23-A エラーザ・ミスリニア
よろしくお願いします。
今回はエラーザ学生会長王子視点。
これにて2章終了となり、3章へと移ります。
Side エラーザ
僕は今まで何をしてきたのだろうか。
マリアッジ学園に主席で入学して2年。
成績は常にトップクラスでSランク。
学園ダンジョンの踏破速度も過去10年さかのぼっても僕以上の者はいなかった。
学園の教師にだって遅れを取ることはない。
学園を卒業した後には、王国に戻り順風満帆であろうとさえ思っていた。
しかしだ。
ここ最近の出来事で理解してしまった。
現実はそうではなかったことに。
『井の中の蛙』『小山の大将』……僕はまさに学園という名の小さな鳥籠の中で有頂天になっていただけだったのだ。
先日の魔物の襲撃騒動の折。
学園生達は実に無様であった。
敵を前にしてうろたえ、恐怖し、泣き叫ぶ。
無辜の民であればそれも仕方ないだろう。
だが僕達は世界を背負って立つエリートではなかったのか。
その僕達が荒くれ者とも言うべき冒険者達の影に隠れて怯えている光景は、僕の目を醒まさせるのに十分だった。
そして更に、学園生数名が襲撃の裏で暗躍していた黒幕に対して攻撃を仕掛け、その内の1人を倒した。
倒したその男は、邪法の研究の為に、人体実験を含め数々のおぞましい事をしてAランク国際手配されていた魔道士だった。
その学園生数名の中に、リーン君や妹のエルが居たのはいい。
流石マリアッジ学園生、流石僕の妹だと誇りに思っただけだっただろう。
だが、そのメンバーに、学園最低のEランクの生徒が混じっていたのだ。
しかも聞けば、敵の魔道士を倒したのはそのEランクだと言うではないか。
これはいったいどういう事なのか。
ソージュ・ライオネル。
リーン君が最高のパートナーだと公言して憚らない少年。
彼に関する噂は大きく分けると2つ。
1つは侮蔑を含んだもの。一言で言えば「Eランクのくせに」となる。
もう1つは、彼に対して感謝の念を感じているもの。これは彼が所属している第2男子寮ならびに一部の教師からだ。
この2つを比べたときに、彼の本質を捉えているのは明らかに後者だと分かる。
とまあ、ここまで長々と考えたが結論は「今のランク制度ならびに教育方針はどうなのか」というところに行き着く。
「それで、僕にいったい何をしろと仰るのですか?」
「なに、学生会長であり人望もある君なら難しい話ではない。
君もこの学園の制度には色々と思うところがあるだろう。
それを是正する為に立ち上がって欲しいというだけの話さ」
僕にそう言ってきたのは、この学園の理事の1人。
これまで特に面識がある訳でもない。
その彼がなぜ今になって僕の目の前に現れたのか。
「これは君にとっても多くのメリットがあるのだよ。
いいかい。これまでの長い歴史の中で学生会長が学園の運営そのものを改革するために立ち上がったものはいない。
君は間違いなく学園の歴史に名を刻まれることになるだろう。
そうすれば、君の妹君であるエリュースくんは君を見直し、同じクラスのリーンくんからの君に対する評価はうなぎ上りだろう。上手くいけばそのまま、ということもありえるだろうね。
……それに、聞くところによると、最近彼女らはソージュとかいう生徒に絡まれているそうじゃないか。
このまま何もしないで居ると、彼にふたりを奪われてしまうかもしれないよ。
彼女らを守るのは君の責務ではないかね」
妹たちの事が話にあがった瞬間、ピクッと反応した僕を見て、小さくほくそ笑んだのを見逃してはいない。
僕は内心ため息をつきながら彼を見直した。
……やはり小物だな。
王宮に出入りしていた不正をひた隠しにする役人と同じ臭いがプンプンする。
それに僕のメリットは語っても、自分のことには一切触れないのも怪しい。
どうせ僕の行動に合わせて問題を起こし、失敗した場合はその責任を僕に擦り付けるつもりなのだろう。
「なるほど、お話は分かりました。
流石に多くの生徒が休学している現状で動くのは難しいですが、前向きに検討させて頂きます」
「ええ、期待しておりますよ」
そう言ってその男は去っていった。
まったく、学生の改革だけでも大変だというのに、運営側まで膿んでいるとなると、厄介なものだな。
父上はいつもこのようなものと戦っておられるのだな。
であれば僕もこの学園を使って予行演習をさせてもらおうか。
組織が大きくなるとどうしても、膿が出来ます。
また古い因習なども増え続けます。
それらを排除するのを英断と評価するか、革命と評価するか。
そして!
3章の内容がまだ空っぽです(おいっ
方向性を決めるので少しお時間を下さい。
m(_ _)m