お嬢様とは 2
ルドルフ視点もうちょっと続きます
ルドルフの目の前にいる男、ドフスキー・ベルリア・ミーシャは、公爵の位にいながら騎士団の医療部門の長である。
基本的に寡黙だが、その顔や地位目的に近づく貴婦人も多かったのだが、結婚して3人も子どもがいる今でも人気は留まることを知らない。
ルドルフからファナメリアの体を取り上げると、ドフスキーはファナメリアの顔色や爪の色を見ていた。
一応騎士団の医療部門でトップを飾っているだけあると、迅速なそれに感心しながらルドルフは見ていた。
元々魔力が器よりもオーバーしていた事もあって、苦しんでいたファナメリアであったが、それが項を奏したのか僅か4歳での数秒ではあったが、あの暴発も耐えきれたらしい。
ルドルフはファナメリアの肌色が血色良くなっていくのを見て、安堵の表情を浮かべるが、目の前にいる男はそうは思えないようで。
「…ここはレミーナの部屋だが。……レミーナはどうした。」
―――ですよねええええ!!!!
ファナメリアをしっかり抱き締めこちらを見据える目は、どこまでも冷えた氷河の様で。
ルドルフは早口になりながらも事の顛末を話した。
―――嘘言ったら殺される!!
言い終わった瞬間ドフスキーは目を見開いて、片腕に少女を抱き締めながらもう片方の腕に魔力を纏わせる。
纏わせた魔力はやがて形になり、手乗りサイズの小さな狼の形になっていく。
狼の形になったそれは、地面をふんふんとかぎながらあるところまで進むと急に唸り始めると、その体を大きくして口から炎を吹き出す。
その炎は目の前にあったそれを燃やし、奥に表れた鉄製の扉までも溶けていく。
そこから出てきたのは目的のそれ。
まだ幼い少女の姉だった。
――………まじか。
レミーナは意識が混濁し、焦点が定まっていない状態でこちらを見ていた。
その彼女の服から見える打撲の痕は見ていて痛ましいもので、ルドルフは無意識に唇を噛んだ。
「……お、とう…さ、ま?」
「…レミーナ、これは一体どういう事だ。」
レミーナに近づき、ファナメリアを片腕に抱き直し、彼女の額に手を当てた。
瞬間、彼女の体は光の粒子に包まれ、次第に彼女の顔色が戻り、身体中にあった打撲の痕が消えていく。
ドフスキーは一度、抱いていたファナメリアをルドルフに渡そうと立ち上がり一歩後退したが、それと同時にレミーナは体が動かせるようになったらしく、周りが焼け焦げたそこから数歩先のこちらへとゆっくり歩いてきた。
「…申し訳ありません…、母に…閉じ込められ…。」
そこまで言った彼女の顔色は一気に青褪め、膝から崩れてその場に座り込んでしまう。
ルドルフはつかさず彼女の腰を支え、その軽くなってしまった体を抱き上げた。
ドフスキーはそれを見て、その瞳に悔しさを浮かべた。
「…ごめんなさい…ごめんなさい…。」
レミーナは瞳に涙を滲ませたかと思うと、そのまま意識を無くしたのか体はルドルフの腕に預けられるように、倒れこんだ。
「…レミーナ、ファナメリア…。」
ポツリとドフスキーが呟きファナメリアの額を撫で、レミーナへ視線をよこす。
いくら仕事の鬼で冷徹であっても、自分の子どもを見る目は、どこか慈愛を帯びている表情をしていると、彼の側近であるルドルフの父に聞いたことはあるが、今の彼は当にそれで。
―――見たいような見たくないような、……でもどう見たって、子どもが心配で仕方ない父親の表情だよなぁ……
複雑な気持ちで小さく心の中でため息をつくと、ドフスキーがファナメリアを持ち上げたまま、立ちあがりこちらを見てきた。
彼が高身長なこともあって表情が、どうしても怖く見えるのは自分だけではないと暗示するルドルフであったが、次にドフスキーから言われた言葉は、彼の頭を鈍器で殴るようなものだった。
「衛兵はアイシャを、ルドルフはメアリーを執務室まで連れてこい。」
アイシャとはレミーナの実母であり、今回の騒動の渦中にいる筈の人物だ。
それを衛兵で連れてこさせるというのは、相当お怒りという訳で。
いつの間にか後ろにいた衛兵数人は、青ざめながら綺麗な敬礼をしてその場を足早に去っていった。
一方ルドルフはレミーナをドフスキーに預け、ファナメリアの実母であるメアリーの元へ急いだ。
さりげなくの紹介ですが、お姉さんのお母さん出ました…
そしてやっとお姉さん救出です!!




