兄弟とは 10
『……ねぇ、ねぇってば。』
声が聞こえる。
目を開ければ音が聞こえない暗闇だった筈なのに、そこは辺り一面真っ白で何もないところだった。
どこだよここぉぉおおお!?
なんてツッコミを入れた私を誰か許して。
自分の姿を見れば、そこにはまだ4歳の子どもの体がシルクのワンピースを着て真っ白な世界に足をつけていた。
というよりも、自分の足がある場所が本当に地面と言っていいのか分からないが、足踏みをしてみればクッションの様に足元が弾むので一応足を付けられるところらしい。
『おーい、ちょっとー?』
また声が聞こえる。
今度ははっきりとした鈴のような声が。
辺りを見渡せば真っ白な世界に私1人な筈……なのだが、
え、ホラー?
もう一度見渡せどもやっぱり私1人しか居なくて。
どういうことだと頭を捻ったその時、目の前が光りそこからまた声が聞こえたのだ。
『光が見える?てか見えてないとさすがに魔力持ってないのと同じだから有り得ないか。』
光は私の周りを飛び回り、また私の顔の目の前に止まった。
眉を顰めて光をつつこうと指を出した時、光は『うわっ』と言いながら後ろに跳ねながら逃げてしまった。
「あなたはだれ?」
『うーん?この世界の何か、かな。それよりも君、君自身は前世の記憶保持者だって分かるよね?』
「え、まぁ…うん。そうだね。と言っても自分がどうして転生したかは分からないけど。あなたは分かるの?」
首を傾げると光もまたこちらへと移動してきて、「あぁそれはちょっと分からないけど。」と言った。
分からんのかい。
片手で顔を抑え頭上を仰ぎ心の中でツッコミを入れれば、「ほんとにね」と苦笑交じりの声がかかる。
光が話したのだと、そちらに視線を持っていけば光はいる場所をぐるぐると回り始める。
なんだなんだと凝視するが、光が何回か回るとやがてそれは光の輪っかになりその中心には映像が流れ始める。
『よおくご覧。これから君がこの世界で生きていくのに”大切な知識”だからね。』
知識と強調しているので、転生したという事実も知っている光に従い光の中心に映っている映像を覗き込んだ。
そこには3人の人物がいる。
1人はこの世界に来た時から見慣れたプラチナブロンドと、金色の瞳を持っている青年が青色を基調とした騎士服に似た制服を身にまとっている。
もう1人は今さっきまで一緒にいた少年と同じ薄桃色の髪を顔にかかる横髪を残し、後ろは襟足まで瑠璃色の瞳にかかっていた前髪は瞳にギリギリかかっているぐらいで目元がパッチリしている。
服装はもう1人の青年と同じで、青を基調とした騎士服に似た制服をまとっている。
2人ともそれぞれ帯刀をしており、様になっていた。
………お兄様とエレンじゃね?
『そう、これは君の兄とその友人の未来でもある。』
………ぇぇえええええ!?なんですとぉぉぉっ!?
『まぁまぁ、私が言いたいのはこれじゃないんだ。2人と一緒にいるもう1人をちゃんと見て。』
そう言われ、2人の青年もとい私の兄ミカエルとその友人エレンの傍にいたもう1人の人物を見ると、そこには白髪のサラサラな髪を風に靡かせる女性がいた。
2人と同じくらいの歳なのか3人とも声は聞こえずとも楽しそうに会話しているようだ。
2人と話している女性をよく見ると、ひとみは宝石みたいな紫色だった。
かなりの美人なのか瞳を何回か瞬くと長い睫毛が目立ち、笑うと頬が桃色に染まり少しだけあどけなさを残しているのでとても可愛らしい。
うわー…なんかうらやましい…。
切望の目で見ていたのか、光は頭上でカラカラと笑うが間違いでもないし殴れないのでアウトオブ眼中を決めた。
そこまで見て私は少し違和感を感じた。
この映像はどこかで見たことがあり、そう姉の時やエレンの時の様な妙な既視感が訴えているのだ。
『そう、これはね。この世界はね君が前世で薬学以外に唯一ハマっていたゲームの一部だよ。』
「え…?それって…」
『確か名前は…”君に贈る華音楽”だったかな。』
君に贈る華音楽。
それを聞いた瞬間妙な既視感の答えがパズルのピースみたいにパチリとハマった。
そのゲームは乙女ゲームなのにファンタジーと少年漫画の様なところが強くて、最初にプレイした時はみんな「これほんとに乙ゲー?」などと噂されたほどだ。
だが、プレイしていくに連れ主人公に対して、一癖も二癖もあるまぁクセの強い攻略対象が心惹かれていき最終的にゴールインするのだ。
確かそのゲームの攻略対象の1人目は私の兄ミカエル・ベルリア・ミーシャだ。
公爵家の跡取りであり、性格は毒舌で腹黒というどこかテンプレな感じがする人物なのだが。
今の兄の様子を見ると別人だなぁとか呑気に考えてしまう。
正直あんなにも優しいのに有り得なくないかってなる。
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