25-1 ダンジョン50階層に向けて
よろしくお願いします。
3章は学園ものからどんどん遠ざかる章です。
むしろ4章になるまでもう出てこないかも。
ジバンリン暦52年7月8日
僕たちは学園ダンジョンの攻略に乗り出していた。
学園側にはギルドのクエストで当分の間、講義を休む事を伝えている。
ダンジョン46階層。
ダンジョンの制御石が無くなった事で何かが変わったかと思ったけど、相変わらずの虫階層だった。
「今回は真っすぐ次階層を目指しましょう」
「ええ」
「それは良いがソージュ。これまでは防戦一方だったんだろ。大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫。ここの魔物は数が多いってだけだから。
聞く限りオーガキングの方が強かったみたいだし。
ケイのガードは抜けないし、みんなの戦力があれば十分殲滅出来るよ」
「なるほど、なら前衛は任されよう」
そう言って盾を構えて先頭に立つケイ。
その脇を僕とミラさんが固め、後ろからリーンさんとエルさんが魔法でサポートする。
「いざ行こうか」
そう言って進むケイの視線の先から蟷螂型の魔物が数体近づいてくる。
そしてその鎌が振るわれるも、余裕でケイの盾に防がれ、弾かれ、逆に殴られて後ろに吹き飛んでいく。
ケイを包囲するように左右に広がろうとした魔物には僕とミラさんが相手をする。
ミラさんはいつもの弾弓から薙刀に持ち替えての参戦だ。
「この学園に来てから剣に限定されておりましたから使う機会がありませんでしたが、私の本来の得意武器は弾弓とこの薙刀です」
そう言いながら風の魔法を纏った薙刀が蟷螂の攻撃範囲の外からバッサバッサと薙ぎ払っていく。
「なんというか、普段のお淑やかな雰囲気からは想像できない豪快な戦い方だね」
「ああ。ミラは静と動の切り替えが上手いからな。あれでいて激しい時は凄いぞ」
そう自慢げにケイが言うけど、今どこか戦い以外の話が混ざらなかった?
っと、こっちにも新たに2体来たか。
僕も負けずに木の杖で突きを放つ。
スプッ!
急所を一突き。
それだけで魔物が崩れ落ちていく。
僕だって伊達に何日もこいつらの攻撃を躱していた訳じゃない。
攻撃をするときの癖だってほぼ把握できている。
だから、いくら同時に何度も斬撃を放てるとしても、その前に倒してしまえば脅威でもなんでもない。
さらに僕らの後ろでは、飛んで来た蜂たちが雷撃と氷撃で次々と撃ち落とされている。
「46階層なのに手ごたえがありませんわ」
「いや、エルちゃん。普通ならこの数と速度って結構脅威だと思うよ。
魔法以外で蜂を迎撃するのは難しいだろうし、そーくんたちが前で無双してくれて無かったら狙う余裕が減っちゃうしね。
あと、エルちゃんはまだ魔力の消費が多めだから、節約を心がけてみて」
「分かりましたわ」
そうして進んだ先。
階段手前に異変があった。ボス領域だ。
いつもなら5階層毎にしかないそれが、目の前に明確な境界線を引いて存在していた。
ただし、壁や扉はないので外から丸見えだ。
そしてボスは……。
「あれは、蜂の巣?」
「そうだな。ただ、サイズがおかしいが」
ちょっとした豪邸サイズである。
中に居る蜂の数や大きさも推して知るべしってところかな。
「どうする?」
「まともに相手はしたくないね。
リーンさん、お願い出来ますか?」
「うん。これって魔力は通れるのかな……あ、行けるみたい。なら時間さえかければ余裕ね」
ボス領域の手前に陣取り、リーンさんが魔力を高める。
その間、僕らは近づいてくる魔物の処理だ。
これまでの階層と違ってボス部屋の前だからと言って安全地帯ではないらしい。
そうして、リーンさんの準備が整い、静かに魔法が発動する。
「『アイスコフュン』」
すぅっと蜂の巣全体が白い靄で包まれたかと思うと、靄は氷へと変化して巣を覆い尽くした。
それを見届けてからボス領域に入れば、蜂の巣は沈黙を保ったままだ。
よし、上手く行ったみたいだ。なら後は、
「リーンさん、この氷って電気は通りますか?」
「ええ、大丈夫。そう言うだろうと思って調整しておいたから」
そう言って笑顔を向けてくれるリーンさん。
流石というか、僕のやりたい事を分かってくれてるというか。
その笑顔にうなづきを返して、エルさんを見る。
「エルさん。雷撃の魔法をこの巣の中で暴れさせて貰って良いですか?」
「あぁ、なるほど。分かりましたわ。
……『サンダーケイジ』」
エルさんの放った雷撃が氷に覆われた巣の中で暴れまわる。
こうして見てるとちょっとした花火みたいで綺麗だ。
あ、花火って思ったのがまずかったかな。30秒と掛からずに巣が崩壊して、魔法も消えてしまった。
「日の目を見ることなく消えていったボスには可哀想なことをしましたわね」
「まあ僕らとしては楽が出来て良かったと思いましょう」
そうして僕らは一切ボスと戦うことなく次の階層へと進んで行った。
そんな訳でサクサクとダンジョンは攻略されていきます。




