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Eランクの僕とSランクの彼女  作者: たてみん
第3章:だから僕と彼女はここにいる
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25-2 ダンジョン50階層より

よろしくお願いします。


ちょっと話が急加速します。

ジバンリン歴52年7月10日


順調に学園ダンジョンの攻略を進めている僕たちは、無事に49階層の攻略が終わり、今日から50階層へと挑む。

その事をフレイさんに伝えに行ったところ、


「管理室には誰でも入れるという訳ではないわ。

でも、あの方の血を引いていて、その精霊と契約しているソージュさんならその条件を満たしているはずだから。

管理室に入ったら、この魔道具を介して制御盤に魔力を注入してください。

そうすればダンジョンは安定するはずです」


そう言ってスイカサイズの魔道具を渡してくれた。

受け取り慎重にアイテム袋にしまう。


「ありがとうございます、フレイさん」

「さて、それなら私たちはそーくんを管理室まで送り届ければ良いってことだね。帰りは帰還石で帰ってこればいいんだから」

「そうだな。50階層のボスが何かは分からないが、容易に倒せない場合は、我々は囮にまわるとしよう」

「はい。とはいえ、無理は禁物で参りましょう」


そんな話をしながら50階層へと来てみたが、さて。

僕らの目の前には森が広がっている。


リーン♪リーン♪

「……ジル?」


契約精霊のジルがそわそわしている。

この森になにか思うところがあるみたいだ。


「この森は……」

「リーンさん?」


リーンさんも森を見て何か心当たりがあるのかな。


「この森は、世界樹の森に雰囲気が似ているわ」

「あっ」


確かに言われてみればそうだ。

それなら世界樹の枝から生まれたジルがそわそわしている理由にもなる。

そして世界樹の森にいる魔物といえば以前お父さんから聞いているし、講義でも教わったことがある。

フェンリルとジャイアントスパイダー、通称『森の掃除人』だ。


ワオォォーーン!!


それを肯定するように狼の遠吠えが聞こえてきた。同時に敵意も伝わってくる。

どうやら、歓迎はしてくれそうにないな。

木々の奥から無数の視線を感じる。既に彼らのテリトリーに入っているという事だろう。

そして世界樹の森は攻略難易度Sだ。ここがダンジョンで創られた空間だとしても、危険度はこれまでの比ではないと考えられる。


「これは、まずいですね」

「そうね。なら何とかして予定通りにそーくんを制御室に送り届けましょう」

「そうだな。ならフェンリルの相手は俺とミラで受け持つ。

獣人族として、どれだけ神獣と呼ばれるフェンリルに通用するか試してみたい」

「なら、私とリーン先輩で蜘蛛の相手ですわね。まったく、虫は好きではないのですけど」

「そーくんは森の中央へ。ここが世界樹の森なら、管理室があるとしたら中央にあるであろう世界樹の麓だわ」

「はい。っと、散開!」


僕が叫ぶと、全員が左右に飛ぶ。

振り返れば僕らがさっきまでいたところには蜘蛛が吐いた糸が数本突き刺さっていた。

糸なのに刺さるとか、普通の蜘蛛の威力ではない。

これは粘着性を心配する前に、くし刺しにされることも心配しないといけないようだ。

そう考えている間も次々と糸が飛んでくるし、魔物は木々を利用して上下左右から襲い掛かってきていた。

くそっ、一瞬で分断された。

巧みにみんなと遠ざけるように攻撃が繰り返されてる。

まるで軍隊のように連携の取れた動き。完全に向こうのテリトリーだ。

さらに視界の端に白い影がチラリと見えた。あっちは確かケイたちが行ったはず。


『みんな、無理はしないように。ダメそうならすぐに帰還石で戻って!』


そう声をかけつつ、僕は一か八か森の奥を目指す。

幸いフェンリルはケイたちの方に向かった。今なら多少隙があるかもしれない。


『ジル、案内をお願い』

リン♪リン♪


力強い鈴の音を受けて木々の合間を走る。

一応気配を消してはいるけれど、森の中に居ること自体、彼らに僕の位置が知られるには十分なのだろう。

一歩踏み込む度に無数の糸が飛んでくる。

僕はそれらを時にしゃがみ、時に木を盾にして防ぎ、大木の枝を飛び移りながら避ける。

後ろからは雷光が閃き、フェンリルの咆哮が聞こえることから、みんなも頑張ってくれているようだ。

みんななら簡単にやられるとは思わないけど、かなり厳しい戦いになるだろう。

急がないと。


そして。攻撃を避けながらだからだいぶ遠回りしつつ、僕は中央に聳え立つ大木の根元へと辿り着いた。

その大木はあまりの大きさの為に近くで見ると壁にしか見えない。

幸い、蜘蛛からの攻撃は止まっていた。

そのことからもこのあたりに管理室があると思うんだけど……。


「さて、管理室ってどこから入れば良いんだろう」


そんな僕の呟きを聞いたのか、目の前の空間に光が集まり、一人の少女の姿になった。

緑色の髪のその少女はまるで、


「……ジル?」

「……」

リーン♪


鈴の音は僕の中から聞こえる。

つまり目の前のこの子はジルとは別人。

そして似ているという事は、きっとこの木の精霊なのではないだろうか。

管理室の番人か?なら言葉が通じるかもしれない。

そう思いつつ一歩近づいた僕の目と彼女の目が合う。

その全く感情を宿していない目が僕を射抜く。


『……属性……適合。……魔力……不足、不足。入室不許可。排除スル』


彼女が僕に手を差し向けると、僕の周りに複雑な魔法陣が生み出され、更にはかなりの魔力が集まってくる。

くっ、身動きが取れない。


(だめ!!)


一瞬ジルの姿が視界に映ったかと思った瞬間、視界が光に包まれる。

これって、まさか転移魔法!?

そう思ったところで僕の意識は途切れた。



この25節までが3章のイントロダクションになります。

26節からガラッと色々変わりますのでよろしく。と予防線を張ってみる。

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