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Eランクの僕とSランクの彼女  作者: たてみん
第2章:Sランクの私と彼
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22-1 決戦前の休息

よろしくお願いします。


前話のところにつなげようと思ったら全然届きませんでした。

なぜってそれは……

ジバンリン歴52年6月30日


魔物の大群の進行ルートから離れた僕達は、日の出前のこの時間を使って休息を取ることにした。

急いだ方が良いんじゃないかって意見もあったんだけど、これからオーガキング達を相手にするのに万全の状態を整えておいたほうが良いだろう。

休息に適した空き地を見つけて、皆に夜食代わりにブラッドベリーを配ってから、木の棒で地面に線を引いていく。


ズリズリズリ。


「そーくん。それはいったい何をしてるの?」

「魔法陣を書いてみてます」

「あ、うん。それは何となく分かるんだけど。そーくん、魔法が使えるようになったの?」

「いえ、まだまだ全然ですよ。っと、これでよし」


地面には直径4メートルの○と☆を組み合わせた、いわゆる五芒星魔法陣が出来上がった。

その中心にアイテム袋から取り出した植木鉢を置く。


「綺麗な花ね。それで、これを取り出してどうするの?」

「まあ、見ててください」


自分の手首をちょっと切って、流れ出た血を花の根元に垂らす。

すると植木鉢全体が光に包まれた。


「わ、なになに!?」

「ちょっと、ソージュ。危なくないんでしょうね」


驚くリーンさんとエルさんをよそに、すぐに光は収まっていく。

それと同時に1人の少女がその場に佇んでいた。

シルキーのキーヌだ。


「こんばんは、旦那様。今日もよい月夜でございますね」

「うそっ、空間転移!?」

「ちょ、ソージュ。旦那様ってどういうことよ。

あなたもしかしてメイドを雇ってるの?

いつからそんな裕福な身分になったのよ!」


2人に対して、ケイ達はそんなに驚いていない。

あ、そっか。前に僕の部屋で会ってるし、リーンさんを救出しに行くときも似たような光景を見てるからね。

僕に詰め寄ろうとするエルさんの間にサッとキーヌが入ってお辞儀をする。


「お初にお目にかかります。

私はシルキーの精霊で、名をキーヌと申します。

以前、こちらのソージュ様に助けて頂いた恩を返すために、こうしてお仕えさせて頂いております」

「精霊……」

「それと、こちらの植木鉢の花と旦那様のお部屋の花とが魔力的に繋がっているお陰で、こうして馳せ参じることが出来ました。

残念ながらリーン様の仰った空間転移のような高等魔術ではございません」

「ふえぇ。キーヌちゃんって凄いんだね」

「リーン様。ただの人に精霊が付き従っていること自体、普通はありえないことですわ」

「あ、うん。そうなんだけど、そこはなんというか、ほら。

そーくんと一緒にいると色々あるから慣れちゃった」

「はぁぁ。なにやらどっと疲れましたわ」


さて、挨拶が終わった所で本題に入ってもいいかな。


「キーヌ。君に来てもらった理由は分かるかな」

「はい。皆様お疲れのご様子。更には地面に描かれた魔法陣。

以上の事から、皆様を朝までごゆっくり休まれるように、サポートすれば宜しいのですね。

ささ、皆様魔法陣の中へ」


キーヌに促されるままに魔法陣の内側に移動する。

全員が移動したのを確認して、キーヌはひざを地面につけて目を閉じ、祈るようなポーズを取った。


「『セーフハウス』」


その言葉に合わせて魔法陣が薄っすら光を帯びる。

その光はゆっくりと伸びて僕達を包み込んだ。


「わぁ、素敵」

「ほお、これは」

「凄く落ち着く光ですね」

「こんな魔法があるのね」


皆からため息交じりの声が漏れる。ただ、


「はい。旦那様のお部屋の空気を再現させて頂きました」

「ちょっ!?」

「なっ!?」


キーヌの一言で色々と台無しになった気がする。

リーンさんとエルさんが顔を赤くしちゃってるし。

それもどこ吹く風と、キーヌは笑顔のままだ。


「さあ、皆様。見張りは私の方で行います。

夜明けまではまだ4時間近くありますから、ごゆっくりお休みください」


若干釈然としない表情を残しつつ、それぞれアイテム袋から携帯寝具を取り出して横になった。

あ、なるほど。確かに、寝床はいつもより硬いけど、目を閉じれば自宅に居るような気分になれるね。

そうして眠りに付く僕の髪を、キーヌがやさしく撫でてくれていた。



お久しぶりのキーヌさんが頑張ってくれてます。

『セーフハウス』の魔法はシルキーの種族魔法の一種で、自分の守護する家を模倣することが出来ます。

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