18-A エリュース観察記録
よろしくお願いします。
1日1話くらいのペースになってしまいました。
せめて日を空けることの無いようにがんばります。
Side エリュース
エルです。
最近の困ったことと言えば、よくどなたかの視線を感じます。
それが好意的なものであれば良いのですけど。
「『サンダーショック』」
「ぎゃっ」
全く兄さんには呆れますね。
何度こうして追い返しても、明日にはけろっとしているのですから。
っと、いけない。今は偵察の最中でした。
先日再会したソージュについて、以前からソージュという生徒が居ることは知っていましたが、その生徒はEランク。
決して私の知るソージュとは別人だと思っていました。
だって彼は、ほんの小さい時でさえ、ゴブリンの群れを木の棒で撃退していたのですから。
大きくなった彼が剣を扱えない訳がありません。
ですが、事実はEランク。
これは彼が不当な評価を受けているのに違いありません。
ただ、先入観だけで動くのは危険です。
だからまずは彼を含めた周囲の観察を始めたのです!
まずは問題のソージュ。
本名はソージュ・ライオネル。今年入学したEランク生徒。
入学試験の話を聞いたところ、彼は剣術魔術ともに試験を辞退していたらしい。
なるほど、それで評価されずにEランクなのね。
そんな彼を見ていて気付いたのだけど、普段目を瞑っているように見える。
単に目が細いだけかとも思ったけどそんなことも無かったわよね。
ただ、それでも周りの人にぶつかる事無く歩いているところをみると、ちゃんと見えているようね。
冒険者ギルドにも頻繁に通っているから相応な冒険者ランクだとは思うけど……ギルドの受付に聞いても教えてくれないわね。
掲示板から受けるクエストでランクが分かるかと思ったけど、受けるのは決まって街の手伝い。
まったく、昔から世話好きというか、人助けが好きというか。
あと時々受付から呼ばれていたのは指名依頼?まさかね。
ただ1つ言えるのは、やっぱり彼はEランクなんて謗りを受けるような人じゃないってことよ。
続いて彼の友人と思われる2人の獣人、ケイとミラ。
この2人は基本的にいつも一緒に活動しているようね。
放課後は1日おきに冒険者ギルドと3年の先輩の下に通っているようですね。
冒険者活動の方は……何と言うか、街のお手伝い?
時々ソージュも一緒に、店番や荷物運びなどなど簡単な仕事をしているようだわ。
そんなことをしているから他の冒険者の人達に見下される要因になっているんじゃないかしら。
これは要チェックね。
3年の先輩の方は……あら、確かこの方は以前問題を起こして他生徒に怪我を負わせたって噂の人だわ。
同じ獣人族だからってことなんでしょうけど、不良生徒と一緒にいるのは問題ね。
それに何をやっているのかと思えば、ダンジョンの山岳エリアで駆け回っているだけみたい。
何がしたいのかしら。
あとは、能力的な問題だけど、獣人族だからか気配察知能力は高いみたい。
50メートル以上離れた場所に居た私に気付いて振り返ったことが何度かあったし。
戦闘力は不明だけど、学園ランクそれぞれAと。
よし、この2人に関してはこれくらいで良いわね。
そして最後にリーン先輩。
学園Sランクで冒険者ランクもBとずば抜けた能力の持ち主。
『氷結の聖女』というふたつ名があるとおり、氷結系魔法が得意なようね。
去年は日中、体調を崩していた場面もあったそうだけど、今年度になってからそれも改善され、いっそう隙が無くなったらしい。
最近では毎日のように昼休みはソージュと過ごし、放課後もソージュと一緒にダンジョンに潜っていることが多い。(なんてうらやましい)
特筆すべきは、先輩の周りには光の玉が数多く飛び交っていたことね。
一瞬、妖精を従えているのかと焦りもしたけど、ただの『ライトボール』の魔法のようだった。
いったい何の意味があったのかしら。
ただ、先輩の一番の問題は、これほどまでにソージュの傍に居るのに、彼の現状をどうにかしようとする姿勢が見えないことよ。
これだけの能力があるのだから、学園に直訴するなり何でも出来るはずなのに、まるで飼いならされたペットのように彼のお弁当を食べるだけ。
それ、少しで良いから私にも寄越しなさいよ。
っと、話が逸れたわ。
やっぱり、能力があるのに彼に依存している先輩には、彼は任せて置けないわね。
来週に迫った武術大会で、彼には私こそが相応しいんだと見せ付けてみせるわ。
兄に負けず劣らず、尾行とストーキングを始めるエル。
……うーむ、最初の予定ではもっと正統派お嬢様の予定だったのですが、変態属性が付いて来ましたね。
全てはシスコンの兄が原因です。




