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Eランクの僕とSランクの彼女  作者: たてみん
第2章:Sランクの私と彼
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22-6 一撃勝負

よろしくお願いします。


今回は若干第三者視点でお送りしています。

途中からソージュ視点に直そうかとも思ったのですが。

ブラッドは顔を(しか)めて後ろを振り返った。

その視線の先には、束縛魔法(バインド)をソージュに放ったであろうダークが居た。


「おい、ダーク。てめえ、何のつもりだ」

「ヒヒッ。お楽しみの所、申し訳ないとは思ったのですが、

オーガキング達の方も襲撃されているみたいでしてね。

早々に終わらせてもらって、向こうを見に行きたいと思ったのですよ」


ブラッドの殺気すら篭った視線を受けてもどこ吹く風と笑うダーク。


「けっ。俺がこいつに勝てないとでも思ったのか?

……ん?ああ、そうか。それにだ。

お前がオーガキングを気にする必要は無いみたいだぞ」

「ヒヒッ、それはどういう意味ですかなガハッ」


ブラッドの見ている前でダークの胸からナイフの先端が飛び出る。

さらに首の後ろから鼻にかけてもう1本。これは即死だな。

それと同時にメイド服の少女がダークの後ろに姿を現す。

キーヌだ。

どうやらソージュ達の戦闘を隠れ蓑にダークの後ろに回り込んでいたらしい。


「まあつまり、お前はすぐ死ぬからだって、もう聞こえてはいないか」

「……どうして、見逃してくださったのですか?」

「ん?ああ。そいつが俺の楽しい時間を邪魔したからってのもある。

それに、主人が殺されても使命を全うする従者っていうのは嫌いじゃない」

「なるほど。そうでしたか」


ドサッと倒れるダークの死体を横目に静かに佇むキーヌ。

そのキーヌからは、主人であるソージュが殺されたというのに悲壮感は感じられない。

それはメイドとしての誇りが為すものなのか、それともソージュが主としては慕われていなかったせいなのか。

そんな風にブラッドが考えたところで、キーヌが微笑んだ。


「お褒め頂きありがとうございます。

ですが1つだけ訂正を。

旦那様はまだ健在でございます」

「なに!?」


振り返るブラッドの視線の先には、切られ血で赤く染まったソージュがいた。

今も傷口から血がどくどくと流れ……てはいない。

よく考えれば傷の割に流れた血の量が少ない気がする。

もしかしたらまた魔道具を着込んでいたのか。

そう考えながらもブラッドは油断無く剣を構えた。


「いってて。

キーヌ。見事後ろの魔道士を倒してくれたのは褒めてあげるけど、僕のことはもう少しそっとして置いて欲しかったな」

「はい、申し訳ございません。旦那様」


血まみれのまま身体を起こすソージュと、それを見て怪訝な顔をするブラッド。


「おいソージュ。

前回の拘束魔道具といい、今度はどんな手品を使ったんだ?

俺のあの一撃を受けてその程度の傷とは思えないんだが」

「ん?ああ。そうだね。

ネタは明かせないんだけど、ブラッドの攻撃力を僕の耐久力が上回ったってだけだよ。

正直、一歩間違えばやばかったけどね」


実際、あの一撃の前に傷だらけになって血を流していなければ、その血で杖を強化していなければ、またはあの一撃が斬撃ではなく刺突であったなら。

ソージュは今、立っては居なかっただろうと思う。


「さて、そんな訳で、続きと行こうか」

「おいおい。そんな血塗れで武器も失った状態でまだやろうってのか?」

「まあね。それに見逃して帰ってくれるって訳でも無いんでしょ」

「そうだな。そんな目をして挑み掛かって来る奴が居るのに、退こうとは思わないな」

「あーしまった。じゃあ負け犬の目をしてれば見逃してくれたのか」

「あほ。その時はサクッとその首切り落として帰ってるだけだ」

「あはは、だよね。

っと。そうそう、さっきのブラッドの発言を1つ訂正ね」

「ん?」

「僕の本来の武器はこっちだから。来て『ジル』」

『リン♪』


呼び掛けに応えるように、ソージュの血が形を変え、1本の杖になる。

その杖から発せられた魔力に、思わずブラッドが1歩下がる。


『マスター大丈夫なの?』

『うん、正直そんなに大丈夫じゃない。

次の1撃で決めないとまずいかも』

『わかったわ』


一歩踏み出して構える。

その一歩で血で塞いだ・・・・・傷口が開きかける。

漏れでた血が杖に吸い込まれていく。


「ブラッド。済まないけど次の一撃で終わらせてもらうよ」

「それがお前の奥の手か。いいぜ。俺も最高の一撃を見せてやろう」


お互いに魔力を高め合う。

離れて見ているキーヌが固唾を呑んで見守る。


瞬間。

ブラッドが爆発的に飛び出してソージュを襲う。


「『龍滅剣』」

「はぁっ!」


ブラッドの放った一撃により、10メートル先にある木が真っ二つになり、地面にも大きな切れ込みが入る。

それはまさにドラゴンすらも両断する一撃だったのかもしれない。だが。


「ちっ、化け物め」


そのつぶやきと共にブラッドの剣が根元から砕け散る。

同時に左肩から血が噴き出しひざを付く。


「そっちこそ。あの一瞬で半分かわされるとは思わなかったよ」

「ぬかせ」


ブラッドは手を後ろについて、腰を下ろした。

一瞬にして服がぼろぼろになったソージュは、構えを解くことなくブラッドを見つめる。


「あ~それでさ。僕の勝ちだと思うんだけど、勝者の権利を主張させてもらってもいいかな?」

「ん?ああ。そうだな。

だが残念だが、魔物のコントロールは俺じゃなくさっき死んだあれの役割だ。

だからまあ、代わりに良いことを1つ教えてやる。

今回の魔物騒動はな、囮だ」

「おとり?」

「ああ。こうして騒ぎを起こしている間に他のやつらが動いているはずさ」

「それはいったい」

「おっと、これ以上は自分で調べるんだな。じゃあな」

「ちょ、まって!」


止める間もなくブラッドは後ろ手に隠し持っていた転移魔道具で消え去った。

用意周到というか抜け目が無いというか。

そこに回復ポーションなどを持ったキーヌが駆け寄ってきた。


「旦那様。ご無事ですか!?」

「ああ、うん。キーヌが居てくれて助かった。ジルもありがとう」

『リン♪』

「ただ、余波だけでこれとか、あいつこそ化け物だって」


そう言って力を抜いた瞬間、ソージュの全身から血が噴き出す。

それを見たキーヌも顔を青褪めさせる。


「だ、旦那様!?」

「あはは、これは流石に、ちょっと動けないかな。

リーンさん達が無事なら良いんだけど」


倒れながら見た先からは強大な魔力の奔流が感じられた。

あっちも戦いが本格化してるみたいだ。


ダークさんご退場です。

今回キーヌさん大活躍です。


そしてリーンさん達はオーガキングに勝てるのか!?

……勝てるのかな。

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