17-C 頼れる背中
よろしくお願いします。
エルさん視点3話目。
1話で終わると思ったら長引きました。
っと、気が付けば100話超えてました。
自分でビックリです。
彼の背中から降りると、地面の感触にびっくりする。
それくらい安心する乗り心地だった。
って、なんで男の人の背中に安心感を覚えてるのかしら。
お父様でもあるまいし。
「さて、じゃあ行きますよ」
「え、ええ」
彼の掛け声で気を引き締める。
そして現れた魔物は、アイアンゴーレム。
よし、これなら余裕ね!
「任せなさい!『サンダーボルト』」
「あっエルさん、まって」
彼の静止の声が届く前に私の魔法が発動して、ゴーレムへと飛んでいく。
その魔法がゴーレムに当たる直前。ゴーレムの両腕がバラバラになった。
「え、なに?」
バラバラになった両腕が私の雷撃の魔法を吸収すると共に急加速しながらこちらへ飛んでくる。
「!?」
ブンッ
突然視界が揺れたかと思ったら、私は彼に抱きかかえられるように5メートル横へと移動していた。
ガガンッ!!
同時に背後で衝撃音が鳴り響く。
「あ、ありがとう。助かったわ」
「いえ。それにしても、流石ボスというべきか、初見殺しですね」
「あれは一体何だったの?あのサイズのアイアンゴーレムの腕がバラバラになって飛んでくるなんて初めて聞いたわ」
「このボス、一見アイアンゴーレムに見えますが、アイアンボール……さっきのストーンボールの鉄バージョン、その集合体です」
そう言っている間にさっき飛んで行った腕の部分が本体部分にゆっくりと戻っていく。
問題は体の一部を投げてくることもそうだし、それで避雷針の要領で私の雷撃が防がれたのもそうだけど、
なにより、その雷撃を吸収して加速してきた事ね。
これじゃ迂闊に魔法を撃てないわ。
「こういう時に打撃系の攻撃手段が無いのがキツイわね」
私の剣にエンチャントを掛けて攻撃すればダメージは与えられるだろうけど、あいつが倒れるのと剣が折れるの、どっちが早いかしら。
まあ、かなり分の悪い賭けね。
「エルさん。次は僕が攻撃を仕掛けてみますね」
「え、ちょっと」
まるで散歩するような気軽さで前に出るソージュ。
彼の木の棒で何とかなるとも思えないんだけど。
「さっきみたいにエンチャントは必要?」
「いえ、まずはこのままで行ってみます。
あと、あいつが本体部分のみになって雷撃魔法が効きそうだったら撃ち込んじゃってください」
近づく彼に照準を合わせたボスが、また腕を分裂させて投げてきた。
ブンッ、パシッ。
……えっ?
飛んできた鉄球のような腕を受け止めちゃった。
確かに不可能じゃないだろうけど、何十キロもありそうな鉄球を受け止めるってどんなパワーしてるのかしら。
「よいしょっと」
ブオン!!ガギンッ!!
ええぇぇ!
受け止めた鉄球を投げ返しちゃった。
ボスの方が受け止めきれずに体を凹ませてるし。
「ふぅ、良かった。魔物の体の一部なお陰で、特に拒絶反応とかも出ずに済むみたいだ。
なら、エルさん。僕があいつの体をバラバラにしてしまうので、本体への止めをお願いします」
「バラバラにって……」
私の返事を待たずにボスへと飛び掛かっていく彼。
何をするのかと思ったら、本体と思われる胴体から、腕や頭を蹴り飛ばして外しては遠くへ投げ飛ばしていた。
投げ飛ばされた体の一部は、頑張って本体に戻ろうとしてるけど、それより早くもぎ取り、遠くへ投げ、戻ってきたところを更に蹴り飛ばしてる。
終いには両手両足、頭も失って歪な形の胴体だけが残った。
……ゴーレム相手じゃなかったら、かなりのスプラッタね。
っと、感心してる場合じゃないわ。
「これならもう、防がれることもないわね。
じゃあ、念のため最大出力で……『サンダーストーム』!!」
ズガガガガッ
私が放った雷撃の嵐がボス本体を溶解させる。
それで無事に倒せたらしく、転がって戻ってこようとしていたパーツも消滅していった。
「ふぅ」
「お疲れ様でした、エルさん」
「ええ。それにしても、ソージュの戦い方は奇抜ね」
「あー、ははは。時々言われます。
ところで、エルさんはこの後どうしますか?
ここまででかなり魔力消費してしまいましたよね」
彼の言う通り、残り魔力は心許ない。
今日はここまでかしらね。
「そうね。
私は今日はこれで地上に戻るわ。
ソージュはどうするの?」
「僕は今日中に28階まで行きたいので、このまま先へ行きます。
今日はありがとうございました。また機会があれば一緒に活動しましょう」
「ええ。今日は楽しかったわ」
そうして彼はまた風のように次の階層へと駆け抜けていった。
……あら?そういえば彼ってどこのクラスなのかしら。
彼ほどの実力ならAランクは確実だと思うんだけど、うちのクラスにはいなかったわよね。
一応言っておくと、エルさんはファザコンではありません。
そして当分エルさんの出番はない予定です。
次回にはリーンさんが戻ってこれるかな。




