18-3 騒がしい兄妹
お待たせいたしました。
年明けから忙しすぎて書く暇が全然取れません。
今月は不定期更新になってしまいそうです。
朝の講義室に入り、いつもの席に座ると、先日同様に王子が近づいてきた。
「ごきげんよう、リーン君」
「おはようございます、王子。もしかしてまたパートナーの勧誘ですか?」
「いやいや、先日ダンジョンで走り抜けていった君の姿を見たからね。
まさか先を越されるとも思わなかったが、こうなってしまうと、僕がパートナーに誘っては、折角先に進んだ君に戻ってきてくれと言っているようなものだろう。
それは僕のポリシーに反するからね。
キチンと君の居る階層に追いついてから、改めて提案させてもらうよ」
「そうですか」
うーん、こういう筋を通そうとする辺りは好感が持てるのよね。
ただ、出来ればもう諦めてくれると嬉しいんだけど。
「パートナーの件じゃないとすると何かありましたか?」
「ああ。今日はね、君の今のパートナーについて聞きたいんだ。確かソージュという名前だったよね」
「え、そーくん?確かにソージュ・ライオネルが彼の名前だけど。
珍しいわね、あなたが低学年の低ランクの生徒を気にするなんて」
自分最高主義、妹至上主義だから自分にとって価値のないものには見向きもしないのに。
「まあね。正確には、気にしてるのは僕ではなく僕の妹でね。
そう。妹のエルは、どこか憂いた瞳を僕に向けることが多いんだが、
最近特に様子がおかしかったから心配になったのでね。
今日ここに来る前に訊ねてみたんだ。
そしたらだ!
ソージュという男子生徒の名前が出てくるじゃないか。
僕はピンと来たね。
これはそのソージュとか言う男にストーキングされたんだろうと。(いや、そんな訳ないでしょ)
妹のエルは可愛いからね。追い掛け回したくなる気持ちは実に良く分かる。
ただ、僕はよくエルの事を見ているから、そんな男が居たら間違いなく気付くはずなんだ。(それ、あなたがストーカーなんじゃないの)
だからもしかしたら、僕が目を離したほんの短い間だったんじゃないかと思う。
そして考えられるのはダンジョンの暗がりを利用して襲い掛かったのかということだ。(だから、そーくんはそんな事しないわよ)
もしそんなことをしていたら八つ裂きにして魚の餌にしてやるところ(ゴスッ!)ぐふっ」
「ちょっと止まりなさい」
マシンガントークを始めた王子にボディブローを入れて止める。
まったく、自分の世界に入ると周りの声が聞こえなくなるの、何とかならないのかしら。
「王子が重度のシスコンでストーカーなのは分かったけど、あなたとそーくんを一緒にしないで。
まったく、何がピンと来たよ。
1から10まで間違ってるわよ絶対に。
一言一句間違えずに、妹さんは何て言ったのかしら?」
「ふっ、任せたまえ。妹の言葉を僕が違えるはずがない。
妹はこう言ったんだ。
『兄さん。ソージュって男子生徒に心当たりない?』
とね」
「……それ、一言もそーくんに何かされたって言ってないじゃない」
全く人騒がせな。
「どうせどこかでそーくんの噂を耳にしたとか、そんなところでしょ」
「いやしかしだね。あのエルの憂い顔はどう考えても何かしらの問題事があるとしか考えられ「兄さん!ゴスッ」ごふっ。
こ、この脳天に突き刺さる1撃は、間違いなくエルの」
「何で私を判別してるんですか!?
そういうのやめてって、いつも言ってるでしょう、がっ!(ズンッ)」
「ぐはっ」
後ろから王子の後頭部にエルボを打ち込み、更にレバーブローを入れながら現れたのは、金髪の少女。
話の流れから考えて、王子の妹のエリュースさんね。
王子は横に吹っ飛んでピクピクしてるけど、自業自得だから放置でいいよね。
「全く、心配になって来てみれば案の定なんだから。
あ、ごめんなさい。兄がいつも迷惑をかけているでしょう」
「ええ。あのまま起き上がらなければ良いんだけどね」
「いえ、残念ですが、あれくらいではすぐに復活するでしょう。
あ、改めまして、1年のエリュースです。あなたがリーン先輩でよろしいのかしら」
「ええそうよ。それで、王子の話ではあなたがそーくんを探しているみたいだったけど、彼に何か用かしら」
「『そーくん』ね。兄さんに聞きたかったのは『ソージュ』という名前の生徒が複数人いないかという事だったんだけど。まあいいわ。
リーン先輩。単刀直入に言うわ。
ソージュとのパートナー登録を解消してくださらない?
あなたに彼を任せてはおけない。私がパートナーになって彼をSランクに引き上げてみせるわ」
そう言って胸を張るエリュースさん。
自信満々に言ってるけど、どこからその自信は来るのかしら。
あーそういう所は兄弟なんだね。
そんな訳で、エラーザ、エリュース兄妹による爆弾投下です。




