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自分とは 2




「ファナ…ごめん…。」



先程の熱すぎる抱擁から開放された私は、全力で息を吸った。それはもうし過ぎてむせるほどに。



正直骨が折れるかと思った…



6歳の兄に何でこんな力があるのか何度考えても分からない。

そりゃあ、騎士を目指して剣の腕を磨いてるのは兄を思い出した時に分かっていたけど、どこにこんな細腕に力があるのか?と思えるぐらい兄は不思議な人だ。




「だ、だいじょうぶです…。」


「そう…?」




背中を優しく摩ってくれる兄の顔を伺うと、心配そうな顔をしていて、でもやっぱり美青年だ。間違えた、美少年だ。

私は今自分の出来る笑みを浮かべながら、ゆっくりと立ち上がった。



「ファナ…本当に体調が悪くなったら言って?昨日まで魔力の暴走で意識がほとんどなかったんだから。」



そうだった。

私は転生前の記憶。前世の記憶を取り戻したきっかけが、それなのだ。

この世界では魔力が使われ人々の生活が成り立っている。

平民から貴族、誰でも当たり前の様に持っているもので。

逆になかったら、人間の臓器1個が使えなくなった状態になるのと同じで、身体にも影響が出てくる。

ただその反面魔力の実力は、階級にうるさいところでも黙ってしまう。

魔力様々だ。



私の場合、生まれ持った魔力が家系の中でも大きくその器である私が少し小さかったのか、私自体というよりも、魔力の器を少しずつ大きくする為の治療を受けていたのだが…あれは拷問ではないのかというほど痛かった。




だって注射ぶっ刺してくるし!

確かに治療法かもしれないけど怖いんだからね!!




前世でも注射が大の苦手だった私は、まぁ薬剤師として落ちこぼれなり馬鹿なり色々な罵詈雑言を言われていた。

しかも同僚でもある友人に!



仕方ないじゃん!怖いんだから!



とまぁ前世の話は置いておいて、今の私の体に大人と同じ薬を少なめに投与し続けていたのか、私の幼い体は耐えきれなかったらしく2~3日の間意識混濁のまま寝込んでいたらしい。


今はなんとか薬を乗り越えたのか魔力を乗り越えたのか、分からないけどまぁ生きている。

ファナメリア自体の意識は私と一緒になり、私とファナメリアの記憶が混合している。



簡単に言えば意識が2つあるという訳ではなく私がファナメリアにファナメリアが私になったという感じだ。

2つで1つみたいな。



「ファナ。もう少し寝た方がいいんじゃないか?熱があるみたいだ。」



顔色と額に手を当てて体温が熱いのが分かったのか、兄は背中を支えながら立ち上がらせてくれた。



何だこの王子みたいな兄。かっこいいなおい。



「…でも…今日は起きないとお父様が…」



ここ公爵家の大黒柱は…なんというか寡黙だ。


母から聞いた限りでは、1に家名。2に自分。3に仕事。


家族には、興味のきの字も見せないような厳格過ぎる父で、少しでも子どもが自分の言いなりにならなければ、躾と称して叩く…らしい?と思えるぐらい形相も怖ければ態度も怖い。



「大丈夫。ファナの体調の方が心配だよ。今日は僕もついてるからお父様も許してくれる筈だよ。」



ベッドに私と共に座った兄は、私の頭を優しく撫でていた。

だが、その表情は苦笑混じりだったがどう見ても恐怖が溢れ出ていた。


それもそうだ、この優しく完璧な兄でもまだ齢6歳なのだから。

自分のしかも怖いと称される父親に反抗するなんて誰だって怖いだろう。

私だったら偉業と言える。うん。



「でもそれではお兄様が…。」



それでも、兄がここまで恐怖を溢れだしていたら私だって後が怖いし何より兄が心配だ。

私が眉を寄せると頭を優しく撫でる手が頬に伸びてくる。



「…ファナ。僕だって男だ。大切な妹の為なら大丈夫。」



頬を両手で包み込みながら、兄は穏やかな顔で私を安心させてしまった。

流石である。



その後私はすぐにリリィによりベッドへと横にされた。

だけどすぐ横には上着と靴を脱いで私の頭を優しく撫で続ける兄が子守唄を歌ってくれた。




シリアスなシリアルになりそうです…

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