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学校とは 10


「…ふふっ…ミカエル、君の妹は手紙よりも面白い子だね。」



クスクスと笑いながら、殿下がそう言った。

横にいた兄は口を尖らせ、暫くして諦めた様に小さくため息をついた。



兄よ、手紙に何書いたの……。



「手紙よりも面白い子」って、手紙に元々面白い子ですよって書いてたって事だよね!?


そこは面白いよりも、「薬学ばかり興味がある変人」とか、「魔力が膨大にあるから近づかない方が良い」とか確実に殿下が自分から関わってこないような文を書いて欲しかったよ!



…っていうよりも酷いな…何だ変人って。


いや、ここは変わった子とか、もうちょっと可愛らしい表現にすればまだ大丈夫なのでは!?


「薬学に興味を持ち、他にはあまり興味を持たない変わった子」とかかな…?


あまり変わっていないような気がするし、そもそもまだ10歳にもなってない兄が書いている手紙だ。

純粋に「私が面白い」とだけ書いてある事を期待するしかない。

というかそうであってくれ。


それよりも、さっき殿下が手紙の事を話題にしたら、兄は顔が真っ赤になっていた。

そこで私はひとつ気づいたのだ。


もしかしたら兄は手紙を書くのが苦手かもしれない…!…と。



兄ははっきりいって多才だ。

身内贔屓を引いても。


ピアノ、勉強。

私が見る限りで、兄がそれらの事に対して、苦しい顔をするのは見たことがない。


流石、公爵家の跡取りというかなんというか。


そんな兄が、手紙の事であんなにも動揺するのは、手紙を書くのが苦手だったからじゃないだろうか。


あれでも、兄って勉強できるよね…。

もしかして国語が苦手とか!?


私はその結論に至ると親近感が湧き、胸が踊った。


何故なら、私は前世に学生時代、国語が苦手過ぎてよく10段階の3や、ABCでも限りなくCに近いBを取っていたからだ。


教師にもよく、「何で理系が常に学年で上位なのに、国語だけはダメなんだ。」と言われていた。

国語の漢字の読み書きで赤点を免れていた私は、それを聞く度に自分でも何でだろうと苦笑するしかなかった。



小学校なんて親に手紙を書く時、国語の教師に何度も聞いて、やっとこさ書けたぐらいだ。


それぐらい私は国語が苦手だ。


だからこそ兄が、国語を苦手な気持ちも分かる。

私は心の中で一人ふむふむと納得して、兄の服の裾を掴んだ。


兄はきょとんとした顔で「どうしたの?」と聞いてきた。



「一緒にお勉強したいです。」



特に国語を、と心の中で強く念を押し、じっと兄の顔を見ると何故か兄は崩れ落ち、横にいた殿下はまた吹き出し、エレンにはにこにこされながら撫でられた。


なんでだ。



「ファナが、ファナが…僕と一緒に勉強したいって…。」



「え、あの、お兄様?」



どうしたよ、兄。


困惑しながら一人慌てていると崩れ落ちた兄が手を伸ばして、私の手を握り顔を勢いよく上げた。

その顔は意気揚々していて、私と同じ金色の瞳はキラキラと輝いている様にも見えた。


おお、兄もやっぱり国語が苦手なんだね…!


私も握られた手を握り返し、元気よく「はい」と返事をした。


よーし!これで兄も国語苦手仲間だー!



それだけで嬉しくなり、心の中でガッツポーズしながら笑っていると横からまた声がかかった。



「では、私もそれに参加しようかな。」



その言葉を聞き、そちらに顔を向けると何ともまぁ嬉しそうな顔をするが、何故か先程よりも楽しそうな笑顔になっている。


それよりも私は、彼のその言葉に驚きを隠せず、口をぽかんと開け固まってしまった。

そして、殿下がそう言った瞬間またご令嬢からの視線が痛くなった。



うへぇ、痛い……。



本当はこれ以上関わりたくないが、不敬な言葉を言った立場として断ることも出来ない。

腹をくくるしかなく、私は高揚していた気持ちが沈んでいくのを感じながら、「はい」と返した。



「ふふっ、ありがとう。」



私がそう言うと、彼は先程みたいに頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。

腹黒いのか、天使なのかどっちかにしろという話である。


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