19-3 新しいサークル仲間の誕生
よろしくお願いします。
予定よりずっと早くエルさんが活動していらっしゃいます。
1回戦を終えて校門へ向かうと、先に試合を終えていたミラちゃんとケイ君、そしてなぜかエリュースさんが居た。
「お待たせ。えっと、どうしてエリュースさんまで一緒にいるの?」
「あら、私が一緒に居ては何か問題がありましたか、リーン先輩」
「いえ、そんな事は無いけど、皆は知り合いだったの?」
「はい。エリュース様とはクラスが同じですから」
あ、そっか。SランクとAランクだから講義は一緒になるんだっけ。
「それと……」
「ん?」
「最近、よく近くでお見かけしますので」
「あ、あはは~」
若干温度の下がったミラちゃんの視線に、エリュースさんが乾いた笑いを返す。
あー、なるほど。
ここ最近、エリュースさんの視線を良く感じると思ったけど、ミラちゃん達にも同じ様にしていた訳ね。
「お友達になりたいのに声を掛けづらかったみたいでしたので、先ほどこちらから声を掛けた次第です」
「うむ。改めて友誼を結ぶというのは気後れするものだからな」
「べ、別に私からお願いした訳ではないですわ!」
顔を真っ赤にさせてるエリュースさんも、満更ではなさそうね。
エリュースさんには思うところはあるけれど、悪い人ではなさそうだし、なによりそーくんの事を大事に思ってくれてるみたいだしね。
「よし、そういうことなら、いつもの喫茶店でエリュースさんの歓迎会ね」
「ちょっ、リーン先輩もどうしてそうなるんですか!?」
「それはまあ、リーンさんがスイーツをいっぱい食べる口実じゃないですか?」
「えへっ、ばれちゃったか」
「まあ、いつも通りではあるな」
「そうでございますね」
うぐっ、ちょっとみんなの私に対する評価が気になるところね。
でもでも、美味しいものは外せないし。
そう、スイーツが私を待っているのよ!
……
…………
………………
「という訳で、エリュースさんのサークル参加歓迎会を開催します」
「「おぉ(ぱちぱちぱち)」」
喫茶店に着いた私達は、早速飲み物と今日のおすすめパイを注文して席に着いていた。
あぁ、今日のりんこパイも美味しそうね。
「って、だからどうしてそうなるんですか!?」
「え、嫌だった?」
「い、いやではないですけど」
「ならいいじゃない」
「うぅ。私の中のリーン先輩のイメージがどんどん崩れて行きますわ」
「ま、まあまあ。すぐに慣れますよ」
う、そーくんがフォローしてくれたけど、それってフォローになってないような。
「っと、そうだった。エリュースさん」
「エルで構いませんわ。他の皆さんも」
「あ、うん。じゃあエルさん、今日からこれを着けて」
「これは?」
「負荷魔道具。このサークルの必須アイテムの1つ、かな。
あ、授業でつけてるのよりかなり強力だから、身体強化を全開にしてから起動させてね」
「は、はぁ……あぐっ」
渡した負荷魔道具を起動した瞬間、脂汗を流すエルさん。
うんうん、最初はそうなるよね、やっぱり。
……って、あれ?どこか青褪めた顔で私を睨み付けてるけど、なに?
「ま、まさか、私を、騙したん、ですか?」
「へ?」
「で、す、か、ら。この、魔道具で、拘束して、誘拐など」
「あ、ああ。それは誤解よ。
ごめんなさい、説明が足りなかったわね。悪気は全く無かったの。
それにほら。私達も同じものを付けているのよ。
あと、装着者が自分で起動しないといけないようにセーフティーも追加した改良版だし、
停止も簡単に出来るから、止めたかったらすぐに止められるよ」
「じゃあ、まさか皆さん。いつもこの状態でいらっしゃるの?」
「うん。これに慣れると、持久力とかが凄い身に付くんだよ。
街の外に出るときなんかは、馬に乗らずに走って行くから、出来るだけ普段から身に付けて体力付けておいてね」
「ふ、ふふふっ。そちらのケイさんとミラさんも着けているのでしたね。
分かりましたわ。1年Sランクとしては負けていられませんもの。
これくらい、すぐに、乗りこなしてみせますわ」
そう言いながら、プルプル震える手でりんこパイにフォークを突き刺すエルさん。
うん、この調子ならすぐにでも物にできそうね。
「大会はどうしたの!?」という声が聞こえてきそうです。
だ、大丈夫。準決勝はしっかり書く予定だから。ねっ(汗)