20-2 準決勝(ソージュVSケイ)
よろしくお願いします。
珍しくまともな?バトルシーン
Side ソージュ
「準決勝第2試合、始め!!」
審判の開始の合図と共にほぼ同時に飛び出した僕とケイは、まるで示し合わせたようにお互いの武器で袈裟切りをする。
ギンッ。
ケイの鉄剣はともかく、僕の方は木の杖にも係わらず、まるで金属同士を打ち合わせたような音を響かせる。
すぐに一歩下がって間合いを開けると同時に、僕が少し早く再度の踏み込みと共に連続で突きを放つ。
「ふっ」
カカカンッ!
ケイに盾を使って逸らされる。正面から受けるのではなく、少しずつ角度を変えて。
そうして出来た隙を突く様に下段から掬い上げる様な一撃が来た。
剣の腹に杖を当てて軌道をずらす。
ずらした剣が更に切り返して来たので回りこむ事で回避する。
反撃に僕の回りこんだ死角からの脛を狙った足払いは、ケイが前に飛び出すことで避けられる。
「「……」」
一瞬で位置を入れ替える僕たち。
ほんの数秒のやり取りの後、再び仕切り直す。
そのすぐ横ではリーンさんとミラさんが撃ち合いを始めていた。
どうやら向こうは僕達の方に干渉する気は無いみたいだ。
思う存分戦ってねって事だね。
ありがとうございます。リーンさん。
そして、おもむろにケイが構えを変えた。
これは……うん、仕掛けてくるつもりだね。
オーソドックスなシールドマンスタイルから、やや前傾姿勢で両手をぶらりと垂らすその姿はまるで……
「おオオおぉ!」
雄たけびと共に飛び出してくるケイ。
その速度はさっきの倍以上だ!
更には直線的に突撃するのではなく、左右にジグザグに飛び跳ねながら攻撃を仕掛けてくる。
右から剣で切って来たかと思えば、左から盾を持った手で殴りかかり、そうかと思えば前蹴り後ろ蹴りが飛んでくる。
柔軟に高速にヒットアンドウェイを繰り返すその戦い方は、まさに魔獣のウェアウルフを彷彿とさせる。
「そこだ!」
ズンッ!バキッ!!
左の脇から迫る一撃に、なんとか杖を割り込ませるも、その勢いのままリーンさんのところまで吹き飛ばされた。
追撃をかけようとしたケイだったけど、リーンさんが展開する氷弾の防御陣を見てたたらを踏む。
「そーくん、大丈夫?」
「はい、何とか。それにしても、ケイもミラさんも強くなりましたね」
立ち上がりながら、笑顔のリーンさんに応える。
「ほんとだね。あれはきっと種族特性を上手く戦闘に活かしてるんだよ」
「そんな感じですね。まさに狩りに慣れた大狼を相手にしている気分です。
と、のんびりしてると怒られそうなので行きますね」
「うん、頑張ってね」
リーンさんの防御陣を出てケイに近づいていく。
僕と目が合うと、ケイがふっと笑った。
「ふむ、ようやく目を開けたか。
ここからが本番ということだな」
「いやぁ、実はここ最近ずっと目を閉じてたから目を開けるのを忘れてたんだ。
でもこうして目を開けると、空間把握に使っていたリソースを別の事に使えるから、期待を裏切らずに済むと思うよ」
「それは楽しみだ。ではいざ!」
再び突撃してくるケイ。
それに対して僕は杖を前に出しながら、地面に突き立てる。
「ん?なにを」
「支柱の構えって言って、お父さんの得意技なんだ」
「ほぉ、面白い」
カンッ、キン、ゴスッ、ガガギガギ。
ケイの放った攻撃を次々と杖で受ける。
ケイがステップを混ぜて横に動けば、僕も杖を中心に反対側へ回る。
受ける、回る、受ける、回る、流す、回る。
杖はまるで地中深くに根を降ろしてるんじゃないかと思えるほどにビクともせず。
その杖が体の正中線を貫いている為に無視して攻撃すれば態勢が崩れることは必死。
お父さんは大地を味方に付ける事で巨人の一撃でも防げるぞって言ってたっけ。
「なるほど。剣や打撃武器では突破は難しそうだな」
「うん、三節棍とか返しの付いた武器相手だとこうは行かないんだけどね」
「だろうな。あとはソージュの方も攻撃に転じるのが難しい、か」
「うーん、ケイが捨て身で攻めてきてくれると勝てるんだけど、ねっ」
カウンター気味に跳ね上げた杖をスウェーからのバックジャンプで避けられた。
やっぱりダメか。
「ふぅ~、よし。なら次はこっちからも行くよ!!」
「おう、来い!!」
「はっ」
ズンッ!!パリンッ。
…………え?
「今のパリンって」
「ふむ」
思わずたたらを踏む僕。
自分の手元を見るとフォースバリアが壊れていた。
えっ、もしかして今の踏み込みの反動で?
うわぁ、なんかすっごい不完全燃焼だ。
僕達はまばらな拍手と笑い声を背に試合会場を後にするのだった。
はた目から見ると最初を除き一方的に攻められているソージュ。
ラストはソージュを勝たせるプランもあったのですが、こんな落ちになりました。