17-B 安心する背中
よろしくお願いします。
引き続きエル視点です。
っと2話で終わりませんでした。
無事に25階層に来た私とソージュ。
……呼び捨てで良いわよね。
「さて、25階層の魔物は……ボール?」
「あれはストーンボール、ストーンゴーレムの一種です。
手足が極端に短いので転がりながら襲って来るのが特徴ですね」
確かに、よく見ると小さな出っ張りがあって、それで器用に歩いてる個体もいた。
うーん、動きだけみるとコミカルで面白いわね。
「ここは平地だから大して危険は無いですが、岩山とかだと上から転がり落ちてくると結構危険なんですよ」
「ふぅ~ん。でもまぁ、倒し方は普通のストーンゴーレムと同じで良いのよね?」
「はい。核を破壊すれば終わりです」
「なら今度は私に任せなさい」
そう言って前に出ると共に、ゴーレムに向けて魔法を放つ。
「『サンダーボルト』」
バチバチッ!バキッ!!
私の放った雷撃がゴーレムに当たると共に、その体内にある核を一撃で破壊する。
「おおぉ(ぱちぱちぱち)」
「ま、ざっとこんなものよ」
「流石エルさんの雷撃は一級品ですね。
じゃあこのままボス部屋まで一直線に行きましょう」
「ええ。って、魔物を倒して回らないの?」
「はい。……あっ、もしかしてエルさんは魔物を倒して回る必要がありますか?」
必要ってどういうことかしら。
普通は魔物を倒して回るものじゃないの?
「ダンジョンに入って魔物を倒さないと、ダンジョンの意味って無いんじゃなくて?」
そう聞くと「ああ!」って。
やっと間違いに気が付いたみたいね。
そう思ったのに返ってきたのは違う答えだった。
「エルさん。僕の今の目的は明日までに31階層まで進む事です。
贅沢を言えば1度も戦わずに真っ直ぐ行ければ、それに越したことは無いくらいなんですよ。
はっきり言って、戦闘経験とかは今は二の次です」
「あら、そうなの。
そこまでして行く31階層には何があるのかしら」
「パートナーを待たせてるんです」
パートナー?パートナーなら一緒にダンジョン攻略をするものじゃないのかしら。
ん~いまいちよく分からないけど、聞けば聞くほど分からなくなりそうね。
今はひとまずさっき助けられたお礼をするのが先決ね。
「良くは分からないけど、兎に角先に進みたいって事なのね」
「はい、そういう事です」
「分かったわ。なら……そうね。ソージュ。
あなたに私をおんぶする栄誉を上げるわ」
「はい?」
「私が走っていては魔物を振り切れないでしょう。
だから、おんぶさせてあげるって言ってるのよ。
感謝なさい」
「あはは、はい。ありがとうございます。
それでは、どうぞ」
そう言って背中を向けてしゃがんだ彼に乗っかる。
「重いとか思ったら黒焦げにするわよ」
「大丈夫、軽すぎるくらいです。
じゃあ走るのでしっかり掴まっていてください」
その言葉と共に、流れるように走りだした。
……凄い、なにこれ。
結構な速度で走ってるのに、ほとんど振動を感じないわ。
「あ、前から来るわよ!」
「大丈夫です、よっ」
今度はジャンプしながら、ストーンボールを踏み台にしていく。
着地も静か。足に羽毛でも付けてるんじゃないかしら。
そしてあっという間にボス部屋に着いてしまった。
学園の講義では、各階層で十分な戦闘経験を積んでから次の階層に行くように教育しています。
次回でエルさんの出番は当分お預けになる予定です。