3-A ケイ視点:親友にしてライバル
よろしくお願いします。
ここから3,4話、他者視点になります。
時間も少し戻って入試1日目へ。
ジバンリン暦52年3月10日
Side ケイ
俺の名はケイ。
北東の山岳地帯出身の獣人族だ。
村の祈祷師の啓示により、今年からマリアッジ学園に通うことになった。
幼馴染のミラと一緒なのは心強い。
ミラは小さい時から俺の足りない所を補ってくれる、その、大切なパートナーだ。
そして今日はその学園の入試初日。
俺達は見知らぬ少年達に道を塞がれた。
「おいお前。神聖なるマリアッジ学園はお前達みたいな獣風情が来るところではない!」
「まったく常識ってもんが無いのか」
常識か。父曰く、常識とはその地の多数派意見だそうだが。
「ふむ。この学園は種族の分け隔てなく学べる場だったと認識しているが」
「そうでございますね。むしろ差別を無くす事こそが学園の理念であったかと存じます」
であれば、彼らこそが常識外れな物言いな筈だ。
まあ、それもこの周りで見ているだけの奴ら次第といったところか。
「その薄汚い毛皮を剥がされたく無かったら、今すぐ土下座して謝罪しろ!!」
「そうすればペットとして可愛がってやるよ」
そう言って下卑た笑いを浮かべる少年達。
ちっ、ミラをそんな目で見るなど許せんな。
俺はアイテム袋から愛用の武器を取り出す寸前で、制止の声を上げながら人垣を抜けて出てくる人が2人いた。
「ちょっとま「お待ちなさい!!」……え?」
どちらも怒気を少年達に向けているから、俺達の味方をしてくれるのだろう。
出てきた2人のうち、俺と同い年と思われる少年の方が出てくるのは早かったが、
もう一人の腕章を付けた少女の方が声に勢いがあった。
結果的にその場は少女の叱責により事なきを得た。
だが俺としてはもう一人の少年の方が気になった。
そのまま立ち去ろうとする少年を呼び止め、礼を伝える。
ああ、間違いない。彼はいいやつだ。
野生の勘というのか、俺は彼に会う為に学園に来たと、そう確信した。
後でミラにそれを伝えると「一目惚れでございますね」と目を細められた。
いや、俺の一番はミラだからな!!
ごほんっ。
結果として、その確信は間違って居なかったんだと思う。
試験1日目後半。
最初に運動場に着いたのは俺達。続いて彼ソージュだった。
常在戦場の心構えが出来ている証拠だ。
それから同時に試験を始めるも、彼は明らかにこちらを気にしてペースを落としている様子。
「ソージュ。俺達に気を遣わずに先に行くといい。俺達は俺達のペースで行く」
「うん。分かった」
その言葉をきっかけに、一気に加速していく。
くっ。俺達も足には自信があったのに、倍以上の速度で走り抜けていくとか化け物か。
これは俺達もうかうかしていられないな。
だが、帰り際。
彼は明らかに好成績だったにも拘らず、彼の後姿は元気が無さそうだった。
何か心配事があるのかもしれない。
明日の朝になっても同じ様なら、おせっかいかも知れないが少し聞いてみるか。
俺でも力になれることがあるかもしれないしな。
主人公視点だけでは表現しきれていない諸々が書けて、ちょっと楽しんでおります。
読者の皆さんにも楽しめて頂けたら幸いです。
なお、お分かりの通り、ケイとミラは相思相愛ラブラブです。
ミラが奥ゆかしいイメージなので、人前でいちゃいちゃはしません。あまり。
#########
次回:ミラ視点:心優しき友人




