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とある傭兵の一日

評価30pt超えたので2作目を書かせて頂きましたm(_ _)m








 俺の名前はゴン。だがこの名前は本当の名前ではない、今の雇い主に貰った名だ。



 俺は元々流浪の者だった。勿論この頃にはまだ名前など無かった。生まれて物心ついた時には親はどこかに消え去り、多くいた兄弟も皆散り散りになり、俺はその日暮らしの生活を余儀なくされた。



 最初は苦痛だった。人里離れた山の中で暮らしていたからか他者と会う事はまずまず無く、十分な食料を得ることも出来ない。孤独と空腹に苛まれながら二十歳を超えるまで山で生活していた俺はいつの間にか屈強な体を手に入れ、山での生活にも十分慣れ始めていた。



 そんなある日の事、俺は新たに食料を求め山を少しだけ降りてしまった。

食料を手に入れるだけだし、それに今の俺なら何が来ても大丈夫だと考えたからだ。この時の俺はあまりにも慢心だったと今更だが後悔しているさ。



 山を少し降りるとそこには敵がいた。敵と言っても俺の命を狙うような奴では無く、俺を捉えて捕虜として楽しもうとする性格破綻者達だ。絶対に捕まってたまるものか、そう思っていたが奴らは異常なまでに狡猾で様々な罠を仕掛けてきやがった。

さすがの俺も全てに対応出来なくなって、とうとう捕まってしまった。



捕まっている間に睡眠薬を飲まされたのか、何かに乗せられている時の記憶がほとんどない。



 そして意識が戻った時、俺は見た事も無いような施設の牢獄の中に居た。

ここでどんな酷い事をされるのだろうか、その恐怖で俺は無意識の内に叫んでいた。だからと言って助けが来るわけでもないのに。



 数日その牢獄で過ごして分かった事がいくつかあった。まず、飯がちゃんと与えられる。量は決まっているがそれでもありがたく思うべきなのだろう、奴らからしたら俺を生かすために仕方なくって所だろうがな。それとどうやら俺以外にも捕虜がいるらしく、たまにだが声が聞こえて来る。男も女も両方だ。最後に、と言うよりはこれがメインなのだが、食住の確保の代わりに俺達捕虜は自分達の意志を改革させられる様な拷問を受け続けた。正直中々身体に負担を強いられるので、脱獄の事など考えている余裕は無かった。



いつまでこんな生活を続ければいいのだろうか、そう思っていたが予想外の事が起きた。



 今の雇い主が俺を牢獄から引き取ってくれたのだ。初めは何のつもりだ、と警戒していたがどうやら傭兵を探していたらしく、偶然強そうな俺が雇い主の目に留まったらしい。山暮らしが役に立ったと言う訳だ。

雇い主は3人家族らしく、両親と女の子が1人だとか。まぁ雇われている身だ、出来るだけ粗相のない様にするべきだろう。



 そうして俺は傭兵生活を始める事となったのだが、これがまぁ何とも奇妙だった。まず雇い主の家が異様なまでの豪邸だった。こんな家、山里にも無かった。そしてたかが一傭兵の俺に寝泊まりするための家をくれたんだ。一体どれだけ裕福なんだよ………………

しかし雇い主の高位を無下には出来ず有難く頂いてしまったので、特に文句を言える立場ではないのだが。



 そして最初の方でも言ったように雇い主の子供、女の子が俺に「ゴン」という名前を与えてくれた。少しおっさん臭い気もするがまぁ良しとしよう。最初は自分で自分の名前をあれこれ考えたものだが、どうも心のどこかで「ゴン」と言う名前を気に入ったらしい。全く自分でも自分の事が分からないなんて情けない話だが、こうなっては致し方ない。







 話を戻すが俺は一介の傭兵に過ぎない。その一日は割とハードだ。

そんな一日は日の出と共に始まる。



 朝起きるとすぐに家を飛び出し、門の周囲を散策する。怪しい奴がいないか要チェックするのは傭兵として最も大事な事だ。

 そうしていると雇い主の豪邸の玄関から娘さんが元気よく飛び出してくる。名前は確か「ミカ」とか言ったはず。毎朝ミカは嬉しそうに笑いながら挨拶してくるので、俺もそれに応える。最初は慣れなかったが今ではそれも仕事の一つだと割り切って元気よく返事をしてやっている。



 ミカが出て行った後、昼過ぎまで豪邸の警備。雇い主には言えないが正直退屈である。誰も侵入して来ない、奇襲すらない。門の外を通る通行人を数えながら時間をつぶすのが最近だ。



 その後は雇い主の奥方から昼食を頂く。同じ物を何日も食べる時もあれば、毎日違う物を頂く時もある。言うなれば”猫の気まぐれ”と言った所だろうか。だがまぁ昼食を用意してくれているんだ、これも文句は言えない、寧ろ有難く思うべきだ。



 昼を過ぎると今度は雇い主と豪邸周囲の見回りに向かう。この時間は割と好きだ、道行く先で会うのは大抵が雇い主と顔見知りなのだが、その道自体に新しい発見があったりする。昨日は出向いた道路が綺麗に舗装されていた、とか。



 そうして日が落ち、夕焼けに変わり始める前にミカが帰って来る。「今日は~」と楽しそうに報告をしてから豪邸に戻っていくのだが、夏だからか最近は”ぷーる”とやらの話ばかりで正直飽き飽きしている。その後は夕食を奥方から頂き、日が完全に落ち豪邸の灯りが消えるまで警備の時間、そこまでが俺の仕事時間だ。



 その後は自宅に戻り、何も考えずに寝るだけ。そうしてまた次の日の朝を迎える、それが俺の一日だ。こんな退屈そうなことよくもまぁ毎日続けられるものだ、と俺も思うのだが、ミカの嬉しそうに俺を見る目がどうしても頭から離れなくてな。それに雇い主にあの牢獄から出してもらえた恩もある、それを仇で返す程落ちぶれちゃいないからな。





……………そろそろ寝る時間だ、また何かあった時にはこうして話そうと思う、じゃあな。





























──────────────────────






「ゴンおはよう!!」


「わんっ」



感想、評価等を頂けたら幸いです(*^^*)


また、70pt超えると3作目を書かせて頂きますm(_ _)m



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