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ターン7

「大変だったな」


ぷるぷると震えて否定の意思を伝える。


「たぶん続くぞ」


スライムが本当は細かい作業が大の苦手なのを知っている。


細いものを持って文字を書くという作業は論外だ。


「嫌なら俺から伝えるぞ」


ぷるぷると震えて否定の意思を伝える。


細かい作業は嫌いだが楽しかったのは本当だ。


ジェイクもスライムが文字を書くたびに褒めるのだから調子にのっていた。


アルファベットを覚えたら単語が待っている。


その大変さをスライムは気づいていなかった。



※※※



「大所帯よね」


「大所帯だな」


「知ってる?」


「何がだ?」


「ベラニア遺跡って大所帯で行ったら帰って来れないって噂よ」


前方には護衛に囲まれたウィリーの姉がいる。


こちらには気づいていない。


護衛なら後方にも注意が必要だが金で雇われた間に合わせなのだろう。


「調査をしようとして調査団や査察団が全滅したらしいわ。途中にはぐれて一人や二人になった人は生きて帰ってきたけど」


「それだけなら普通だろ」


「あと私たちみたいな少人数の場合は普通に調査して帰って来たわ」


「それならアイツ等も知ってるだろうよ」


「知ってたら大所帯で正面入り口から入らないわよ」


大所帯だから安全ということではないが敵に襲われたときは数が多いほうが有利だ。


完全に解明されていないからマハラミヤの石も少ない。


欲しければ自分で取りに行く方が安くつく。


それでも不気味さから挑戦する者は少ない。


「どうする?他の入口に進むか?」


「そうねぇ」


「ロロル遺跡のときみたいにスライムに糸になってもらうのはどうだ?」


「無理だ」


「何でだ?」


「筋肉痛だ」


昨日に細かい作業をずっとしたから全身が筋肉痛になっていた。


筋肉であるかどうかは不明だが症状として適切なのは筋肉痛だ。


「きんっ、あれくらいで筋肉痛になるな!」


「・・・激痛らしい」


「・・・・・・肉を食うと治りが早い」


「肉は嫌いらしい」


「食え!」


スライムによる目印が使えないから自分たちで進むしかない。


中の様子の安全を確保したいから先に進んでいる団体の後ろにお願いする。


「気づかれないようについて行きましょう」


「その前に干し肉だ」


気休めに保存食の干し肉をスライムに渡す。


ものすごく迷ってから食べる。


ライムを食べているときと違い時間をかけて食べる。


本当に嫌いらしい。


「・・・食うか?」


肉が好きなフェンリルは物欲しそうな目をジェイクに向ける。


おやつを貰って満足なフェンリルの足取りは軽い。


「フェンリル君は匂いを辿ることはできるの?」


「できるか?」


「できるみたいね」


「そのようだな」


「頼もしいな」


わずかにドヤ顔に見えた。


これで先に進む団体が通った道が分かるのと帰り道も分かる。


「フェイド、先導頼むぞ」


尻尾が了解の意を伝えていた。


どういった原理か不明だが遺跡の内部は明るかった。


そのために周りの状況の判断はしやすいが近づくと団体に気づかれる。


適度な距離が必要だった。


「不思議ね」


「そうだな」


「何がだ?」


「ジェイク・・・こういった遺跡は音の反響がすごいでしょ」


足音がしないのだ。


床は固いのだが音が無い。


不思議な回廊だった。


「失われし文明、か」


「昔は不思議な力を持つ人がいたみたいだしね」


「どうした?フェイド」


快調に歩いていたフェンリルが止まった。


匂いが途切れているということだ。


「地面にわずかに切れ目があるわ」


「下に続く隠し階段か?」


「押して動く感じではないわね」


「重さ、か?」


近くに作動させるための隠しボタンもない。


大所帯で入ると全滅するということが噂でなければ道の途中で重さで反応する罠があるのだろう。


「音が反響しないようにしているのは大掛かりな罠に気づかせないためのようね」


「この通路の広さなら二列縦隊だな」


「途中で分断されるのを避けるために列の間隔は狭いな」


「つまりは私たちの人数なら罠は発動しない可能性が高い、ということでいいのかしら?」


中の情報はほとんどなく手探りだ。


罠があったという報告はないがなかったという報告もない。


「奥に進んでフェンリル君には団体さんの匂いを引き続き探してもらいましょう」


「あとは隠し扉を探すことだな」


「どういうことだ?ウィリー」


「生きて帰って来た連中は全員が入口ではないところから外に出たと言っていたそうだな」


「そうよ、とにかく進むと外に出た。でも振り返ると壁だった。これが共通した証言よ」


正面に見える入口が罠だったという遺跡があるくらいだ。


松明もなく灯りを保つことができる文明を持っていたのなら壁を一時的に入口にする技術があってもおかしくない。


「内部にも壁に見えて扉だったとか扉に見えて壁だというものがあってもおかしくないと思う」


「そうね。目的の石は地下にあるらしいものね」


慎重に進むと前方で話し声が聞こえた。


フェンリルも反応したことから団体であることが分かった。


「後続部隊がはぐれた?」


「はい、気づくといませんでした」


「ここまでは一本道ですわ。はぐれるはずないでしょう。きっと逃げ帰ったのです」


「戻り次第、契約違反であることを伝えるとしますが、大半の武器を持たせておく運搬係も兼ねておりましたゆえに少々不便がございます」


自分の武器は自分で持っておくことが鉄則だ。


敵に襲われたときに丸腰では話にならない。


戦争のときに補給部隊に武器を持たせることはあるが遺跡の調査のようなときにはしない。


護衛の中でも格というのがあるのだろう。


「今から戻っても彼らには追いつけません。先に進み石を持ち帰ることを優先とします」


「御意に」


まったくというほどに後方に注意を向けないことが災いしたのだろう。


注意していれば後方で何があったかくらいは把握できた。


「行き止まりですわね」


「おそらくは侵入者を諦めさせるための仕掛けでございましょう」


「何か知恵があるのですね」


「壁の不自然な窪みに嵌る石がどこかにございますでしょう。このあたりに落ちている可能性が高うございます」


「探しなさい」


「御意に」


落ちている石を片っ端から嵌めていく。


明らかに違うものもあるが黙って見ていることにする。


隠し扉だと分かっていても開け方を知っているわけではない。


そして無駄に戦力として見做されたくないというのが大きな理由だ。


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