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学校とは 9


挨拶が終わった筈なのに、中々手を離さない殿下はまだニコニコしている。



「ミカエルがよく手紙でファナメリアの事を書いてるから。どんな子かなって思って。」



髪だけは派手な普通の奴ですが。



遠い目をしながらそんな事を考えていると、すぐ隣にいた兄は何故か耳まで真っ赤になっている。

しかも、金魚みたいにパクパクと口を開閉させていた。



というか、兄よ。なんて事をしてくれたんだ。

殿下私の名前を事前に知ってそうにしていたのはそのせいか!



眉を顰めながら、私は心の中で頭を抱えて空を仰いだ。



「殿下、それは…。」


「ふふっ、ミカエルのそんな表情を見れるなんてね。いつも笑顔だから、他に表情ないのかなーと思ってたんだ。」


「…。」



この人、中々腹黒い?



ゲームとはやはり色々違ってくる様で、殿下はクールと天然の他に腹黒いというのが私の中にインプットされた。

まぁ、聡明だから策士でもあるって事だろう。

ゲームをやっていた立場からすると、キャラクターの新しい一面が見れて良いと思うが…。



うん…あまりお近づきにはなりたくないかな…。



逆ハー阻止というよく分からない使命があっても、私はこの人とは最低限の関わりだけで済まそうと決めた。


っていうか、そもそも主人公は逆ハーを望んでるのか…?


根本的な所だが…

光が嘘をついている可能性もある。


光はああ言ってたけれど、それを主人公が望んでいるのか不明だし、まぁ主人公の特権という奴で、無意識の内に逆ハーになってしまった、なんて事もあるかもしれない。


実の所、私は主人公の事があまり分からない。


ゲームの中ではただ選択肢だけで、性格は攻略対象によってそれぞれ違い、毒舌かと思ったら聖女の様な事を言う。

人によって違う性格の持ち主というのがゲームの主人公だった。


簡単に言えば猫被りが上手い女の子。


だから、ゲームとは色々と違うこの世界では主人公がどんな性格なのか益々分からないという訳で…。



光の情報が少な過ぎて、尚且つその情報が嘘、という可能性も浮上し、私は小さくため息をついた。



「?どうしたの?」



ため息が聞こえたのか目の前にいた殿下が心配してくれた。

あぁ、なんて優しい。


咄嗟にため息についたことを謝ると、「大丈夫」と言ったが後付けで「それよりもどうしたの」と聞いてきた。



「…部屋に戻りたいです…。」



殿下に興味津々といった表情をされ、不敬覚悟で私は周囲の人がいるので小さな声でそう呟いた。

とりあえず、さっさと部屋に戻って光を信じるか信じないか考えたい。


すると、殿下は何故か目を見開いて驚いた。

それもすぐ終わり、自分の口に手を当て何かを小声で呟きはじめた。

手が離れたおかげで私は半歩下がることが出来たが、


デジャブを感じる…。


いくら小声で呟いていると言っても、かなり彼に近い場所にいる私は、殿下の呟く内容が少しだけ聞き取れてしまった。



「私と話さなくていいのか?」



寧ろ話してると胃が破裂します。えぇ。



確かに話した方がいいかもしれない。

でも、私はそれよりも大事な事を考えたいのだ。



「大事なこと?」



少しぼーっとしていたのか口に出ていた。

それが聞こえたのか一人ブツブツ言っていた殿下がそう聞き返してしまい、私は固まってしまった。


自分のお馬鹿と叫びたくなる気持ちを抑え、とりあえず言い訳を考えた。


言い訳案。その1、「人生の事です。」


……ダメだな。これは流石に悟りすぎた変な五歳の女の子だと思われる。


違うだろとそれを却下し、次の言い訳を考えた。



言い訳案。その2「薬学の事です。」


……これが妥当かな…?

よし、そうしよう。最近母との会話に出ている薬学の事を学びたいというので…。



……………って不敬だよ!!


そもそも何だ、王族と話すよりも大事な事って!!



為す術もなく私は諦めて謝ろうと姿勢を正した。


「…ふふっ…。」



ん?



すると、何故か突然目の前にいる殿下がまた口を手で抑え、小さく吹き出した。



「……ファナ、顔が…。」


「顔?」



兄のすぐ横にいたエレンは、そう言うとお腹を抑え、笑いこらえ始めた。


なんでだ。


首を傾げると兄はふふっと笑い、私の頭を撫でた。



「お顔が百面相しているよ?」


「えっ」



私は知らない間に、自分の表情筋を働かせてしまっていたらしい。


まじか。

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