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ターン10

「魔導士協会に行きましょ」


「そうだな」


「あぁ」


疲れはあるが一刻を争う。


急いで向かう。


大きな遺跡の側には魔導士協会の支店が隣接されている。


「いらっしゃい」


「ベラニア遺跡のことだけど」


「フフ、先を越されて怒ってるの?」


「違うわよ。ゾンビの大量発生のことよ」


「そっち?あの遺跡は守りの遺跡よ。侵入者を次々とゾンビに変えて次の侵入者を迎え撃つの」


魔導士協会は知っていたということだ。


そして魔導士には伝えていない。


「大量のゾンビに襲われて帰って来れるとは強いのね。惚れ惚れしちゃう」


「茶化さないで」


「だって貴重なマハラミヤの石がたくさん出回ったら弱い魔導士も強くなってしまうでしょ。魔導士の数は無駄に増やしたくないのよ」


「そんなことのために魔導士が死んでいるというの!」


「魔導士だけじゃないわ。冒険者もね」


協会の受付は当たり前のように事実を告げた。


絶句することになった。


おそらくは遺跡の中の構造や古代文字の意味など全て解明されている。


されていて秘匿されている。


「でもゾンビばかりが増えるのは困るから適度に残しているのよ。生きたままゾンビになる者を」


「それって」


「あら、出会ったのね。彼らはね。次の生ける屍が生まれるまでゾンビと戦い続けるのよ」


それがウィリーの姉と数人の護衛だ。


魔導士協会の企みのせいで犠牲になった。


ウィリーに対しての言動については思うところがあったが非道な末路を辿って欲しかったわけではない。


これから関わらなければ良かった。


「彼らは生きている者を認識できないし階段を登ることも下ることもできない。ただ戦うだけの存在よ」


「そんなことのために彼らに調査を依頼したというの」


「大切なことよ。自分は魔導士だから偉いと勘違いした者は要らないでしょ」


「話が合わないわね」


「あの遺跡を作った過去の人間は宝物を守りたかっただけ。その仕組みを魔導士協会は利用しているだけよ」


「そのことが知られたらどうなるかしらね」


「脅しているつもり?構わないわよ。どうせ広まらないから」


魔導士協会がわざと魔導士が死ぬように調整していたということを広めると言っても余裕の表情だった。


広まらないと確信してもいた。


「私たちを殺すの?」


「そんな単純なことではないわ。ベラニア遺跡を壊すだけよ」


「そんな簡単に?」


「噂としては遺跡が崩壊したということの方が衝撃よ。そのあとに協会の黒い噂が出たところで真実とは捉えられないわ」


過去にも真実に行き着いた魔導士や冒険者は大勢いたはずだ。


それでも遺跡が潰れていないということは沈黙を選んだということだ。


「またいらっしゃい。今度は良い仕事を用意してあげるわ」


「二度と来ないわ」


後味の悪い結末となり助けることが無駄だと分かった。


宿に戻り今後のことを話し合う。


「まさかあんなカラクリだとはね」


「どうにかして潰したいな」


「遺跡は遺跡のままでね」


「だが古代文字を読めないから解除も難しいぞ」


戦闘で疲れたフェンリルとケットシーはベッドで眠っている。


痺れが残っているスライムは桶の中で揺蕩っている。


打つ手なしと思われたところに宿の人が手紙を運んできた。


「ロロル遺跡の古代文字の解析ができたみたいね」


「へぇ」


「何て書いてるんだ?」


「えっと、このたび持ち帰りいただいた石碑の文面は大変重大であり興味深いものでありました。ロロル遺跡の石碑には解読できない単語がひとつあり、その単語はベラニア遺跡の防衛を止める役割があるということです。その単語を正確に彫り込んだものを嵌めると外部から止められるということです。これは大変な発見であると同時に再現ができないものであり調査はここで終了してしまうことになりました」


「その単語って?」


手紙には別に図面が同封されていた。


その文字はどこかで見たことがあるものだった。


「これって」


「そうだな」


「やっぱり?」


スライムが模りしてカギになった単語だった。


道筋は分かるから再び模りすることは可能だがゾンビと戦うのは避けたい。


「もう一度行かないとダメかしらね?」


「そんなに長い間、形を保っていられるのか?」


「ライム、どうだ?」


桶の中からでろんと出てきてぷるぷる震える。


痺れは取れてきたらしい。


「・・・文字を覚えているからすぐになれるらしいが長い時間は無理だと」


「覚えているのね」


「すごい記憶力だな」


褒められて嬉しいのだろう。


震えが三割増した。


「これで協会の思惑を止められるわね」


「そうだな」


「明日にでも急ぐか」


魔導士協会に企みが知られても困るから急ぎたい。


そのためには表のルートは使用できない。


完全に森を突き抜けるしかない。


「そうと決まればまずはマハラミヤの石を一部換金ね。怪しまれるわ」


「ゾンビと遭遇したのなら石のひとつくらい持っているはずということか」


「それに私たちの足取りを残しておくためのものよ」


魔導士協会に逆らえば仕事に影響は出る。


今回のウィリーの姉たちのように利用されて消される可能性もある。


どんなに有名な魔導士でも明日も知れない職業だ。


「あとはどこに鍵があるかが問題よね」


「外からというから入らないだろうけど」


「簡単に止められては困るから自分たちだけが分かる場所にするよな」


「手紙には書いてないのか?」


「書いてないわね。それよりもロロル遺跡を作った人たちはベラニア遺跡を作った人たちを嫌っていたみたいよ」


石碑を残した人物の感想だが、自分たちの縄張りを守ることは否定しないが侵入者をゾンビにし永遠に戦わせることは人道に悖る行為だと思う。


後世の者が石碑に気づいて止めてくれることを願う。


私は近づきすぎて警戒されてしまった。


止めるためには正面ではなく裏面が怪しいと睨んでいる。


「正面ってどこよ」


「俺たちが入った方か?」


「正面よね。裏は居住空間があったものね」


「問題は合っているかどうかだな」


ベラニア遺跡については謎が多い。


それは魔導士協会が情報統制をおこなっているからということが分かった。


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