兄弟とは 15
ルディの言葉が理解できず、つい眉を潜めて彼を凝視してしまった。
一方彼は小さく吹き出し、こちらへと一歩近づきにこりと微笑んだ。
「言葉の通りですよ。」
「……意味がわからない…。」
最早、今聞いたとしてもまた微笑みを深くしてかわされるだけだろうと小さくため息をつき、また本棚の特定を急いだ。
”あの時ルディが破壊した本棚”
それが分かれば姉の居場所が特定出来るのだが、何せ破壊した時のスチルがないし、本棚の色や形まで分からないのだ。
「……どうしよう……。」
このままでは姉の命の危険性が高まる。そして姉は最悪の場合命を落とし、兄へ姉の母が暴行した証拠もなくなるだろう。
どうしようもなく自分が情けなくて、俯くがそれと同時に目の前が歪んでいく。
泣かないと頭で考えていても本能は言うことを聞いてくれないのか、頬を冷たい何かが何度も伝い始める。
「…お嬢様…。」
「………っお姉様…だって、つら、いのに…。……っふぇ…うぅ…。」
考えて。こんなところで泣いてったって何もならない。
自分の手で何度拭っても地面に落ちるそれは止まることがなく、私はまだ子どもなのだと思い知らされた。
こんな事をしていたって姉は兄の様に衰弱していくだけ、それが頭の中で何回も反芻し涙が溢れてしまう。
そんなときだった。白い手袋をした手が私の口を塞いだのは。
手袋をした手の主、目の前にいたルディを見るともう片方の手で自分の口に人差し指を当てていた。
口元は声は出ていていないものの、小さく動いていたので口パクで何かを伝えようとしていたのが分かった。
『廊下。』
そう言われ廊下に耳を澄ませると先程まで静かだったのに微かだが声が聞こえる。
ここの部屋は扉が元々分厚く壁もその造りに合わせたものだったからか外への防音が働いていたが、中で会話していた私達の声が聞こてしまったのだろうか。
声のあとに複数の足音が聞こえ、反射的に肩が震えてしまった。
「大丈夫。」
耳元でそう囁かれ、何が大丈夫なのだろうと恨めしいそうに彼の顔を見るといつもの笑顔はなく、真剣身を帯びた瞳が扉を見てその口元はきつく結んでいる。
外にいる兵士は、この部屋の見張りをするためだけに雇われた兵だというのは分かったが流石に物音が大きかったのか、聞こえて突入するのを悩んでいるのか。
確かにルディは強い。だけど、それは未来の姿でだ。
今のルディはまだ齢14で兄の従者として力を付けている途中、ゲームの様に魔力の暴発だってしてしまう危険性がある。
彼はこの絶対絶命とも言える状況をどう切り抜けるか考えているのだろうか。
外の騒がしさが増す度彼の表情は硬くなり、唇はきつく噛み締めすぎて切れて血が滲み始めている。
彼と姉を助ける。そんなことを考えていた自分はどれだけ傲慢なのだろう。
前世の記憶がある?ゲームの知識がある?それが今何に役立っているのか。
私は危うく、自分が強いと勘違いしてのではないか。
心の中で自分に対して嘲笑する。
そこからは多分無意識だった。
込み上げてくる怒りも悲しみも右手を強く握りしめそこに力へこめていた。
口を塞ぐルディの手に力が入っていない左手で叩くと彼は焦りや恐怖を顔に表し、こちらを振り返った。
「お嬢様…?」
怪訝そうな顔をするルディには、これから私が何をしようとしているか彼の持っている魔力の探知で分かったのだろう。
あぁ、後で母や兄にこってり搾られそうだとどこか他人事の様に思う私は、ルディを持てる限りの力で姉のクローゼットの方へ突飛ばした。
それと同時に扉が開き、複数の足音が響く。
「うわぁぁああ!!!」
自棄糞になり私は自分の声の限り叫び、手に込めた力を解放させてしまった。




