学校とは 5
貴婦人が天を仰ぎながら叫んだ瞬間、私の視界はまたドアの色一色に変わった。
「………あれ?」
よく見るとすぐ横にあるドアノブには両方とも、2つの異なった洋服を身に着けた腕が見えた
腕の主を視線で辿っていくと、そこには顔面蒼白にした兄とエレンがいた。
「…エレン、いいな。ここは開けるな。いいな?」
「分かってる。」
二人は顔を見合わせて、何かを察したのか頷き合った。
うん、二人とも仲良しだなぁ。
だけど、私をぼっちにしないで。
私は苦笑しながら後ろで首を捻りながら、?を乱舞させている母の元へと戻った。
貴婦人の叫びはそれから数秒続き、こちらの部屋まで聞こえてきた。
「…?ファナ、外に誰かいるの?」
「あ、えと。」
母に聞かれ、外で起きていた事を話すと、話終わった後母の姿はそこにはなかった。
その代わり、私の髪が靡く程のそよ風が直撃し、そのそよ風を視線で追うと、そこにはドアを開け放った母がいた。
兄とエレンはドアを開け放った母の後ろ姿を、目を点にして呆然としながら見ていた。
すると何故かドアの向こう側から腕が伸びてきて、二人の体が宙に浮いてしまった。
二人とも当たり前だが、突然自分の体が浮いたことに驚き、各々に悲鳴をあげていた。
「かわいいいいいい!!!!可愛い子が二人もいるうう!!!!」
野太い声が部屋中に響き、思わず私は自分の手で耳を塞いだ。
どうやら、二人を抱き上げたのは男性らしく、二人の体はその男性にされるがまま、腕の上に乗せられていた。
「ちょっ!放してください!叔父上!」
「ミカエルは分かりますが、何故僕まで!?」
「おいっ!それどういうことだ!」
「二人とも可愛いから大丈夫だ!」
「「どこが!?」」
どうやらこの人は叔父に当たる人の様で。
二人を抱き上げた事と身長が高い事で顔は見えないが、二人とはこの人と顔見知りな様で。
私そっちのけに三人でマシンガントークを繰り広げている。
兄、エレン、南無阿彌陀仏。
私はとりあえず、二人でその人が夢中になっている間に部屋を出て、母を追った。
案外母はすぐに見つかり、一人の女性と抱き締め合っていった。
その女性こそ、先程の貴婦人で。
「………お母様?」
母に声をかけると、母と貴婦人の視線がこちらに寄越され、小さく肩が震えたが、それも母が私を抱き上げると収まった。
「ファナメリア、妹のミリアよ。」
母の妹………ってことはあの叔母か。
叔母の方を見ると何故か私の顔を合わせるなり、その顔を自分の手で隠してしまった。
手の隙間から「……流石姉様の子……。天使…。」なんて声が聞こえた気がするが気のせいだろう。
確かにファナメリアの姿は整っているが、天使ではない筈だ。
ていうか天使だったら、こんな腹黒い事を考えません。
「…ミリア。レミーナにはもう会った?」
「……っは!えぇ!凄く可愛くて、つい抱き締めそうになってしまったのだけれど、その前に逃げられてしまったの…!」
我に返ったのか顔を覆っていた手をどかし、そう言った。
めちゃくちゃ一気に言ったな…叔母よ。
そういえば、この人が姉を引き取るんだよね。
さっきも兄とエレンを抱き上げてたの叔父って言ってたし、二人とも子どもが大好きなんだろうなぁ。
なのに、子どもに恵まれないというのは、どれだけ酷な事なのだろう。
「…ミリア様。はじめまして、ファナメリアです。」
「ファナメリアちゃん。」
「はい。」
私の名前を呼びながら、ふわりと可憐に笑うミリア様に元気よく返事すると、何故か母によしよしされ、ミリア様は手で目を隠しながら天を仰いだ。
ミリア様、首痛くないの?




