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灰色の世界に彩りを  作者: 橘花穏
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師匠との出会い


⿴⿻⿸

華やかな音楽が流れ、多くの人々が談笑やダンスを楽しんでいた。

俺は、楽しそうにしている貴族を眺めていた。

あほらしい。

いつもは見下している相手にも、いい顔をして媚を売る貴族はひどく醜い。

シュトラール帝国は、実力主義の国だ。

つまり、「弱肉強食」の世界。

弱いならば、知恵を使って生き残るしかない。



「つまらない…」

ぽつりと零す。

幼い頃から俺は冷めていた。

同じ年頃の子供達が無邪気に遊ぶ所を見てもくだらないと感じてしまう。

両親は、俺が無表情でも可愛がってくれた。

両手だけでは抱えきれ無いほどの愛情を与えてくれた。

それなのに、何故こんなに覚めているのだろう…

そんなことを考えていると不意に、

「お前は、他の子供達の様に遊ばないのか?」

と声がした。

「…は?」

振り向くと、灰色の髪に濃紺の目をした男が立っていた。

男は、庭で走り回る子供達を指さしていた。

俺は子供達を一瞥すると、

「くだらない…」

と冷たく言い放つ。

男は破顔一笑した。

「面白い。俺の名前はバレイア・マクレーンだ。お前は?」

「…ルドルフ・シートン。」

「なぁルド、お前訓練を受ける気はないか?」

「訓練…?」

「お前は気づいてないだろうが、訓練さえすればお前は国で1番になれる。どうだ?」

俺はバレイアが差し出した手を掴んだ。



バレイアは、俺が手を握ると嬉しそうに笑った。

彼は俺と、俺の両親の所に俺を訓練する許可を取りに行った。

両親はバレイアが俺を訓練したい旨を伝えると、快諾した。

姉は眉を潜めたが「気をつけてね」と言って送り出してくれた。




パーティから数日もしないうちに俺はバレイアの屋敷に住み込みで訓練を受けることになった。

バレイアと一緒に住むようになってから知ったことだが、彼は千五百年以上生きているマッコウクジラらしい。

バレイア曰く生き物の種類や個体差によるが、多くの生き物は千年以上生きると人の血が流れていなくても人型になれるらしい。

バレイアにはレイチェルという奥さんがいた。

彼女はバレイアと同じマッコウクジラで海での生活に飽きたのでシュトラール帝国に来たとの事だった。



⿴⿻⿸

剣がぶつかり合い、火花を散らす。

「…クッソ!」

俺は思わず叫ぶ。

バレイアの強さは脅威的だった。

目隠しをしても易易と攻撃を避けられるのは、太刀筋に自信があった為に言い表せないくらい悔しかった。

悔しいなどと考えていると、

「ルド、守りが緩すぎだ。」

と聞こえた刹那、喉元に剣が突きつけられる。

バレイアは目隠しを外すと、

「ルドの悔しがる顔はなかなか見られないから面白い。」

と楽しそうに言う。

「なっ…?!」

言い返そうとすると

「2人ともクッキーを焼いたから食べて。」

とレイチェルが呼びに来た。



庭園でティータイムを取る。

バレイアは楽しそうに、レイチェルにルドルフが悔しそうな顔をしていた事を伝える。

レイチェルは

「羨ましいわぁ。ルドはいつも冷静だから、悔しがる顔を見たかったわぁ」

楽しそうに言うレイチェルに

「いじめないでください。」

と照れた顔で言うと

「可愛いわぁ」

とレイチェルが不意に抱きしめてきた。

温かい。

くだらないと思っていたものも、案外捨てたものではないと思った。


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