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ターン13

「これって」


「何かの発掘の後だな」


「暗いから分かり辛いけどルバウド宝玉の原石?」


王族の婚姻のときに贈られることの多い宝玉だ。


産出量が少ないだけでなく採掘できるところも少ない。


この遺跡の地下がそうなら魔導士や冒険者が集まることになる。


そして周りの町が寂れてしまう。


「だから通路の上に墓を作ったのね。この鉱脈は永遠に眠らせるつもりで」


「これ以上発掘すれば崩落するだろうな」


「ここは忘れられたままでいた方が良いな」


「そうね。きっと魔導士協会に利用されてしまうもの」


石棺を元に戻して何も無かったと報告してしまえば良い。


ただそれだけだった。


「・・・町長」


「後をつけさせていただきました」


「ならこの下にある物も気づかれましたね」


「小さな町です。調査を依頼する金も用意ができません。また何か重要な物が発見されれば協会の管理となり町のものではなくなってしまいます」


何か目玉になるものになれば良かった。


小さな町が発展するのは難しい。


「私たちは依頼を受けたわけではありません。この鉱脈は村長が発見されたことになされば良いかと思いますよ」


「いいのですか?」


発見した者に権利がある。


今回はウィリーたちにあるが彼らが放棄すれば問題はなかった。


「鉱山なんて持っても管理ができないわ」


「感謝いたします」


町で遺跡の噂を聞いたのは村長の仕業だったとわかる。


町の人間は逞しかった。


「これは独り言にございます。ここより三つ離れた町にも調査されていない遺跡があるようでございます」


「あざといわね」


「独り言でございます」


ひとつの町が栄えても他が寂れてしまっては意味がない。


どの町も平等に栄えているから旅をする者には立ち寄ることができる。


「急ぎの依頼もないから行くわ」


「さようでございますか。お気をつけて」


「何か腹立つわね」


タヌキとキツネの化かしあい。


古狸のほうが一枚上手だった。



※※※



「お礼にっていくつか貰ったけど、都に行かないと換金できないじゃない」


「ルバウド宝玉の原石でこれほどの純度のものとなると一つで家が建つな」


「しかも豪邸がな」


「これ換金できるところ無いじゃない」


町のために利用したという罪悪感から町長は良さそうなものを渡した。


ルバウド宝玉の原石ともなれば国中が利権を巡って戦争するほどのものだ。


価値が分かっていなかった町長はお礼として渡している。


「これ一つで爵位が買えるな」


「伯爵くらいならいけるな」


「貴族のお姫様なんて柄じゃないわよ」


小国なら持参金として差し出せば王妃にもなれる。


それくらいに貴重なものだ。


難点は凄まじく硬いから米粒くらいの大きさが限界という点だ。


「次の遺跡にもお宝があったら扱いに困るわね」


「そう簡単に見つからないだろう」


「そうだといいけどね」


町の寂れ方は変わらない。


食べ歩きに買い物をして宿で休む。


そして遺跡の調査をする。


「まさかね」


「あんなところに隠し扉があるとは」


「そしてこれはモルデビアンナ時代の石碑だよな」


遺跡の通路は入り組んでいたが最終的には闘技場のような場所に行き着いた。


何かあるか壁を探しているときにジェイクとスライムがやらかした。


足元を見ないで進み。


スライムもわずかな隙間を探している。


タイミング良くジェイクがスライムを踏み、盛大に転んで手をついた先に隠し扉があった。


「これは調査団に報告ね」


町が寂れて住人が離れていくのを黙って見ていた町長には泣いて喜ばれた。


大きな調査団が出来るらしい。


モルデビアンナ時代は最も栄えたとされるが資料などが皆無で謎に包まれていた。


そのあとの時代では過去を羨む記述が多数見つかっていた。


「これから面倒なことになりそうね」


「気ままに旅をしたいのだけどな」


「無理だろう。あちらから来たぞ」


マハラミヤの石を見つけて、ルバウド宝玉の原石を見つけて、モルデビアンナ時代の石碑を見つける快挙までやってのけた。


国が見逃すわけがなかった。


「ウィリー殿、アンヌ殿、ジェイク殿」


「何かしら?」


「貴殿らを国の貴賓としてお招きしたい」


「それは強制かしら?」


「強制ではございません。しかしお受けいただけるものと思われます」


国としての権力を最大限に使っている。


権力は横暴だ。


「・・・分かったわ。だけど登城するのは二週間後でお願いするわ」


「二週間後?馬車を用意してございます。途中の宿もございます」


「馬車酔いするのよ」


誰がとは言わない。


移動すべてに馬車を使うとなれば苦痛は計り知れない。


「でしたら馬を用意します」


「私たちは誰も馬に乗れないわ」


「案内の者をつけます」


「彼のパートナーのフェンリルに歩けと言うのかしら?」


何が何でも連れて行こうとするために押し問答は続くが最終的には国からの使者が折れた。


魔物であるフェンリルと相乗りできる者がいないからだ。


「では二週間後にお待ちしております」


「旅費はあとで請求させてもらうわ」


このまま行かないという選択をしたいが付き纏われることは確実だ。


国を出ることもできない。


「・・・・・・本当に面倒ね」


「仕方ないな」


「行きたくないんだがな」


魔導士として国と関わりたいと考える者は少ない。


国専属になれば報酬は安定するが国のためになることしかできない。


どれだけ必要なことでも国の命令がなければ目の前の命すら見殺しにしなければならない。


なる者は少ない。


「ウィリーは家名を知られたら拘束されるわね」


「俺は絶縁されているのだがな」


「国は関係ないだろう。むしろ一家そろって抱え込むだろうな」


「父は野心家だからな。諸手を挙げて喜ぶだろうな」


父と呼んだことはない。


だが名前を知らない。


家族の名前も知らない。


ウィリーの前では誰も名前を言わなかった。


調べたら分かるが呼ぶこともないからしていない。


「とりあえず王都に向かうわよ」


「野宿だな」


「仕方ないな」


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