ウィザードを隠したのは誰だ⁈
換羽期間中の皇帝ペンギンが1羽
それを取り囲むように王様ペンギンが3羽
皇帝ペンギン「僕に近づかないで」
王様ペンギン「皇帝ペンギンだろ?
無様な自分も肯定しろよ」
ーぎゃははは!ー
皇帝ペンギン「気分じゃないんだ、
自分たちのブースに帰ってよ、
ひとりにして」
王様ペンギン「キョロちゃんかよ!」
ーぎゃははは!ー
肉食動物ブース
アムール虎「がるるるるる」
ホワイトタイガー「うるさいよ、シベリアン
何の練習⁈」
アムール虎「ストレスで失語症にならないために
声出してるの
ごめんね、ラリマー」
ホワイトタイガー「あんまりうるさいと
失語症になる前に
声帯摘出手術されちゃうよ?あいつみたいに」
ジャガー「…」
アムール虎「ハイエナのルーをみろよ、
ハイエナのうえに失語症なんて可哀想だろ?」
ハイエナ「…」
ホワイトタイガー「可哀想といえば
コットンが自殺未遂したってね」
アムール虎「ああ、死にきれなかったんだ
可哀想に、完璧なジャンキーだからな
今、地下室に隔離されてるらしい」
ホワイトタイガー「元気になってほしいけど…」
アムール虎「それよりおまえこそ、鏡ばっかりみて
何してるんだ?」
ホワイトタイガー「僕、絶滅するかもしれないから
鏡みて色々考えてる」
アムール虎「まあ、色々あるわな、
しかしこんなに毎日、三食きっちり食べてちゃ
張り合いがなくなるよ」
ホワイトタイガー「いい子にしてれば
サファリナイトが待ってるよ!
僕なんて指折り数えて楽しみに待ってた
ついに明後日だ!」
ーカア カア カアー
空を飛ぶ1羽のカラス
アムール虎「あ、園長が来たかな?」
コットン「チョコレートをよこしやがれ
このクソアマ‼︎」
アニー(飼育員)「暴れないで、
傷口が開くわ」
手足を拘束されたコットンは
離脱症状で興奮状態にあった
コットン「解放されたら真っ先におまえを引き裂いてやる‼︎」
アニー「がんばるのよ、鎮静剤を打つわ
少し眠りなさい」
リチャード(事務員)
「〜♬」
アニー「リチャード、ヘイ、
リチャード!
リチャードってば‼︎」
アニーはリチャードのヘッドホンを外した
リチャードは仕事の合間に漫画を読みながら音楽を聴くのが定番だった
リチャード「わ!びっくりした、どうしたのアニー」
アニー「ナイトサファリのパンフレットは出来上がった?
ビラも追加でコピーしてほしいの」
リチャード「オーケー、
パンフレット出来たよ、ほら」
アニー「まあ、素敵ね、
急いで印刷屋に持っていくわ」
リチャード「帰りにドーナツ買ってきてくれない?」
アニー「わかった、コットンに何かあったら連絡してね」
リチャード「オーケー、
あ、ちょっと待って、僕のアメコミが何巻かないんだ
知らないかな?」
アニー「ごめんなさい、こないだ事務所を片付けた時どこかに紛れたかもしれない
帰ったら探すわ」
地下室には捨てられた多くの犬と猫が収容されていた
園長は慈善活動に力を入れていた
優秀な犬はドッグショーに
リチャードは飼い猫を連れてきていた
リチャード「シロップ、おいで」
ミャオ…
コットン「…リチャード、
ヘイ、リチャード」
リチャード「はあ…怪物のお目覚めか」
コットン「喉が渇いたよ」
リチャード「オーケー、水を持っていくよ」
コツ…コツ…コツ…
廊下に足音が鈍く響いた
アムール虎「でもさ、コットンのこと、わからなくもないよ
なあ?ラリマー」
ホワイトタイガー「そうだね、
僕たち働きづめだもん」
園長「なぜ、隠していた」
フォクシー(秘書)「いえ、そんなつもりは…」
ヴェロニカ「…」
ヴェロニカはうっすら目に涙を浮かべていた
園長「ヴェロニカ、気持ちに左右されるのは良くないよ?
私が気持ちに左右されないのは知っているね?」
ーうわああん‼︎ー
ヴェロニカは跪き懇願した
ヴェロニカ「ごめんなさい、園長、許してください…!」
園長「え?聞こえなかったな
耳が日曜なんでね」
コン、コン、
園長は杖を2回鳴らした
「フォクシー、BGMを止めて」
フォクシー「ただいま!」
静寂の中、ヴェロニカの泣き声だけが聞こえていた
園長「君が外で生きていけるとは思わない
ここの仲間を愛しているかね?」
ヴェロニカ「…愛しています‼︎」
園長「聞きたかったのはそれだけ
仕事に戻って」
ヴェロニカ「園長ありがとうございます‼︎」
コットン「悪いね、リチャード」
リチャード「大丈夫かい?酸素マスクを外すよ」
リチャードはパイプ椅子に腰掛け
ベッドにつながれているコットンに
水をひとくち飲ませた
ーヒャンヒャンヒャンヒャン‼︎
ミャオ〜ミャオ〜‼︎ー
リチャード「なんだ、うるさいな」
コットンが大きく息を吸い込んだ
その時
ガタンッ!
キィ…
アニーがドーナツの紙袋とドリンクを抱えて
地下室に戻った
アニー「ただいま
ドーナツ買ってきたわよ
コットンの調子は?」
リチャード「だいぶよくなってきたみたい」
アニー「コットンの点滴を変えたらおやつにしましょう」
地下室の天井に等間隔で取り付けられた
殺虫灯がぼんやり青く光っていた