22-A 学園都市防衛戦
よろしくお願いします。
何とか間に合った。
今回は学園都市の情景をサクッと行きます。
ジバンリン歴52年7月1日
Side 学園都市警備隊
午前4時。
夜明け前の闇を篝火の灯りが街道を照らす。
その闇が振動を伴ってせり上がってくる。
「来たぞ!
弓隊、射撃準備。
引き寄せる必要はない。手前に居るものから射ちまくれ!」
ヒュンヒュンヒュンヒュンッ
「ガアッ」
数百の矢が次々と放たれ、先頭のオーガ達を襲う。
それに怒り突撃を開始するオーガも居れば、それだけで倒れるものも居た。
「魔導部隊は突出してきた魔物を狙え!
弓は引き続き奥に射ち続けろ!
……しかし妙だな。オーガにしては簡単に倒れすぎだ。
偵察の情報通り、ここに辿り着く前に何者かに襲われてダメージを受けていたとみるべきか」
考えている間に、ボロボロになりながらもハイオーガ、ハイオークを中心に防衛線に辿り着く。
「槍隊は5人1組で上位種に当たれ!
負傷したものは無理せずすぐに交代せよ。
戦いは始まったばかりだ。慌てずに行け」
そうして始まった防衛戦は夜が明ける頃には先行してきていた魔物約700体を倒すに至っていた。
「弓隊より報告!
開戦時に比べ、倒れる魔物が減ったとのことです。
スキルの使用許可が求められています」
「良いだろう。その間に魔導部隊は半数を休ませ終盤に備えさせよ」
「了解しました!」
通常の弓で倒せなくなった。
それはつまり、ソージュ達の策で同士討ちして傷付いていた分の終了を意味していた。
「……さて、ボーナスタイムは終わりか。
だがこの時間のお陰で隊員達の良い実戦経験になったな。
総員、ここからが本番だ!
気合いを引き締めて行け」
「「おお!!」」
だが、気合いを入れ直した隊長の視線の先で戦場は大きく動き始めていた。
「偵察部隊より報告!
敵が分かれました。その数、東西にそれぞれ400!」
「何だと!くそっ、引き寄せ切れなかったか。
仕方ない、温存していた部隊を援護に向かわせろ」
防衛隊の西には冒険者ギルドを中心とした遊撃部隊が展開している。
作戦では正面で敵を引き寄せておき、横から冒険者達による突撃と撹乱を予定していた。それが潰された形である。
まあ、実戦経験も豊富で一騎当千の彼らであれば、倍近いオーガの相手も可能であろう。
だが問題は東側だ。本来なら応援に来てくれた部隊と学園生の混成部隊が、崩れた所にトドメを刺す予定だった。
それが無傷のままで向かったとなると、学生達ではオーガはともかく、ハイオーガは荷が勝ちすぎる。
応援部隊だって、学生たちを守る余裕はないだろう。
このままでは最悪、多数の死者が出かねない。
(彼らが居てくれればな)
隊長の脳裏に、良く街を笑顔で駆け回っている少年たちが浮かぶ。
だが聞けば彼らは今最も危険な場所、オーガキングの元に向かったらしい。
その彼らが戻ってきたときに、同級生達の無惨な姿に対面させる訳にはいかない。
「いいか!
誰一人死ぬことは許さん!
学生達も一人も死なせるな!大人の意地を見せろ!
必ず生きてこの地を守り抜け!!」
「「はっ!!」」
そうして戦いは段々と激しさを増していった。
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Side 東側学園生
AランクBランクの学園生と援軍300人の所は、大混乱に陥っていた。
「なんだこれ、なんなんだよこれ!」
「くそっ、ダンジョンの魔物と全然違うじゃねえか」
「落ち着け、ガキども。
数はこっちの方が上だ。
6人1組で当たれば勝てるぞ!」
「んなこと言ったって」
オーク、オーガと言えば、学園ダンジョンで言えば階層ボスとして数体いればいい方なのだ。
それが数百体が怒涛の勢いで来るのだ。
恐怖に襲われない方が無理と言うものかもしれない。
そんな中。
「どりゃあ!!」
「ふんぬぁ!!」
ハイオーガに対して二人がかりとは言え力比べをする男たちがいた。
「はっはぁ。所詮ただの筋肉。俺達の鍛え抜かれた筋肉が負けるはずなし。そうだろう、ニックキン」
「おうとも!俺達の筋肉の魅せ所だぜ、ノーキン。どっせい!!」
ブオンッ、ズシン。
「うわぁ」
「投げ飛ばしやがった」
「いいぞ、筋肉ダルマ!」
そのあんまりな光景に呆れつつも、混乱していたのが落ち着きを取り戻していく。
そして更に奥の魔物が魔法で吹き飛ばされる。
「『ライトニングダンス』!
ふっ、諸君。我々は襲われる側ではない。狩る側だ!
日頃のチーム対抗戦を思い出せ!」
「お、金髪王子、やるじゃねえか。
武術大会で放置された逆恨みかい?」
「誰がだ。それよりもまだまだ来るぞ。
気を引き締めて行け!」
「「おうっ!」」
そうした何人かの奮闘により何とか戦線を回復し始める。
そしてかなりの被害を出しつつも何とか死者ゼロのまま、昼頃にはオーガ達の撃退に成功するのだった。
所詮は指揮官の居ない烏合の衆です。
そしてお久しぶりな筋肉兄弟。
まさか再登場するとは。




