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兄弟とは 13




意識を取り戻してすぐ、私はいつも暖かみのある肌が青白い色を帯びた兄の顔を見た。



彼は本当に、ファナメリアを妹として守ってやりたいのだろうと彼の妹となった今彼の未来を知っていてもただ純粋に嬉しかった。


エレンもピアノを弾いてほしいし、守ってくれるリリィだって守りたい。




そんな中今一番助けてなければいけないのは姉、レミーナだ。


ルディに聞くと、あの後姉の護衛騎士は意識を無くし今も回復する為に安全な場所に避難させていると聞いた。


だがその護衛騎士から聞いた”隠し扉”が見つからず、姉の捜索は難航しているという次第で、さらにこれ以上秘密裏に動けば姉の母にも見つかり、その悪事が父にバレてまた彼女のとばっちりで兄と姉が危険に晒されかねないと手が付けられないのだ。



私はルディに、隠し扉を見つけるから姉の部屋へと連れて行って欲しいと翌日に頼み込んだのだ。


そしてその翌日ルディから借りた子ども用のお仕着せを着ていたのだが、部屋を出るとそこには仁王立ちする兄の姿。



勿論、私は兄の目を盗んでルディに頼み込んだ筈なのだが、ルディは期待を裏切り律儀に報告してくれやがったらしい。


リリィには前の二の舞になりたくなくて事前に教えていたため、私を見習いメイドとして見る姉設定として手伝ってもらう手筈を整えていたのだが…



「お嬢様、やはり危険でございます!」



こちらにも裏切られました。ぐぅ。




「そうだよ、ファナ。姉上のことなら…」



大丈夫だからと言おうとしたのだろうが、私にだって譲れない事がある。


これで兄が危険になれば、ルディが怒って魔力を暴発させてしまう恐れだってある。

ルディは一応攻略対象ではないが、兄を攻略する為には幾つか条件がありその最低限が私と仲良くなることとルディの信頼を得ることだ。


ルディは魔力暴発によって、兄は恐れを抱き亀裂が生まれるかと思えば反対にルディへの信頼を厚くしていく。




「…私もお姉様の妹です…お姉様を助けたいんです…!」


「ファナ…。」



眉を下げ困りどうしたら説得出来るか検討し始めたので、その隙を見て私は廊下に飛び出た。




「あっ、ちょっ、お嬢様ぁぁあ!?」




後ろでリリィが叫んでいるが知ったことではない。

とりあえず私は体力のある限り全力疾走して、その場を離れた。





しばらく走ると姉の部屋が見えてきた。


息を整えるため、細い廊下の奥で壁に手をついて息を整え、廊下の角からまだ遠くにある姉の部屋の前を見ると、そこには二人の兵士が扉の前を陣取っていた。



前に姉の部屋へと来た時に、中に案内してくれた騎士とは違いなんというか少し薄汚れた鎧を身にまとい、その中に着ている服もどこか粗末だ。



なんか…まるで



「この為だけにいるみたい…。」


「ですよねぇ。」




と、私の言葉に被るように入ってきた言葉の主は、私の肩を掴んだのか白いシャツと手袋が見える。


そちらへ振り返ると、にこにことしているルディがいて、思わず後ずさりそうだったが後ろは壁だけ。



逃げ場なしである。


彼は私よりも歳が10歳離れている。

だからか身長も頭1つ分違って、目線を合わせるため彼がしゃがんでくれないとどうやっても怖さを感じてしまうのだ。




「…ルディ、どうして…。」


「全くこのお転婆はー…帰りますよ。」


「やだ。」


「デスヨネ。」



白い目をして遠くを眺めだしたので、肩においてあった手を降ろそうとすると逆に力が入る。





こ、い、つぅぅぅぅ!!!



私が青筋をたてルディを睨みつけると、ルディはまだ力を入れる様子もなくただ窓の外にある空を見上げていた。


ここまで歯が立たないと打つ手すら無くなってくる。



「…お嬢様がそこまでする必要はあるんですか?」



そういった彼の表情は珍しく真顔で、なぜだか底知れない恐怖がこみ上げた。



「…っある。お姉様を助けたいの…助けないと次にお兄様がお姉様のお母様にもっといじめられる…!」



やっと出た言葉は掠れていて喉がカラカラに乾いていた。


全力疾走してからすぐにこんなにも、一気に喋るのだから当たり前といえば当たり前の愚行である。



おぅ……



ルディの方をいつもみたいにへらへらしながら返答してこないなと思い、恐る恐る彼の顔を覗き込むと目は見開いていて、口なんてポカーンと開け唖然していた。



「…ル、ルディ?」



私が腕を揺らしたからかはっと我に返ると、彼は開いた口を閉じて、「そっか」と呟いた。


胸に手をおいて、今度は私の目線にあわせて膝をおるものだから、こっちは謎の怖さから脱する事は出来たのでまぁ一安心である。



だけど次第に彼の瑠璃色の瞳がゆっくり細められていき、緩やかに口元が三日月を描く。


橙の髪が上にあった窓の隙間から流れる風に、静かになびきながら日にあたり暖かな春の光を反射していた。

その壮美さはイケメンにしか出来ないのだろうなと、私は心の中で若干明後日の方向を見ていた。



「ファナメリアお嬢様、そこまで兄上様の事を考えているのなら俺もあなたのお手伝いをしますよ。」





その為、彼の言葉を完全に理解できるまで10分以上かかってしまったのである。

誤字訂正しました

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