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Eランクの僕とSランクの彼女  作者: たてみん
第2章:Sランクの私と彼
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21-4 足止め作戦

よろしくお願いします。

グレムリンのほとんどを撃退出来た僕達は、再びオーガ達が見える所まで前進してきた。


「改めて見ても、もの凄い数だね」

「ああ。あれに5人で挑むというのは無謀としか言えんな」

「距離を見誤れば、一瞬で呑み込まれてしまいますね」

「ねえ。というかこれ、1000じゃきかないわよ。

3000くらい居るんじゃないかしら」

「……確かに、先日のゴブリンよりも多い気がしますね」


まずいな。

これは下手に攻撃仕掛けたら本気で人海戦術で潰されかねない。


「うん。予定変更して夜まで様子を見ましょう。

空いた時間は足止めの落とし穴を作るとかそんな感じで」

「落とし穴、ね。でもあの巨体を落とそうと思ったら、大分大きな穴が必要よ」

「あはは。僕は畑仕事で穴掘りは慣れてますからフォローしますよ」


そんな訳で街道を戻り、おおよそ明日の夜明け前くらいに魔物たちが到達するであろうポイントに向かう。

僕はアイテム袋からスコップを人数分取り出して皆に渡した。


「何で私がこんな農民の真似事をしているのかしら」

「エルさんのボヤキは尤もですけど、土魔法が得意な人が僕らに居ないですから。

本当は土魔法で掘れたら楽なんですけどね。

まあ、これも鍛錬の一環と思ってください」

「ええ。ここまで来てやらないなんて言わないから安心なさい」


そして僕らは穴というか堀を掘って行く。

流石に街道として踏み固められた地面は大分固いけれど、身体強化などを駆使してガンガン掘り進めていく。

日が暮れる頃に出来たのは、幅3メートル、深さ6メートル、直径100メートルの環状の堀と、掘った土を積み上げた土壁が出来上がった。


「さて、これで多少は時間が稼げるかな」

「何というか、昼間のグレムリンを相手にしていた方がまだ楽でしたわ」

「そうだね~。慣れない作業の所為か、腰が痛いよ」

「帰ったらゆっくりと風呂に浸かるとしよう」

「ケイ様。良ければ後ほどマッサージなど致しましょうか」

「うむ。とはいえ、ミラも疲れたろうから俺からもするとしよう」

「あら、それは楽しみでございますね」


そんな風に和気藹々と話していたら地響きが聞こえて来た。

まだ多少距離があるとは言え、あれだけの重量と数の魔物が行進していれば地面を伝わる振動も凄いことになっているな。


「じゃあ、リーンさん。後は予定通りに霧をお願いします」

「うん。ちょうど穴も隠れて一石二鳥だね。

『アイスフォッグ』」


リーンさんの周囲に白い霧が発生し始め、時間と共に夜の闇に広がっていく。

十分に広がった頃合いを見て僕らはその場を離れた。


「そーくん、魔石ってまだ残ってる?幾つか貰っても良いかな」

「はい、まだまだあるから自由に使ってください」

「うん、ありがと」


魔石を何に使うのかと思ったら、今使った霧の魔法を込めてるみたいだ。


「これで適当に撒いておけば、魔法の持続時間が大幅に伸びるはずなんだ。

流石に明日のお昼前には消えると思うけどね」

「なるほど」


そして更に待つ事2時間。

魔物の軍勢はズンズン霧の中へと入ってくる。

その間に僕らは土壁の上に登って魔物の状況が分かるように位置取る。


「じゃあ、次はミラさんお願い。

これを弾弓で敵の上空に打ち上げてください」

「はい、お任せください」


そう言って例の毒の粉末の入った袋を幾つか渡す。


「いざ」

ヒュッヒュッヒュッ……


短い掛け声と共に、ミラさんの弾弓によって魔物の群れの中心付近まで投げ込まれ『ボッ』と小さな爆発音を立てて袋がはじけて中の粉末がまき散らされる。


「そしてケイはこれをお願い」

「これは投げやりか」

「うん。ミラさんの幻影魔法と一緒に魔物の群れの中に適当に降らせて」

「承知した。はっ」


ケイは束になって渡された短槍を次々と魔物の上空に投げ飛ばしていく。

ミラさんもそれに合わせて幻影魔法を発動させ、あたかも敵が現れて槍で攻撃してきたかのように見せる。


「ウガァ!」

「グルァ、ガアァ!!」


……よし、無事に何十体かの魔物が襲撃を受けたと勘違いして暴れて周囲を攻撃しだした。

その混乱は時間を追う毎に拡大していき、更に先頭に居た魔物が堀に落ち始める。


「……そう言えばそーくん。何で穴は環状に掘ったの?」

「それは、ほら。あんな感じになってくれたら良いなっていう思惑があったんです」


僕らの視線の先では穴に落ちた後、右回りに穴の中を進む魔物と、左回りに進む魔物がぶつかり戦い出した。

更に片側が強かったらしく、次第に全体が右回りにぐるぐると回り出す。

更に更に穴の上からは新たな魔物が落ちてきて大混乱になっている。


「なるほど。あれで延々と走り続けてくれたら壁を登ろうとは思いにくいって事なんだね」

「はい。ただ、穴が浅すぎるので、その内やられた魔物の死体で埋まります。

本当はダンジョンみたいに魔物の死体がどんどん消えてくれたら、もっと効果的なんですけどね。

それでも今の混乱状態と合わさって、もう少しあの場に留まってくれると期待してます。

さて、これで無事に時間は稼げたはずです。

僕らは僕らで次に行きましょう」

「つぎ?」

「はい。この魔物の軍団の後ろに回って、この状況を作り出した元凶か、ボスを倒しに行きます」

「そう、ね。オーガキング達が居るなら、倒せないまでも街にはいかせないようにしないとね」


そうして僕らはその場を後にして大きく迂回して魔物の出て来たというダンジョンを目指した。

堀の大きさについては優しい目で見て頂けると助かります。

頑張れ魔法とアイテム袋があればショベルカーを超える土木工事だって出来るはずだ!

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