21-A 学園都市防衛準備
よろしくお願いします。
ソージュ達の本格戦争の前の、学園都市側のお話です。
Side マリアッジ学園都市
ソージュ達が魔物の軍勢の足止めの為に穴を掘っている頃。
マリアッジ学園都市では着々と防衛の準備が進められていた。
「斥候の情報によると魔物はオーガとオークが主体の軍勢だ。
最新の情報では敵の数は約3000。
防御柵などもそれに合わせて作れ!
そこ!堀の深さはその倍は無いとただの窪地だ。
そっちの土壁も、それでは簡単に乗り越えてくるぞ!
土魔法が得意なものは後のことは気にせずに全力を持って当たれ。
先行した有志冒険者が多少時間を稼いでくれると聞いた。
とはいえ、タイムリミットは明日の午前中だと思え」
街の警備隊によって街の外に陣地が形成されていく。
そこに街の住人がそれぞれスコップや鍬を持って集まってきた。
「どうしたんだ。街の住民はもしもの時の為に避難する準備をするように通達が回っているはずだぞ」
「よう、隊長さん。水臭いじゃねえか。
穴掘って、壁作って、柵を立てるんだろ。
そういうのは任せろよ。俺達の得意分野だ。
隊長さん方は、魔物が辿り着いた時の為に体力を温存していてくれや」
「そうそう。土いじりも罠作りも俺達の方が専門ってな」
見れば農家や大工、鍛冶師や猟師など、腕っ節に自信のある男達だ。
それを見て警備隊長も呆れた声を出す。
「おいおい。普段、無駄飯喰らいの税金泥棒なんて言ってたのはどこのどいつだ。
こういう時こそ我々警備隊に華を持たせろよ」
「だから、それは魔物の相手で十分だってよ」
「だな。そっちは命懸けなんだ。十分すぎる対価だろ」
「ほら、隊長さん、どこを掘ればいいか指示くれや。
早くしないと、そこらじゅう穴だらけになっちまうぞ」
「ちっ、仕方ない。
おい、若い奴らから順次交代だ。
このオッサンどもが熟練の技ってのを見せてくれるから良く見ておけ!」
「オッサンは余計だ」
「いや、十分オッサンだろ」
「はっはぁ。これがオッサンパワーだ!!」
そう言って鼻息荒く筋肉アピールを始めるおっさん達が次々と穴を掘っていく。
さらにその後ろ、街の門付近では補給や治療用の物資が集められていた。
その中には、警備隊で備蓄していたもの以外にも、大量に支援物資が届いていた。
街の住人からだ。
「街の一大事なんだってな。俺達は戦えないから、せめてこれくらいはさせてくれ」
「聞いたわよ。ソージュ君達が頑張ってくれてるんだって?」
「いつも世話になっているからな。薬の手配は任せてくれ」
「魔物が来るのは明日の昼だって?なら炊き出しも必要だね」
飲食店、治療院、雑貨店や孤児院などからも続々と人が集まって救護施設が用意されていく。
これで隣の都市から増援が来たとしても十分に支援が可能であろう。
また、マリアッジ学園も緊急集会を開催していた。
「学園生諸君。
耳の早い人は既に聞いていると思うが、今、この学園都市に向かって数千体の魔物が移動してきている。
諸君にはこれより、警備隊と共に防衛線へ参加して頂きたい。
もちろん、これは強制ではない。重症を負う危険もあるし、死ぬ可能性だってある。それぞれ自分の実力と照らし合わせて参加を決めるように」
集まっている学園生達がざわざわし出す。
参加するかどうかで、周りの様子を伺っているようだ。
「静かに。こちらに入ってきた情報では、魔物はオーガやオークが中心とのことだ。勿論上位種も居ることだろう。
よって、前線に立つのは、Bランク以上かつ学園ダンジョンを16階層以降まで進んでいる者のみとする。
それ以外の人は後詰めとして前線のサポートに回るように。
後詰めだからと言って、命の危険が無い訳ではないから安易には考えないで欲しい」
それを聞いて半数以上の学園生、つまり前線に該当しない生徒から安堵の声が聞こえてくる。
逆に前線に向かう生徒からはピリピリした空気が漂い出す。
「後、今回の武術大会の準決勝に勝ち進んでいた者たち、リーン、エリュース、ケイ、ミラは、冒険者Cランクのパーティーとして既に魔物と戦う為に街を出ている。
あ、Eランクのソージュも共に向かったそうだ」
その、後から付け加えた言葉を聞いて学園生たちの空気が変わる。
「おい、Eランクが前線に出たのか」
「へっ、馬鹿というか命知らずというか」
「だけどよ。これで俺達が逃げたら、残った奴らからEランク以下の腰抜けだって笑われるんじゃないか?」
「なっ!?」
「確かにそうだな。あ、俺は勿論参加する側だぜ」
「うわ、ずりー。さっきまで早く逃げようって言ってた癖に」
そうして学園長の思惑通り、ほぼ全ての生徒の参加が決定し、教師陣が班分けに奔走する事になった。
そして翌々日の早朝。
物見台から魔物の襲来を知らせる鐘の音が響き渡った。
街の住人総出で頑張ってますよ、というお話でした。
あ、武術大会の決勝戦は脇に追いやられています。
一応エラーザ王子の不戦勝ですが。