22-3 オーガキング?
よろしくお願いします。
今回はリーンさん視点。
Side リーン
ミラちゃんの幻影魔法で姿を消して歩き去っていくそーくんを横目に、私達も極力気配を消して移動を開始する。
向かうは魔物の軍団から少し離れた後ろに陣取っているらしいオーガキング達だ。
歩きながら若干緊張した表情でエルちゃんが言った。
「それにしても、こんなに早くAランクの魔物と戦う事になるなんて思ってもみませんでしたわ」
「そうだよね。エルちゃんは冒険者ランクはまだDだったよね。
本来なら魔物討伐依頼を受けるにしても高くてCランクだもんね」
「ちなみに、皆さんはAランクの魔物との戦闘経験はおありですの?」
その質問には私達3人とも首を横に振る。
先日のゴブリンキングがBランクで、単体で言えば一番高ランクだったけど、あれも人工的に生み出されたまがい物だから、本来よりも弱かったはず。
そうじゃないと魔法の一撃で倒れたりはしなかったんじゃないかな。
それになにより、あの時はそーくんが居てくれたし。
「俺達もCランクの群れを相手にしたのがせいぜいだな」
「はい。Bランクともなると、単体でも危険ですが、群れ強さも格段に上がるとお聞きしています。
気を引き締めて参りましょう」
「うん。それと、無理はしないでね。
倒せなくても、引き離して時間稼ぎするだけでも十分な成果だから。
街に向かった魔物が撃退できて、向こうに余裕が出来たら応援を呼ぶことも出来るしね」
本来ならAランクの魔物って数十人規模のBランクパーティーで相手にするもので、4、5人で挑むのは無謀と言うべき所なの。
そーくんの口ぶりだと余裕そうな感じだったけど。
そして、魔物の軍の最後尾がギリギリ見える距離の所で、オーガキング達の集団を見つけた。
「……なに、あれ」
「まさに肥え太った豚ですわ」
「オーガキングとオークロードが肌の色くらいしか見分けが付かないな」
「周りのハイオーガ達の方が強そうですね」
そんな感想が漏れてしまうくらい、オーガキング達は見るに耐えない姿をしていた。
なるほど。これがそーくんが余裕そうだった理由なのか。
「も、もしかしたら、私達を油断させる罠で、本当は強いのかも知れないから、慎重に行くよ」
「「はい」」
まずはまだ距離がある内に遠距離魔法を撃ち込んでいく。
「『フリーズバレット』」
「『サンダーボルト』」
「はっ!」
ハイオーガ達が頭に集中砲火を受けて倒れていく。
でも流石、上位種。すぐに急所を守りつつ突撃を仕掛けてきた。
「予定通りケイ君とミラちゃんは右側からオークロードをお願い。私が左を行くわ。エルちゃんは引き続き中央の牽制をお願い」
「任せてくれ!」
「「はい」」
私は半径5メートルに氷弾を生み出していく。
それらが私の周りをクルクルと飛び回る。
「さあ、特訓の成果を見せてあげるわ」
ハイオーガにあわせて私も前進する。
そして射程範囲に入ったハイオーガの後ろから氷弾で首を刺し貫いていく。
「ゴフッ」
「ガッ」
先頭の5体がそうして倒された所で、残ったハイオーガ達が私ではなく氷弾を叩き落そうと上空を飛んできた氷弾に殴り掛かる。
「残念」
ハイオーガの拳が当たる手前で氷弾を反転させつつ、足元を凍り付かせる。
すると空振りした勢いと合わさってバランスを崩していく。
そこへまた別の氷弾で急所を貫くことで次々と倒していった。
「うーん。これ、魔力の節約になるのは良いんだけど、集中力がまだきついわね。
あと、氷弾が魔物の血で変色するから、ちょっとホラーかも」
そうして50体近くハイオーガを倒したところで、ようやく重い腰を上げてオーガキングがこちらに近づいてきた。
……うーん、本当に重そうね。
でも脂肪が詰まっている分、胴体に対する攻撃はあまり意味無いかもしれない。
やるならやっぱり手足か頭部ね。
「ぶひっ」
「……え? きゃあ!」
いざって身構えた所で、突然オーガキングが倒れて、いや、吹き飛んできた。
咄嗟に飛び退いて避けたけど、いったい何が……。
見ればオーガキングは後頭部が破裂して死んでいた。
「マッタク。ニンゲンドモガ ナニカ ハジメタカラ ケンブツシテイタガ、
コレガ オーガキングトハ ワラワセテクレル」
そこには人間の言葉を話す、正真正銘のオーガキングが立っていた。
真打登場!!(敵ですが)
やっぱり肥え太った養殖モノはだめですね。
次回はケイ達側の視点です。
……誰視点で行こうかな