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ターン12

「見つかったぞ」


「会長が?」


「あぁ、見るも無残らしい」


「碌な死に方はしないと思ってたけどな」


「でも見たくないよな」


「勝手に違うところで死んでくれよな」


遺体の回収のために道具を取りに行ったのだろう。


声は聞こえなくなった。


「見つかったのね」


「やっぱり死んでたのか」


「散々な言われようだな」


良い印象は持っていなかったが死んでまで悪く言われることに遭遇するのは後味が悪い。


死者がゼロだった奇跡もかすんでしまう。


「これで移動できるわね」


「そうだな」


「明日にでも出発するか」


ベラニア遺跡の噂は広まっている。


宿を探している魔導士や冒険者は多い。


今なら宿も高値を請求できる。


途中で料金を上げることは難しいが最初からなら簡単だ。


「明日に出発するって主人に言ってくるわ」


「先に料理の注文をしておく」


「ならライムたちを風呂に連れて行っておくぞ」


食事だけなら泊まっていなくても食べられるが客の人数が多くて時間がかかる。


先に注文して部屋で食べるのが簡単だった。


外の料理店も似たような状況になっている。


今まで誰かを洗うということをしたことがないアンヌとジェイクでは毛が抜けたり泡が耳の中に入ったりして散々だった。


その点スライムを洗い続けていたウィリーは上手かった。


パートナー以外に触れられるのは嫌だが洗ってもらうということだけはウィリーにされることを望んだ。


この宿には離れたところに温泉が湧き出ている。


泊まり客なら自由に入れるから気に入られていた。


温泉効果でぷにぷに、ふさふさ、つやつやになってご満悦の三匹は料理を楽しんだ。



※※※



「昨日、支払いをしておいたわ。あと長逗留したから色付けて払っといた」


「助かる」


「馬車は大変なことになるから歩きだけど文句は言わないわよね」


「助かる」


「それにしても放置するにもほどがあるわ」


森を歩くたびに魔物が出現する。


一撃で仕留めるが面倒であることには変わりがない。


マハラミヤの石を求めて多くの者が集まっているが暴落下落したことを知らないのだろうかと疑いたくなる。


「これじゃ野宿もできないじゃない」


「方角的には町がある。そこで宿を取ろう」


「そうね。休まないと倒れるわ」


ベラニア遺跡から離れると宿は空室目立った。


一過性のものだが死活問題になっている宿もあるだろう。


「・・・ようやく休めるわ」


「飯はどうする?」


「宿で食べましょ。明日には食べ歩きでもして英気を養う感じね」


町に入って分かったのは飲食店が店じまいしていることだ。


魔導士や冒険者がいないから店を開ける意味がないのだ。


「こんなにも閑散とするとは思ってなかったわ」


「一過性だろうが問題だな」


「さっき宿の人に聞いたのだけどね。この町の外れにも遺跡があるみたいなのよ。小さいから見向きもされないらしいのだけどね」


「観光がてら行くか」


魔物を倒すついでだ。


大した手間ではなかった。


戦えるということでフェンリルとケットシーが喜んでいた。



※※※



「これは何かしら?」


「干し果物ですよ」


「へぇ果物を干したの初めてだわ。これちょうだい」


保存食として干し肉や干しパンを買い足す。


いつもは人の分だけだが三匹の分も買う。


魔物は満腹感というものが薄いらしくいくらでも食べられる。


余ったら三匹で消費してくれる。


「あらマルゴの季節なのね」


「初物ですよ」


「三かごを宿に届けてもらえるかしら?」


「かしこまりました」


次々と買い物をしていく。


久しぶりの上客となって店主たちも愛想が良い。


食べ物を売っている店は制覇する勢いで回る。


多少の散財はできるくらいに持っていた。


「この革のベルト良いわね。ひとつ貰うわ」


「まいどあり」


どんどん増えていく荷物を持っているウィリーとジェイクは黙ってついていく。


半分は宿に直接だが半分は持っている。


出店で調理したものはフェンリルとケットシーで消費している。


干からびかけていた柑橘系は全部買い上げでスライムが食べている。


町がどんな状況なのか分かっているから三匹も協力する。


「一度宿に戻りましょうか」


「そうしてくれ」


「同じく」


「だらしないわね」


宿に戻ると大量に荷物が届いているが食べ物類は三匹のおやつになる。


普段食べられないものを好きなだけ食べられるとあってご満悦だ。


装備品をいくつか新しくしたが焼け石に水なのは分かっていた。


「ずっと買い物するわけにはいかないから遺跡の調査をして次の町に行きましょう」


「次の町も似たような状況だろうからな」


「マハラミヤの石の価格も落ち着いたら一気に人がいなくなるだろうけどな」


「私たちが買い物した程度じゃだめなんだけどね」


一か所に集まるようなことはほとんど無かった。


大きな遺跡が見つかれば集まることもあるが周りの町が閑散とするほどではなかった。


「ベラニア遺跡を解放したからよね」


「そうだな。だが魔導士や冒険者を犬死させる必要はないから間違っていない。町の人間は逞しい。大丈夫だ」


「石が高価じゃないって分かれば早いのよね」


「休憩は終わりだな。遺跡に行くか」


廃墟となった遺跡があった。


人が定期的に入っていれば問題ないが人がいない遺跡は朽ちやすい。


「これって遺跡より墓よね」


「そうだな。壁に絵が施されているからな」


「宝は昔に発掘されつくしてるだろう」


迷路のように入り組んでいるが罠もなく最終的な部屋に到達した。


石棺だけがあり何も無いように思えた。


「石棺の下って何かあるわよね」


「この下から空気が流れて来ているからな」


「開けるか?」


石棺を横に押す。


見た目に反して軽いそれは簡単に動いた。


中は階段があり人が踏み入れた形跡は無かった。


「魔物がいる気配は無いわね」


「フェイド、先頭を頼む」


「ライムは糸を伸ばしてくれ」


「シルヴィは暗いところをお願いするわ」


適材適所でゆっくり進む。


道を見つけるつもりは無かったから装備も簡単なものしか持っていない。


町の人も簡単に見て小さな遺跡だと判断したのだろう。


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