23-1 戦い終わって
よろしくお願いします。
後始末、そして。
ジバンリン歴52年7月3日
魔物の襲撃から2日が経過した。
学園都市のみんなのおかげで街に被害は一切なく、骨折などの重傷を負った人は数百人を超すが、死者は奇跡的にゼロということだった。
また、それだけの重傷者が出たのであれば、回復ポーションが不足すると思われたが。
「いやぁ、さすが学園だな。
まさかこんなに沢山高級治療薬の材料になる薬草を栽培しているとは」
「あ、はぁ。そうですな。
こんなこともあろうかと、一部の生徒に空いた土地は自由に開放していたのが功を奏しましたね」
歯切れの悪いのは学園教師だ。
それというのも、学園側は確かに土地の使用許可は出したが、そこに何を植えているかまでは把握出来ておらず、冒険者ギルドの方から逆に敷地内に薬草畑があるらしいから採取させてくれと言われる始末。
何を隠そう、そこは入学当初からソージュがこつこつと切り拓いてきた場所だ。
当然、冒険者ギルドに情報を流したのもソージュ自身だった。
その薬草によって出来た薬で真っ先に治療されるのが、重傷を負った学園生となれば、学園側に拒む理由はない訳で。
街の薬師達によってその7割が採取されていった。
なお、すべて取らなかったのは、ある程度残すことで再び増えることを期待しているからだ。
また、街では未曾有の焼肉パーティーが開催されていた。
ダンジョン内と違って、一般の魔物は死体が消えたりはしない。
よって戦いが終わった後、数千体のオーガとオークの死体が街の外に残っている訳だ。
それらはこの2日間で街の食肉業者ならびに動ける兵と冒険者とで解体されていった。
取れた魔石と素材は応援に来てくれた部隊への報酬に渡しつつ、残った分は皆で分配することに決まった。
だが、元々食べられる部位の多い魔物のオークとオーガであったが故に、冷凍保存するにしても限界があり、勿体ないからとせっせと街中で消費している。
結果として3日3晩の焼肉パーティーと相成ったわけである。
Side リーン
「はぁ。お肉は嫌いじゃないからいいけど、さすがに3日ずっとは飽きるね」
「まぁまぁ、リーンさん。僕らは功労者だってことで、上位種の肉を優先的に回してもらえているんですから、それは贅沢な悩みってものですよ」
「確かにな」
「流石に厚さ10センチの特大ステーキが出てきた時は驚かされましたが」
「それに、ソージュが持っていた香草のお陰で臭みもなく、しっかりと味付けまでされているのですから、王都でもなかなかこの味には巡り合えませんわ」
「うーん、分かってはいるんだけどねー」
ぶすっとフォークをステーキに刺しながらため息をつく。
2日経ったお陰でそーくんも無事に全快したので、いつもの喫茶店でみんなで祝勝会を開いていた。
「まぁ、お肉に関してはまだね、間にサラダとか果物とか挟めば良いんだけどね」
「他になにか気になることがあるんですか?」
「うん、一番気がかりなのは、昨日からの学園生たちの視線よ」
「へ?」
「「ああ」」
私の発言にみんなが納得顔をする。
やっぱり分かっていないのはそーくんだけね。
「以前にも増して、そーくんがEランクだって言って残念な視線を送る人が増えてるの、気づいてない?」
「まぁ当事者は気付きにくいものかもしれんな」
「はい。それに、原因はリーン様にもあったのですが、そちらも気付いていらっしゃらないようですね」
「え?私もなにかやらかしてたの??」
うそっ。全然心当たりがないんだけど。
そんな私を見て、今度はミラちゃん達がため息をつく。
「リーン様。皆様がソージュ様をその様な目で見ているのは、リーン様が傷だらけのソージュ様をおんぶして街に戻ってきたからです」
「学園生たちの噂のうち、悪い方は『Sランクのリーン先輩についていった挙句、役に立たずに足を引っ張ってきたんじゃないか』というものだな」
「良い噂は『戦いで役に立たない分、身を挺してリーン先輩を庇ったからおんぶして貰えてるんじゃないか』というものですわ」
あーなるほど。
客観的に見るとそう解釈されてしまうんだ。
「もう1ミリも掠ってすらいないよね、それって」
「まぁリーンさん。それで僕に何か害があるわけでもないんですから、いいんじゃないですか」
「はぁ。そーくんはいつもそれなんだから」
私としてはもっとそーくんの事をみんなに認めて貰いたいんだけど。
あ、でも今のEランクのままの方がほかの人が寄ってこなくて良いのかも。
でも分かる人には分かるしね。エルちゃんとか。
こういう戦後処理ってどうしてるんでしょうね。
そして、あと1,2話で2章も終わりになります。きっと。