみたいだしね。

それに、何だろう。

今日一日過ごしてみて、不思議な安心感がある。

まるで長年一緒に過ごした家族の様だ。

あぁ、そう言えばメイラを見て「おかあさん」って言いそうになったり、私を見て「おとうさん」と言いそうになっていた所を見ると、種族や血筋が似ているのかもしれない。

それにしてもメイラが母親で私が父親ということは僕らは……おっと、これ以上はまだ考えない方が良さそうだ。


翌早朝、まだ太陽が顔を出す前の時間に起きてそっと宿を抜け出す。

目的は『精霊の雫』とも呼ばれる朝露を採集して魔力回復薬を作ることだ。

もし仮に彼のMPが本当にマイナスになっているのなら、これで回復するはずだ。

薬を飲んだ直後の彼のMPは、-120。順調に回復している所を見ると、この値は間違いないのか……

この調子なら1時間とせずにプラスに転じるはずだから、その時どうなるか注意して見ておかないといけないだろう。



グランは20歳ぐらいで、ソージュよりちょっと大人です。

言葉遣いや空気感がまだちょっと不安定ですね。

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