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ターン5

「それで卒業試験はどうなった?」


「もちろん勝ったに決まってるでしょ。スライム君に貼り付かれて息のできない魔物が降参したんだから」


「あとスライムが赤色?」


「スライム君は食べたものの色で体の色が変わるのよ。ウィリーがトマト嫌いで代わりに食べてたら赤色になったそうよ」


アンヌは訓練所のときからの付き合いだが女性であったために校舎が分かれていて一緒にいることはできなかった。


噂で聞いたウィリーと何度が会っているが周りの環境を変えることまではできない。


卒業試験は男女ともに見学が可能だから廊下でのやり取りは見ることができた。


本格的な接触は卒業してからだ。


「簡単に言えば、そのころの夢を見てた」


「それで魘されてたのか」


「ときどきな。大丈夫だ。お前がいるだろ、ライム」


ウィリーが魘されてすぐにスライムは飛び乗った。


いつも一緒にいれば魘されることくらい分かっている。


傍にいて起きるまで待つしかできないがスライムの精一杯の助けだ。


「大変だったのは卒業してからよね」


「そうだな」


「どういうことだ?」


「卒業したら手のひら返したようにウィリーのことを褒め称えたのよ」


その様子は部外者のアンヌですら怒髪冠を衝くくらいのものだった。


あまりにも腹が立ちすぎてウィリーの代わりに追い返したくらいだ。


スライムも一緒に追い返した。


それからは何も接触をして来ないが油断はできない。


「我が家の魔導士は最低ランクのスライムでも勝つことができるほど優秀だって」


「何だよ、それ」


「だけどウィリーが一向に家名を名乗らないから最終的には勘当だって言ってたけどね」


絶縁状態だから何かあるとは思わないが都合がいいのは間違いなかった。


アンヌは孤児院の出身だから魔導士の職を無くしても働くことにはたくましい。


魔導士の給料がいいから仕送りできるから選んだだけだ。


「あとはお互いに忙しくなっちゃったから最近まで一緒にいなかったけどね」


「ライムが旅をしたがったから一人の方が都合が良かったしな」


スライムの移動は飛んだら早いが這って進む方が楽だ。


時間がかかるから旅をするのにも大変ではあった。


一生懸命に進んでいるのに魔導士の卵に襲われたりする。


何もしていないのに理不尽ではあった。


「思ったより依頼も片付いたから今度はベラニア遺跡に行かない?」


「あそこは遺跡というよりもダンジョンに近いと聞くだろう」


「だから良いんでしょ」


地下に進むにつれて魔物の強さが上がる。


ダンジョンのほとんどが人工であることを踏まえればベラニア遺跡はダンジョンに匹敵してしまったというのが正しい。


「最下層にあるマハラミヤの石が欲しいのよ」


「新しい剣でも作るのか?」


「今のが欠けてきてるのよ」


マハラミヤの石は固いことで知られている。


金属と混ぜて刃物を作るとどんなものでも切れると言われるくらいの鋭利さを持つ。


魔導士なら一度は欲しいものだ。


「割に合わないぞ」


「あらジェイク。パートナーは行く気まんまんみたいだけど?」


「フェイド?」


気のない素振りをしているが隠し切れない尻尾が元気よく振られていた。


フェンリルはそもそもが好戦的だ。


戦えるのなら喜んでダンジョンでも何でも入る。


「仕方ねぇな。運動不足だしな」


「なら決まりね」


ベラニア遺跡までは馬車を乗り継いで行く。


魔導士なら護衛としてタダで乗ることも可能だ。


途中で依頼を熟しながら行けば路銀に困ることもない。


便利な職業だと思う。



※※※



途中に何も起こらずに順調に進みベラニア遺跡に最も近い町に到着した。


スライムが馬車に酔い、でろんと広がったことはあったが概ね順調だ。


「魔物で馬車酔いしたやつは初めて見たぞ」


「スライム君は繊細なのよ」


「繊細とはまた違う気がするぞ」


ジェイクに飛びかかりたいが体を動かすのも辛いのだろう。


何もせずにビンの中にいる。


「あそこに氷屋があるわ。冷たいものを飲めばマシになるわよ」


「休憩にするか」


スライムが何でも食べることから自分たちのパートナーも食べられることを知ってからケットシーとフェンリルの分も買うようになった。


好みというものはあるようでケットシーは魚、フェンリルは羊が好物だ。


「おじさん、炭酸水を六つ」


「あいよ」


冷たい飲み物には氷が入っている。


ケットシーとフェンリルの分は別の容器に入れて飲みやすいようにする。


スライムは小さなコップにフチぎりぎりまで移してもらい飲む。


人はそのまま飲む。


「・・・震えているというより痺れているような気がするぞ」


「炭酸水を飲んだときはいつもこうだ」


「器用に飲むわよね」


氷を食べると溶けるのを楽しむ。


炭酸水のシュワシュワした感じは好きらしい。


「酔いは治まったようだ」


「良かったわ」


「スライムが馬車に酔うとは発見だな」


恥ずかしそうに小さくなりながらぷるぷると震える。


見た目には変わらないが。


「今日は宿に泊まって明日から行きましょう」


「早く探した方が良さそうだな」


「どういうこと?ジェイク」


「どっかの偉い魔導士団が来ているみたいだ」


視線の先には護衛と思しき人だかりがあった。


魔導士を輩出している一家は危険なことを避けるために護衛を連れて回ることがある。


そういうときは面倒を避けるために違う宿を取る。


もしくは宿を諦める。


「金のある魔導士は優雅よね」


「まったくだ。何のための魔導士か分からないな」


「火の粉が飛んでこなければ何でもいい」


魔物同士は魔力で会話ができたりするがしない。


特別に仲の良いという存在もいない。


スライムとケットシーとフェンリルのようにパートナーがチームを組んでいるから会話をするということが多い。


「行きましょ」


「あっ!待って、ウィリアム」


人だかりの中から女性が飛び出してウィリーの腕を掴んだ。


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